2026年6月12日
羽生結弦×ゆず「幾重」収録後、報道陣に語ったインタビューを全文掲載

羽生結弦、伝承の意義を語る。「学びさえちゃんと残っていれば、生きていける」

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NHKの東日本大震災15年 震災伝承ソング「幾重」とのコラボレーションで、自ら振付けたプログラムを滑った羽生結弦さん。5月下旬、映像収録を終えた羽生さんが取材会で語った「震災を伝承していくことの意義」をめぐるインタビューの全文をお届けします。被災体験をもとに15年考え続けた深い思索と、これからを生きていく世代への温かいまなざし。羽生さんがいま改めて語る、15年という月日と伝承の意義についてのお話です。

宮城県域で6月11日に初放送となった羽生結弦×ゆず 震災伝承ソング「幾重」のコラボレーション。NHK ONEでの見逃し配信が行われるほか、webでも特設ページで映像全編が公開されました。羽生さんのスケートとゆずの歌声がもたらす感動のコラボレーションを、全国から視聴することができます。感動を味わったあとで羽生さんのインタビューを改めて読んでいただくと、さらに理解が深まるに違いありません。

【羽生結弦×ゆず 震災伝承ソング「幾重」フィギュアスケートスペシャルプログラム】特設ページ(公開映像は全国で視聴可)
https://www.nhk.or.jp/sendai/info/articles/310/051/75

INTERVIEW 羽生結弦「辛い記憶は押しつけたくないけど、あったことを届ける使命感をもっている」

―― 被災者でもある羽生さんが、15年の震災伝承ソングに合わせて演技をなさるということで、震災を伝える意義を改めてお話しいただきたいと思います。

羽生 15年という月日が経ったとしても、一生忘れることはないと思います。いろんな方々が、いろんな経験の仕方で震災を経験して、もちろん東北だけじゃなくて、関東のほうも強い地震、強い揺れを感じた方々もいらっしゃったと思いますし、近畿の方々、九州の方々であったりしても、揺れを感じなかったとしても、すごくショッキングな映像があったりして、さまざまな、いろんな形での傷がきっと残っていくんだろうなとは思います。ただ、その15年間を、ずっと大人として、また記憶のある子どもとして経験した人間としては一生残るかもしれないんですけど、この15年間の間に生まれてきた、育ってきた命もたくさんあって、そういった方々にやっぱり……辛い記憶とかは絶対押しつけたくはないですけど、こんなことがあったんだよということは届けていきたい、届けなきゃいけない義務があるのかなということは、なんとなく自分の使命感としてもっていて。もちろん震災の記憶がない世代たちにも、やっぱりゆずさんのこういう曲だからこそ届く思いだとか、そういったものもあると思います。また、実際に震災を経験して傷を抱えている方々、まだまだ苦しいよという方々もきっといらっしゃると思うので、そういった方々の傷に寄り添いながらも、少しでも未来が明るくなるようにという祈りを込めて滑らせていただきました。

―― 今日は収録の1度目と2度目で少し振りが違うところがありましたが、ご自身の気持ちを乗せていくなかで変化していった部分が反映されていたのでしょうか。

羽生 そうですね……。自分で今回振付をさせていただいているので、正直楽曲を聴いて、体が動くままにみたいなことは、正直ありました。あとは、フィギュアスケートの演技ってすごく一期一会なところがあって、その時々で乗せられる感情だとか、呼吸だとか、スピード感であったりとか、回転の速さであったりとか、そういったことが本当に1度として同じものがないので、そういった意味で変わってしまったのかなと。ただ、すごく音と歌詞と思いを大事にして表現させていただきました。

―― ご自身のアイスショーのなかでもコラボしたことがある原摩利彦さんと今回も仕事を一緒にされたことで、曲をより理解されたという部分はありましたか。

羽生 かなりあります。曲作りというか、その曲がもつ雰囲気だとか、またストリングスの重ね方とか、ピアノの入れ方とかが、本当に摩利彦さん独特のリズム感といったものを感じていて。で、やはりぼく自身が単独のアイスショーをさせていただいた時に、摩利彦さんと一緒に曲を作っていただいて、摩利彦さんと一緒にコラボレーションさせていただいたという経験から、「あっ、こういうふうに音をとっていきたいんだよね」とか、楽曲を通じて会話をしてきた経験があったので、より今回、この楽曲を滑らせていただくにあたって距離感が近くなってたというか、摩利彦さんがきっとゆずさんと一緒に込めたかった気持ちが、なんかわかるような気がしたとは思ってます。

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「一歩ずつ歩き出していく、未来に向かって丁寧に進んでいく」

―― ゆったり滑られているのがすごく印象的でしたが、どんな思いを乗せて滑っていらっしゃいましたか。

羽生 すごく丁寧に氷を感じるということをしていました。ぼく自身、震災を氷の上で経験して、最初の歌詞のほうに、「波」、「海」みたいな単語が出てくるパートがあるんですけど、そこでハイドロブレーディングをするんです。その時に、自分が実際に振付をしたリンクが、ぼく自身が被災したリンクで。このリンクがすごく波打ってたなとか、本当に異常だったなみたいなことをすごく思い出していて。そういったことも含めて、丁寧に丁寧に氷を感じながら、全部滑っていきたいなという気持ちはありました。また、「会いたい」「会えない」というパートとか、実際に言葉にしたいんだけど、言葉にしたらこぼれちゃいそうとか、会えないと(いう気持ちに)なってる時に後ろに下げられてしまうというか、世の中に引き戻されてしまう、現実に引き戻されてしまうみたいなことは、すごい考えながら滑ってたので、ダッシュみたいな感じで走り出すわけではなくて、1歩ずつ歩んでいく、歩き出していく、未来に向かって、丁寧に進んでいくんだということは、すごく振付のなかとスケートで表現しようと思っていたことです。

―― でんぐり返しをして膝を抱えるようなところは、あまりこれまでのショーや競技ではない動きだったと思うんですけど、あの辺りはどういった表現を考えられたんでしょうか。

羽生 曲が展開としてちょっと変わるところでもあって、自分にとっては、そこがその過去のパートから、現在のパートに変わるところだとぼくは思っていて。そういった意味で、実際に過去をずっと振り返っているところから、膝を抱えながら月日がその間経っているというか、曲の展開が変わっていくときに、時間が過ぎ去っていって、ふと目を覚ましたら、現在の状況が自分の周りにある。失われたものと進んでいるものが、実際に目の前にあるっていうような感情で、ああいう振付を考えました。

―― 500回聴き込んだということですが、それは羽生さんにとって通常ですか。

羽生 通常ですね。

―― これまでも500回?

羽生 そうですね。

―― 振付などに着手し出したのはいつ頃からですか。

羽生 一応、(4月の)「REALIVE/Prequel」が終わった後に始めました。

―― どの歌詞もメロディも大事にされていることが伝わってくるのですが、この曲で特に心に刺さった言葉はありますか。

羽生 言葉としては、ゆずさんが被災された方々のところにお伺いしていて、訪ねられている時に聞いたお話とかが、実際にこの歌詞になってるんですよね。で、その情景として、いろんな話を聞いているシーンのなかで、会えなくなってしまった方がいる方もいらっしゃって、(歌詞に)そういったパートがあるんですけど、正直、ここまでストレートに、こういうことを言う歌詞ってなかったなと思ってて。実際に伝承ソングとして作るということになった時に、ここまでストレートに表現することはなかったなと思ったので。ある意味、自分もすごく素直に、本当に会えない、本当に失われてしまったものをすごく想像しながら滑ってました。

= INFORMATION =
羽生結弦×ゆず 震災伝承ソング「幾重」フィギュアスケートスペシャルプログラム
放送予定 ●「てれまさ」(総合)6月11日(木)、12日(金)放送予定(午後6時10分、宮城県域放送)TOHOKU HEARTコーナーで放送 ※「NHK ONE」で見逃し配信(放送後1週間)あり ●「午後LIVE ニュースーン」(総合)6月24日(水)放送予定(午後3時10分、全国放送) ※「NHK ONE」で同時・見逃し配信(放送後1週間)あり このほか、全国放送の番組やミニ番組等でも放送予定。 【震災伝承ソング「幾重」掲載ページ】 https://www.nhk.or.jp/sendai/info/articles/310/025/84/ 【羽生結弦×ゆず 震災伝承ソング「幾重」フィギュアスケートスペシャルプログラム】全編公開ページ
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