2024年5月10日
今年のプリンスアイスワールドは「ミュージカル・オン・アイス」がテーマ!

プログラム・ストーリー、ミュージカル編①~レ・ミゼラブル~

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 毎年、GWより開催される日本史上初のアイスショー、プリンスアイスワールド。今年は新章として、「ミュージカル・オン・アイス」をテーマに展開されます。そこで、本誌連載「プログラム・ストーリー」の番外編として、過去にスケーターたちが競技会で披露したプログラムの写真を交えながら、珠玉のミュージカルの数々をご紹介していきます。いずれもPIWで披露される作品からラインナップ。今回は「レ・ミゼラブル」、通称“レミゼ”です。

フランス革命を舞台とした壮大な群像劇

 ミュージカル「レ・ミゼラブル」の原作はフランスの文豪のヴィクトル・ユゴーが1862年に発表した小説で、ナポレオン没落直後の1815年からの18年間のフランスが舞台。1つのパンを盗んだ罪で投獄されていた男、ジャン・バルジャンが仮出獄許可証を手にするところから物語は始まり、彼を軸に革命の時代に生きる人々の激動の人生を描いた雄大な群像劇となっている。世界各地で繰り返し上演されてきた人気ミュージカルだ。

ファンティーヌの心情を氷上に描いた三原舞依

2021年、全日本選手権での演技©Yazuka Wada

 この作品のドラマティックな名曲は、フィギュアスケートのプログラムでもたびたび採用されており、スケートファンなら一度は聴いたことがある曲ばかり。なかでも、昨シーズンに三原舞依がSPで滑っていたことが記憶に新しい。
 三原がこのプログラムで使用した曲は、「夢破れて(I Dreamed A Dream)」。娘のために娼婦となった女性、ファンティーヌが自らの過去と境遇を嘆くナンバーで、長年タッグを組むデイヴィット・ウィルソンが振付を担っている。ファンティーヌの母としての強さを感じさせるような、拳を強く突き上げるシットスピンでの動きが印象的だ。切なくも力強いボーカルに乗せ、三原はたおやかにファンティーヌを演じた。

メドレーでレミゼの世界観を展開したユ・ヨン

2021年、NHK杯にてフリーの演技をするユ・ヨン©Yazuka Wada

 北京オリンピックシーズン、フリーで「レ・ミゼラブル」のナンバーを使用したのが韓国のユ・ヨン。このプログラムは、ミュージカルでも冒頭に歌われる「囚人の歌」から始まり、パリに住む人々が自分たちの貧しい生活への怒りをあらわにする「一日の終わりに」、ファンティーヌの「夢破れて」、そして最後は革命家たちが戦いへの決意を固める「民衆の歌」と、計4曲のナンバーで構成されている。振付はシェイリーン・ボーンだ。力強いナンバーでは、鋭い視線とキレのある腕の動きで登場人物たちの激しい感情を表現し、「夢破れて」では悲哀に満ちた表情と曲線的な動きでファンティーヌの心境を描いた。

「彼を帰して」のプログラムでジャン・バルジャンの愛を表現した村上大介

2015年、全日本選手権のSPで「彼を帰して」のナンバーを滑る村上大介©Shinji Masakawa

 村上大介が使用したのは、ジャン・バルジャンが義娘コゼットの恋人である青年マリウスが息を吹き返すことを願って歌う「彼を帰して(Bring Him Home)」。伸びやかで慈愛に満ちた雰囲気の男性ボーカルに乗せ、ローリー・ニコルの振付を空気をなでるような優しい所作で舞い、柔らかくも切実な愛を表現した。村上はこのプログラムをSPで滑った2015-2016シーズン、グランプリシリーズ2戦で3位に入り、グランプリファイナルにも進出した。

ジュニアらしいエネルギッシュな三宅星南の「レ・ミゼラブル」

三宅星南、2018年世界ジュニア選手権でのフリーの演技©M.Sugawara/Japan Sports

 2017-2018シーズン、三宅星南は、三色帽章を胸にあしらった衣装をまとい、「囚人の歌」「宿屋の主人の歌」「夢破れて」「民衆の歌」の4曲が組み込まれたフリーを滑った。下劣な宿屋を営むテナルディエ夫妻が商売のイカサマを紹介するコミカルなナンバー、「宿屋の主人の歌」が入っていることで、重くなりすぎないメリハリのあるプログラムになっていた。振付は荒屋真理と吉野晃平。表現の見せ場であるステップは「民衆の歌」のパートにあてられている。全身を力強く使って滑り、革命家の大きな熱意を感じさせるような表現が見どころだった。

代々滑り継がれるミュージカルの名作

 過去には、カート・ブラウニング、ポール・ワイリー、ブライアン・ボイタノら伝説のスケーターたちがショーナンバーで「彼を帰して」を滑っているほか、キム・ヨナは2度目の世界女王に輝いた2013年の世界選手権のフリーで使用している。「囚人の歌」のほかに、一幕ラストの大ナンバー「ワン・デイ・モア」や、宿屋の娘エポニーヌが報われない恋の痛みを歌う「オン・マイ・オン」などの名曲で構成されており、デイヴィット・ウィルソンが振付を手掛けた。
 また、ジェレミー・アボットは2012-2013シーズンに「彼を帰して」をフリーで採用し、当時のコーチであった佐藤有香とともに自ら振付を行った。ボーカルはなく、バイオリンの音色に柔らかく美しい動きを乗せて曲の空気感を表現する、「レ・ミゼラブル」のプログラムのなかでも異色の名プログラムとなった。


 ミュージカル「レ・ミゼラブル」は、1987年の初演以来、日本でも上演を重ねており、2024年から2025年にかけて全国を縦断するかたちで上演されることも発表されています。プリンスアイスワールドの舞台で繰り広げられる「レ・ミゼラブル」からのナンバーは、どんな表情をしているのでしょうか。

▶イベント開催情報
プリンスアイスワールド2023-2024
4月29日~5月5日/KOSÉ新横浜スケートセンター
問い合せ先
※2023年4月26日現在
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