2026年6月19日
佐藤駿のオリンピックプログラムを手がけた振付師が語るフィギュアスケート

INTERVIEW ギヨーム・シゼロン「長く続けることが最大の挑戦」

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2大会連続でアイスダンスのオリンピック金メダル、自身6度目の世界チャンピオンに輝き、ロランス・フルニエ・ボードリー選手とのチームでISUアワード2026の「スケーター・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたギヨーム・シゼロン選手。2023-2024シーズンからは佐藤駿選手のプログラムの振付も手掛け、ミラノ・コルティナ・オリンピックでは師弟揃ってメダルを獲得しました。5月30、31日のファンタジー・オン・アイスに出演したシゼロン選手に、ご自身のこれまでとこれから、佐藤選手の歩みについて聞きました。

シュンに伝えたのは「スケーティングは表現のための言語」

―― 今年のFaOIはいかがですか。
シゼロン ここに戻ってこられるのはいつも幸せに思います。1年でこれほどいろんなことがあったあと、また再会できるなんてクレイジーだよ。去年、ロランスとチームとしてここでデビューできたことがありがたくて、ぼくらを信じて呼んでくださったことに感謝しています。メダルをたくさん持って帰ってこられてよかったよ。

―― 今回は佐藤駿選手も一緒です。
シゼロン そうなんだ! 先週、シュンの新しいフリーを振付けたところです。今回は、今シーズンのフリーを披露するみたいだけど、アイスショーで滑るのは彼にとってもすごくいい機会だと思うから、楽しんでほしいです。

―― 佐藤選手にとっても大成功のシーズンでしたが、オリンピックシーズンのフリー「火の鳥」という選曲については?
シゼロン シュンはたいてい自分で曲を選んでくるんですよ。全部ではないけど、この曲は彼のチョイスです。ぼくはスケーターが自分で音楽を選ぶのが大事だと思っています。スケーター自身がインスピレーションをもらえる曲を選ぶのがいいからね。だから、彼が何を選んできても、ぼくは受け入れるし、プログラムが最大限機能するように努力するだけです。過去にいろんなスケーターが使っているような有名曲で新しいものを見せるというのは、つねに挑戦がつきまとうもの。大事なシーズンだったから、とにかく振付がシュンにしっくりくるようにしたいと思ったし、テクニックがうまくハマるようにも考えました。

―― 振付を手がけるようになったのは2023-2024シーズンからでしたね。
シゼロン 新シーズンで4季目に入ります。すごく成長しましたよ。興味の幅も広がって、いろんなものをよく見て、自分自身をより表現できるようになった。自分が愛するものを見つけることができたんだと思います。まだまだ伸びしろはあるし、こうやってアイスショーに参加して、ときにはテクニックのことを少し忘れてパフォーマンスを楽しむことも彼にはいい機会だと思う。競技や技術だけじゃなくて、ただただ氷上に喜びを知る場になるといいよね。

―― 佐藤選手自身も、以前はテクニックに集中していたけど、ギヨーム選手に教わるようになってスケートの他の面にも考えが及ぶようになったと話していました。
シゼロン それはうれしいな。ぼくが伝えてきたのは、スケーティングは言語だということ。学べば学ぶだけ、表現の引き出しが増えていく。簡単ではないけど、ぼくらアイスダンサーはスケーティングスキルそのものが仕事だから、それを彼にも伝えたいと思っていました。シュンと一緒に練習できるのはたいてい1週間やそこらで、そのあとは彼自身での練習になっていくから、新しい情報を伝えて彼のなかに留めておいてもらうのはけっこう大変なんです。でも、シュンに限らず、一緒に仕事をするスケーターにはみんな、氷の上での新しい感情や気持ちを知ってほしいと思って取り組んでいます。これまでに味わったことのない感情や、初めて知る細かな技術なんかをね。クラシックバレエと同じで、フィギュアスケートにおいてテクニックと芸術性は切り離せないもの。表現したいと思えば、それを実現できるだけのスケーティングスキルをマスターする必要があります。それに、スケーティングの上達は、ジャンプの上達も助けてくれる。だから、スケーティングを学ぶことは、すべてのスケーター、すべての側面にとっての勝利につながるってわけだ。(笑)たしか今回のFaOIで、ジュン(チャ・ジュンファン)もぼくが振付けたプログラムを滑るみたいなんだよね。

―― はい、先ほどの取材でそう話していました。
シゼロン うれしいな。

―― 「Mr/Mme」はフランス語の曲ですよね?
シゼロン そう。単純に、とても美しい曲だから、美しい滑りの彼にこの曲を選びました。最高にマッチしたよね。ジュンは才能に溢れていて、ぜひ一緒にアイスダンスをやってほしいと思うくらい。

―― アイスダンスを?
シゼロン ぼくはスケーターたちにアイスダンスへのリクルート活動もしているんだよ。(笑)ジュンは望まないだろうけどね。本当に美しくてずっと見ていたいと思うスケーターだし、ぼくがこうしてほしいと言ったことは全部叶えてくれる。彼に限界はないよ。当時、オファーをもらってすごく光栄で、ソウルまで行きました。

―― 新シーズンも振付師としての活動を続けていく予定ですか。
シゼロン 次のシーズンは、いまのところシュンだけかな。

シゼロン選手が振付た佐藤駿選手「火の鳥」、チャ・ジュンファン選手「Mr/Mme」を披露したFantasy on Iceの記事はこちらに掲載しています。

自分の進化にオープンでいたい

―― シーズンが終わってからはどんなスケジュールでしたか。 
シゼロン バケーションをとったあと、フランスに帰ってオリンピックの祝賀会なんかがあって、一度モントリオールに戻って、さらにフランスに帰り、ニューヨーク、シカゴと移動してようやくまたモントリオールに戻り、いまここにいます。ずっと旅してた。(笑)必ずしもスケートの仕事というわけではなかったけど、各地でやるべきことがあって転々としていました。

―― フランスやカナダでもアイスショーに出演予定が?
シゼロン 7月にクールシュヴェルで1つあるけど、いま決まっているのはそれだけです。クールシュヴェルは、ぼくのホームクラブで、インターナショナルなものではなく、小さい子どもたちと何人かのスケーターと一緒に滑る小さなショーになると思います。

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―― いまコーチ業についてはどのように考えていますか。
ギヨーム 試合に出てない数シーズンはモントリオールでコーチとしても仕事をしていたし、教えの仕事も気に入っていたよ。選手と両方やるのはかなり大変だけど、自分が滑るのとはまったく違う経験が得られる。いまは、ぼく自身にまだ氷上で学ぶべきことややるべきことがあると思っているけど、いつかはぼくが愛するスケートを教え、伝えていきたいと思っています。

―― 1年前の同じ時期のインタビューで、コーチとしてリンクサイドに立っているときに競技を恋しく感じたと話していましたが、その思いはいま満たされたと感じていますか。
シゼロン すべての経験が幸せだったから、いまの気持ちをなんて言えばいいのかはっきりはわからないけど、やっぱりまだスケートが楽しいし、試合だっておもしろい。ただ、成熟するにつれて、目標や動機は変わっていくもので、自分を成長させたいという意味では同じでも、若いときってメダルや結果に対してすごくハングリーだけど、経験がどんどん新しい視点を与えてくれるよね。だから、いまはただ自分自身の進化に対してつねにオープンでいたいと思っています。

―― ただ、2030年のオリンピックは地元で……
シゼロン それはわかってますよ。(笑)

―― オリンピックの閉会式でも、次のフランス大会へ向けてフランスのアスリートたちとのステージがありましたよね。
シゼロン あれはよかったね。ずっと決められた立ち位置にじっとしていなくちゃいけなくて、ほかの景色は一切何も見えなかったんだけど(笑)、素晴らしい瞬間だった。

―― オリンピックでは、フランスの他の競技の選手たちともコミュニケーションをとる機会はありましたか。
シゼロン もちろん。それがオリンピックのいいところだからね。自分の経験をいろんなアスリートたちと共有して、別の競技の選手たちもぼくらと同じような経験をしているんだという発見があったりしてね。生活や、抱く疑問や情熱のタイプもすごく似ている。それから、どの競技もみんな難しいということも。そうやって、知らなかった景色を知ることもいい経験だったと思います。

―― シゼロン選手にとって、アスリートとして最も大きなチャレンジは何ですか。
シゼロン 続けること。息長く続けることが最大の挑戦です。

―― では、これからもロランス選手との旅は続いていく?
シゼロン どんな旅になるかはわからないけどね。でも、2人で滑っていきたいとは思っています。試合に出るのか、ショーだけにするのか、そういうところはまだ考えているところです。

―― また氷上で、できれば試合でもお会いできたらうれしいです。
シゼロン ありがとう。
―― ありがとうございました。

(フルニエ・ボードリー&シゼロン組は後日競技続行を表明し、GPフランス大会とフィンランド大会に出場予定)

プロフィール
Guillaume Cizeron(ぎよーむ・しぜろん) 1994年11月12日、フランス・モンブリソン生まれ。ガブリエラ・パパダキスとのチームで、2022年北京オリンピック金メダル、2018年平昌オリンピック銀メダル、世界選手権5回、ヨーロッパ選手権5回、GPファイナル2回優勝。昨シーズン、ロランス・フルニエ・ボードリーと新チームを結成して、ミラノ・コルティナ・オリンピック金メダル、世界選手権優勝、ISUアワード「スケーター・オブ・ザ・イヤー」受賞。
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