圧巻のスピードとダイナミックなジャンプが大きな魅力で、新時代を担うトップスケーターの1人として期待を集める三浦佳生選手(オリエンタルバイオ/明治大学)。2024-2025シーズンはスケートアメリカで僅差の3位、NHK杯では自身初の100点越えを果たして次のステージへと歩を進めるも、フリーではまさかの乱調……激動のシーズン前半を過ごし、高みとどん底を両方とも経験してきました。全日本選手権を8位で終え、四大陸選手権への出場権を得た三浦選手。1月下旬現在、全日本で再び傷めてしまった左太ももの経過を見て、2月の四大陸選手権への出場の可否を判断するとしています。全日本選手権を振り返るとともに、2025年について聞きました。
やるべきことをやった結果だった全日本
―― シーズン前半を振り返ると、東京選手権やNHK杯のときは、ミスしてしまった自分に対して怒っているような感情が見えたように思うのですが、全日本選手権では、非常に落ち着かれているように見えました。全日本選手権での感情の軌跡を振り返っていただけますか。
「もちろん全日本で悔しさもあったんですど、NHK杯やブロックのときと比べて、練習量、練習の充実度はやはりよかったですし、調子もよくて、最善を尽くしてやってきました。怪我との向き合い方も含めて、やるべきことをやったうえでの結果だったので、もう呑みこむしかなかった。NHK杯までの大会だったら、自分にあきあきしたり、けっこうショックが大きかったんですけど、これだけやってこの結果ならもうしょうがないと思いました」
―― 2023年の全日本選手権の男子は、“神試合”と言われるほど、充実した演技の連続でしたが、今回は少し違う展開になりました。この大会からどんなことを学びましたか。
「やっぱり全日本なので仕方がないんですけど、なるべく怪我を引っ張らないようにしたいなと。調子がよくても、どこかで不安があったと思うので、まずはそういったものを頭に入れないほうがいいのかなと、ぼく的には思いましたし。今季の全日本は、あまり全日本という感じがしなかった。お客さんの雰囲気を見ていても、ピリついている感じではなく、なんかすんなりいつもの試合みたいに始まっていったので、そういう全日本らしくなさというのは、逆に少し自分としては気持ち悪かったのかもしれないです」
―― フリー後の取材で、のびのびと演技をしていた中田璃士選手の姿を見て、ご自身の初めての全日本を回想していらっしゃいましたね。当時の自分、今の自分、さらに来年の自分を考えたとき、どんなふうになっていたいというイメージはありますか。
「当時の16歳の自分と現在の自分を比較すると、やっぱり体格も変わっていますし、当時はジュニアのはつらつとした演技だったと思います。いまはシニアに上がって、PCS(演技構成点)の面でもいろいろと考えなくてはいけなくて。3年前と比べると、表現の柔らかさだったり、いろいろレベルアップできてきたかなと思います。ただ、どれだけ滑りがよくても、そこにジャンプが入ってこないと点数がついてこない。ジャンプが入るようになれば、またちょっと変わるかなと思いますし、1年後、そしてそのさらに先のシーズンをもっとよくするために、そういったことにもっと力を入れていかなきゃいけない。さらに数年後となると、また身体には変化が起きると思うので、そのときの身のこなし方をしっかり覚えて、年齢に応じた滑りを見せていきたいなと思っています」
―― 今季のプログラムについても聞かせください。振付はショートプログラム(SP)をブノワ・リショーさん、フリースケーティングをシェイリーン・ボーンさん。お2人とは2年連続でタッグを組んでいます。まず、11月のNHK杯で初めて100点越えを果たしたリショーさんの振付についてはいかがですか。
「すごくお気に入りのプログラムですし、自分に合っているなっていうふうに感じます。リショーさんが周りと差別化できるプログラムを作ってくださったので、ほかの選手と違うキャラが出ていて、あのプログラムはすごくいいと思います」
―― リショーさんは「そのスケーターにしかできない表現を作りたい」と話しています(>>INTERVIEW ブノワ・リショー)が、彼の指導はすごく細かそうですけれども、どうでしたか。
「すごく細かいです。だからこそ、最初からプログラムの完成度が高い。滑りこなしていって徐々に上げていくと思うんですけど、最初から結構見せられるんじゃないのかなっていうラインには出来上がるので、やっぱりリショーさんが最初から厳しく振付のときにやっていると思います。1年目と比べたら、2年目は、自分のなかでも、できる動きが増えているなっていう実感はあります」
―― フリーの「シェルブールの雨傘」は、SPとはまったく違った作品で、三浦選手の違った一面を引き出しているプログラムですね。
「自分自身は好きなんですけど、だからこそなかなかプログラムとして結果が出せなくて悔しいです。出だしのオリジナリティとか後半ヴォーカルが入ってきて、徐々にそのヴォーカルの音が深くなっていくのとかがすごく滑っていて気持ちがいいんですけど、だからこそ、ジャンプがきちんと決まっていかないと、逆にこう徐々に暗い雰囲気になってしまうので。いい思い出が作れていないので、ちょっと悔しいです」
―― アイスショーでもじっくり堪能したいような作品ですね。
「そうですね。1回ジャンプを簡単にして見せたいなと思えるようないいプログラムです」