2026年6月10日
自ら振付けたプログラムを、ゆずの歌声にのせて贈る珠玉のコラボレーション

羽生結弦、祈りを込めて。NHK東日本大震災15年 震災伝承ソング「幾重」コラボに登場

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東日本大震災の発災から15年を迎えた今年、NHKが震災の経験を未来へつなぐため、人気デュオ「ゆず」とともに制作し、2月から東北をはじめ全国で放送されている東日本大震災15年 震災伝承ソング「幾重」。このたび、プロフィギュアスケーターの羽生結弦さんが、制作のコンセプトに共鳴し、楽曲に合わせたオリジナルのスケートを披露するコラボレーションに登場します。6月11日に映像がお披露目となる「幾重」の映像収録が行われたゼビオアリーナ仙台(仙台市アリーナ)を訪ねました。

©NHK

限りない優しさを氷上に描いて

NHK東日本大震災15年 震災伝承ソング「幾重」は、NHK仙台放送局からのオファーで、ゆずの北川悠仁氏が歌詞を書き下ろし、作曲は、北川氏と音楽家の原摩利彦氏が共作した。ゆずは曲づくりを前に、被災地の宮城と福島を訪ね、そこで語られた被災と復興への思いを受け止めたうえで曲を制作したという。いかに震災の記憶を“自分事”として未来の世代に伝えていくか――。制作陣の真摯な思いを受けて、羽生結弦はコラボレーションを快諾。500回以上も楽曲を聴き込んだうえで、セルフコリオグラフィーで新しいプログラムを作り上げた。

5月末、ゼビオアリーナ仙台(仙台市アリーナ)で、羽生の滑る新しいプログラムがベールを脱いだ。ゆずらしい伸びやかな歌声に乗って、リンクの中央に立った羽生がすっと前に滑り出る。震災を直接的に思い起こさせるようなフレーズも交えながら、「伝えたいこと」をまっすぐに綴る歌詞を、羽生もまたまっすぐに表現に結びつけていく。歌詞にインスパイアされた動き、包み込むような曲線を描くスケートの軌道、そしていくつもいくつも配されたジャンプ。楽曲への誰よりも鋭敏な感性と、さらに豊かさを増した身体語彙、そして多くの人々を励まし勇気づけてきた彼自身の心の機微。それらが交差するような、優しいひとときが生み出されていく。氷上でくるっと“でんぐり返し”をする心温まるムーヴメントに、彼の優しさが凝縮されているかのようだ。

©NHK

集中したパフォーマンスで予定よりも早く収録を終えた羽生は、TV放送のためのインタビュー収録に臨み、15年分の思いを込めた制作の舞台裏を明かした。詳しい内容は実際の放送に譲るが、そのなかで印象に残ったのは以下のような言葉だった。

この15年が経っていて、15年前に起きた出来事がなかった世界にはもういなくて、あれがあったうえで15年を生きてきた。だからこれだけがというより、人生観とか生き方とかすべてにおいて、震災や、たくさんの方々に出会ったこと、お話ししたこと、いろんな思いに触れたこと、そういったものがすべて自分の人生に含まれているなという感覚はあります。簡単に言えないんですけど、確かにあの出来事があって、人生が変わって、あそこから何とか前を向いて歩いて来たよという方々はたくさんいるんですけど、でもずっと思っているのは、やっぱりあの出来事がなかったらよかったなということなんですよね。失ってしまったものというのは、やはりかけがえのないものたちがありましたし、失われたものたちは2度と戻ってくることはない。そういった意味では、ぼくたちはあれを経験したうえで、前に進む力をある意味では手に入れたかもしれないんですけど、立ち帰ってみると、やっぱり、なかったらよかったなとは思います。

いまも変わらず心のなかにある哀惜と葛藤の思いをうかがわせつつも、さらに言葉を継いだ羽生は、15年を経たからこその未来への願いを語る。

曲を聴けば聴くほど、過去を自分のなかで消化しきらないといけないし、自分自身がうまく付き合えるようになって、そこから未来に向かって歩いていく姿を見せないと、皆さんに説得力のある表現にならないなと思った。自分も、取り残してきた辛い記憶や、蓋をしてきた記憶もいろいろあったんですけど、振り返るきっかけ、うまく付き合うきっかけにもなりましたし、自分自身も、この楽曲とともに、未来に向かって歩き出すきっかけになりました。

そりゃ、行ったり来たりはあると思うんです。人間って、そんなロボットみたいに、数学みたいに、綺麗な解を出せるわけではない。ぼく自身もこのプログラムを皆さんに届けることを考えたときに、自分のなかで整理整頓して、これを含めて自分の人生だから、ちゃんと歩いていけると思いながら滑っているんですけど、きっと辛いときもあると思うんです。そういうときに、「幾重」を聴いて、被災者のひとりとして自分もまた勇気をもらうんだろうし、いろんな方々が100%大丈夫だと思っていたけど急に辛くなったときに、自分のスケートを「幾重」という楽曲を聴きながら見ていただいたとき、ぼくと同じように、ちょっとでも傷が、優しい痛みになれるような感情になれたらいいなと願っています。

©NHK

自身が被災した16歳のあの日から15年。被災者のひとりとして、その象徴として、東日本大震災をはじめ被災地への支援をライフワークとし、さまざまな活動を展開してきた羽生結弦。震災の発災直後から、何度も何度も言葉に出して被災体験を語り、被災地を訪れてさまざまな人々の被災経験に触れ、期待や希望を一身に背負ってきた。その道のりには辛いことも、容易には癒えない傷もあったこと、それらを抱えて15年の歳月を歩んできたいまだから語れる思いがあり、描ける感情があるということ――「伝承」というテーマを掲げながら、いまこのときの貴重さとかけがえのなさをも感じさせる珠玉のコラボレーション、「幾重」。明日6月11日(木)から、NHK仙台のニュース情報番組「てれまさ」で宮城県域向けに放送し、6 月下旬に全国放送でもお披露目となる。


次回記事では「幾重」収録後に羽生結弦さんがメディアに語ったインタビューを全文掲載します。

= INFORMATION =
羽生結弦×ゆず 震災伝承ソング「幾重」フィギュアスケートスペシャルプログラム
放送予定 ●「てれまさ」(総合)6月11日(木)、12日(金)放送予定(午後6時10分、宮城県域放送)TOHOKU HEARTコーナーで放送 ※「NHK ONE」で見逃し配信(放送後1週間)あり ●「午後LIVE ニュースーン」(総合)6月24日(水)放送予定(午後3時10分、全国放送) ※「NHK ONE」で同時・見逃し配信(放送後1週間)あり このほか、全国放送の番組やミニ番組等でも放送予定。 【震災伝承ソング「幾重」掲載ページ】
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