2025年2月10日
激動のシーズン前半を過ごして、2025年は次なるステージへ

INTERVIEW 三浦佳生「何事もポジティブにとらえていきたい」

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いま思い描く理想のスケート

―― 第一線で活躍しているなかで、三浦選手は、周りの選手たちの演技もよくチェックしていらっしゃると思うんですが、いま考える理想のフィギュアスケートの滑りがあるとしたら、どんなものを思い描いていますか。

「みんな、その選手にとっての最高の滑りというのがある。だからこそ、人によってすごくバラバラなんですけど。自分としては、ものによってけっこう違うんです。この場所はこれ、ターンはこれ、スケート自体はこれ。言ったらキリがないんですけど、とくにそういうものが多いなって感じるのは、やっぱり羽生結弦選手。あとはパトリック・チャン選手。スケートの1歩がすごく素晴らしいので、自分のなかではこの2選手が、項目が多いかなって感じです。あと高橋大輔さんも素晴らしい表現をされるので、表現面では高橋さんも多いです」

―― スケートをいろいろ部分に細かく分けて、いろいろ浮かんでいるということでしょうか。

「どの選手も理想の滑りをしているんです。たとえば、羽生選手なら、ターンする1個にしても正統派で、きっちりと1歩で描ききって、すばらしく背中と美しさで見せる。高橋さんの場合は、1歩のターンにおしゃれが加わる。ターンしていないほうの足で緩急をつけられていてすごい。パトリックは、伸びがやばすぎるので、真似できるものではないような気がします。重心ののっているところと、クロス1歩で足の使い方、引き寄せ方というのでも、ちょっと滑るだけでうまいってわかる。それをいったら、羽生選手も別タイプですけれども、すごくすごくきれいな滑りをします。どの選手も1歩が伸びる。アイスショーなどで、一緒の練習になったとき、伸びが違うなあという感覚はあるので、やっぱりうまいです」

―― やはりすごく周囲を観察していらっしゃいますよね。

「たぶん特技だと思います。(笑)小さいころから見るのが好きだったこともあって、選手の良さというのがわかるようになってきました」

―― 三浦選手のスピード感あふれる滑りの印象では、本能的に滑っているタイプに見えますが、じつはとても理論派ですよね。

「スケートだけ見ると、そのイメージで思われがちなんです。脳筋系というか自分がやりたいことをパッションだけでやっている感じがするよって、よく言われるんですけど。(笑)周りの人には興味がないという選手もいますが、ぼくは興味があるタイプだからこそのなのかと思います」

全米を控えたイリアにメッセージを送るなら?

―― 全日本選手権のとき、イリア・マリニン選手から「自分を信じて」というメッセージをもらったと話していました。今週末には全米選手権がはじまりますが、今度は三浦選手からどんなメッセージを送りたいですか。

「ナショナルですよね? どうがんばっても、優勝しかできないと思うので、まったく心配いらないかと思うんですけど。むしろなんか向こうがこっちを気遣ってくれている感じで、毎日ではないですが、インスタのダイレクトメッセージでリール動画を送ってきてくれるんです。松岡修造さんの元気がでる言葉をのっけているようなものとか」

―― いい仲間ですね。

「まず友だちですし、スケーターとしてのリスペクトがあるので。それはイリアに限らず、最近みんながみんな思っているので、いい傾向なのかなって思います」

―― 日本男子だけでなく、海外にも広がっているんですね。

「とくにイリアとジュンファンは日本のショーによく出ているので、その2人を中心にどんどん輪が広がっているのかなって思います」

―― 全米の事前取材で、イリアが「小さな怪我を抱えているけど、大会に向けて調整していく」と話していましたが、あらためて、いま高度な技術を使って競い合っている、難しさや怖さ、その意味についてどういうふうに考えますか。

「いまは高難度ジャンプの時代で、やっぱりとくにイリアは難しいことをやっていますから、怪我はつきものかなって、はたから見ていて思うんですけど。ただもうやっていかないと勝てない時代なので、現ルールでいくなら、それはしょうがないかなと思いますし。たぶんイリアもそれは覚悟したうえで難しいことをやっている。いまのスケート界の4回転ジャンパーといえば、というところで彼が引っ張っていっていると思うので、彼なりのプライドもたぶんあるだろうし、そのプライドをぼくたちは尊重しています。

4回転ジャンプはほかのジャンプに比べても、成功率100%というものはどれだけがんばっても見えないものだと思う。どれだけ成功率が高い人でも失敗するのがスケートだと思う。だからこそ、誰でも勝てる可能性を秘めているのがスケートの面白いところかなと思いますし。すごくクリーンなプログラムを滑った人が勝つというのが面白いと思います」

―― 全日本選手権の翌日のメダリスト・オン・アイスで、会場を沸かせた「ネメシス」について、お聞かせいただけますか。

「選曲は自分でして、振付は宮本賢二さんです。一応ショートにもできるようにと作ったプログラムです。毎年ショートを2つ作って、使わないほうをエキシビに回しています。やはりブノワさんのプログラムがすごく難しいので、念のために、一応用意していたんです。「ネメシス」は、ステップとかで、ぎりぎりまでエッジを使う難しいプログラム。激しくやってスタミナが持ったらセーフではなく、もっとポジションもきれいに、ていねいに滑りたいんですけど。すごくいいプログラムかなと思います」

―― 「ネメシス」というと、ネイサン・チェンの演技も思い出しますが、選曲にあたって、影響していますか。

「ネイサンが滑っていて、『この曲いいな、かっこいいな』と聞いていて、シンプルに使ってみたいなっていうのが一番です。ネイサンといえばって感じのプログラムの1つなので。あのプログラムはすごく激しさがあるんですけど、やはりバレエやっていただけあって、1つ1つのポジションがきれいですよね」

―― しかし、SP候補のプログラムだったとは。

「だから、けっこう入っているものが多かったんです。この曲をプリンスアイスワールドで披露したときに、(宇野)昌磨くんが練習を見ていてくれて、『これ、ショート?』て最初に聞いてきたんです。『いや、これはエキシビションの予定です』って、答えたら、『いや、これショートでいいと思うよ! これいいと思う』って、言ってくれて。昌磨くんがショートでもいいななんて思えるくらいのものが入っていたのかなと思います」

2025年を迎えて

―― 話は戻りますが、全日本選手権のフリー後に「スケートは難しい」と何度も口にしていました。そして、「ただ、ここであきらめちゃ、スケート好きとは言えないから」とコメントしていたのを聞いて、本当にスケートが好きなんだなと感じました。

「まあ、今シーズンはあれだけけっこう打ちのめされたので。やっぱり見るのは引き続き好きですけど、全日本のあとは、嫌いとまではいかないけど、ちょっと怖いな、この先大丈夫かなという不安がありました。でも、まずは怪我を治さないと話にならねえなって、思っていました」

―― SNSで見ましたが、佐藤駿選手と外出したり鍋パーティをしたりされていたようですが、年末年始はリフレッシュできましたか。

「かなりリフレッシュしているかな。強制的にスケートから離れなきゃいけない期間があったので、強制的にリフレッシュされた感じですかね」

―― 滑り始めてからは、もっと滑りたいという思いがありますか? 

「滑る前、休んでいた間は、全日本までの疲れがあったので、休みに徹していて、『いいな、この生活』って思っていました。大学がなければ、昼ぐらいまで寝ていられるし、どこかに遊びに行きたければ行ける。ぼくは1人で公園に行ったりして、ただぼーっとする生活もけっこう満喫していました。9日に滑りだしてからは、もうちょっといろいろ練習したいなと思うようになるっていう不思議な感じです。まだ軽いスケーティングしかできない状況で、周りみんながバンバン跳んでいるのを見ると、もうちょっとちゃんとやりたいなとか、いいなあと思っています」

―― 三浦選手は、イメージトレーニングはよくされますか。イメージする力って、なかなか侮れないと聞きます。

「ものによります。アスリートの方も結構取り入れていますよね。自分は最近何事もポジティブにとらえるようにしているんです。たとえば、電車に乗っていて、ぼくの足を踏んで謝ってこない人とか、ホームに降りて、向こうがダッシュしたいのに、ぼくがいてダッシュできないからって、舌打ちする人とか。日常的にちょっとするモヤモヤすることがあっても、『自分のほうが大人だな』とか、何事もポジティブにとらえていこうって考えにしました」

―― では最後に、2月の四大陸選手権(ソウル)への出場は、怪我の経過を見て決めたいということですが、出場する場合の抱負をお聞かせいただけますか。

「たぶん怪我が治っても、確実に筋力がちょっと弱っているので、そこを考慮して、まだ(痛みがある)トウループはできないんじゃないかという気がしています。経過を見てコーチやドクターと相談しての判断になるとは思いますが、出るからにはポイントをしっかり取りたいと思います」

ーー どうもありがとうございました。素敵な1年になりますように。

提供/オリエンタルバイオ

プロフィール
三浦佳生(みうら・かお) 2005年6月8日、東京生まれ。オリエンタルバイオ/明治大学所属。2017年全日本ノービスAで優勝し、ジュニア1年目の2018年に4回転トウループを成功、早熟の才能に注目される。2021年全日本ジュニア選手権で優勝し、全日本選手権4位とブレーク。2023年には、四大陸選手権と世界ジュニア選手権で優勝、ISU選手権の2つのタイトルを獲得する。2023‐2024シーズンは、2年連続でグランプリファイナル進出、全日本選手権4位、世界選手権初出場で8位。今シーズンはスケートアメリカ3位、NHK杯6位、全日本選手権8位。2025年2月の四大陸選手権の代表に選ばれている。
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