2024年5月14日
全日本でシングルの集大成を披露し、ペアとしての旅をスタート

STORIES③本田ルーカス剛史 「自分のスケート」を求めて

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10月27~29日に開催された西日本選手権。西日本各地のブロック大会から出場したシニア、ジュニアの選手たちが、全日本への出場権をかけて激戦を競い合い、西日本からの全日本出場者たちが出揃った。この試合で、シニアの男子シングルの全日本出場枠を最後に掴み取ったのが本田ルーカス剛史だ。

本田は今年5月、同じ木下アカデミーの清水咲衣と組んで、ジュニアのペアチームとして活動を開始した。今季が終わったら、ペアに専念する予定にしている。だから今シーズンは、彼にとっては男子シングルのラストシーズンとなる。そんな彼にとって、最大の関門がこの西日本選手権だっただろう。シード選手と免除選手を除くと、6枠しかない狭き門だ。

どの試合も今シーズンは最後だと思って滑ろうと思っているので、ジャンプももちろん大事ですけれど、それ以外の部分でできるだけ自分のスケートを記憶に残してもらえるような、自分のスケートをアピールできるような演技をしようということと、感謝の気持ちで滑っています。

2023年10月28日、西日本選手権男子フリー終了後

2002年生まれの本田が頭角を現したのはまだノービスのころ。全日本ノービスBで上位に入り、野辺山で行われる全国有望新人発掘合宿に呼ばれた。講師をステファン・ランビエルが務めた合宿で、本田は目立っていた。傍目から見てもはっきりわかるほど、踊りのセンスが際立っていたのだ。音感がよく、けれど音の通りには踊らずに裏拍を取っていくような、自分なりの表現を探す姿勢があった。陸上でのダンスのレッスンでも、自分なりの工夫でマイケル・ジャクソンを踊ってみせる彼は目を引いた。

©World Figure Skating/Shinshokan

もちろんステファンが見逃すはずがなく、本田を褒めた。そのことを、彼はノービスのころの思い出深い出来事として語る。

野辺山合宿で、ステファン・ランビエル先生に評価していただけて、スケーティングや表現を褒めていただいたのは自信になりましたし、当時はダブルアクセルまでしか跳べていなかったなかでも、高い点数はもらえていたので、演技内容を積み重ねていく良さを知るようになったかなと思います。

西日本選手権男子フリー終了後

ジュニアに上がると、高難度ジャンプの習得にまい進。トリプルアクセルの安定とともに成績も上向いた。2019年の全日本ジュニアで3位と初めて表彰台に乗り、同年の全日本選手権で新人賞。翌2020年には新設された木下アカデミーに移り、激戦の全日本ジュニアを制した。股関節の故障による不調を押しての、涙の優勝だった。

その後、結果を出せないことが続いたここ数シーズンは、悩むことが多かったという。2022年には世界ジュニア選手権の代表に選出されたが、思い描いたような演技とはならなかった。「いい時も知っているだけに」つらかったというが、それが今年になって、吹っ切れた。

ジュニアのころは成績を残したいという気持ちが強かった。もっと自分の表現や足元に自信をもてばよかったと思います。シニアでは、今年のインカレのあとに、山隈太一朗選手が、どういう選手になっていけばいいのかとかいろいろ話してくださって、スケートに対する向き合い方がよくなりました。自分の良さをもっと出す練習を心掛けるようになって、すごくスケートが楽しくなってきました。全日本はせっかくいただけたチャンスなので、最後までしっかりがんばりたいと思います。

西日本選手権男子フリー終了後

ジュニア時代、比較的がっしりとした体躯から繰り出すジャンプでも評価されたが、やはり本田の本領はパフォーマンス自体の魅力にあったといえる。ピーコックグリーンのシャツでクイーンのカバー楽曲を抜群のリズム感で洒脱に滑った「愛という名の欲望」、クールなジェームス・ボンドに扮した「007」、難曲「ブルース・フォー・クルック」ほかを自身の解釈で滑ったプログラム。音を自分のものにし、よく流れるスケーティングにジャジーでコンテンポラリーなニュアンスを与える彼ならではの表現がいくつも思い浮かぶ。

シングル選手として臨む全日本選手権は、今回が最後。これ以上ない舞台で、集大成の思いをこめたパフォーマンスを見せてくれるだろう。

清水咲衣&本田ルーカス剛史ペアとしてスタート

いっぽう、清水咲衣&本田ルーカス剛史組のジュニアペアチームとしての初戦は、11月3日に青森・八戸で開幕する東日本選手権(兼 全日本選手権 兼 全日本ジュニア選手権ペア予選会)だ。

彼がペアに転向することを考えるようになったのは、「オリンピックに行きたい」という気持ちからだったという。春先のペアのトライアウトに参加すると、清水と滑る姿を見たブルーノ・マルコット(三浦璃来&木原龍一組のコーチ)らから「今シーズンから大会に出られるよ」とお墨付きをもらってチームを結成。8月の木下トロフィーでの演技披露では、シングルツイストをはじめペアの技も織り込んだパフォーマンスを見せた。今季、清水&本田組が滑るのは、SPが「白鳥の湖」、フリーが「ウエスト・サイド・ストーリー」。彼のリクエストからキャシー・リードコーチが選曲をし、生まれたプログラムだ。

最初の年なので、ちゃんとキャラがある曲がいいなと、ぼくのほうからリクエストさせてもらいました。もちろん世界で活躍できるペアになりたい。だからといって、焦ってすぐできるものではないですし、いまは基礎を習得できるように、早く早くという気持ちよりもできることをしっかり、身に付ける、体にしみこませるという意識でやっています。

2023年8月、木下トロフィーでの演技披露後に

キャラのある曲を、という発想がいかにも彼らしい。また清水も、「練習しているときから、リンクの周りの壁を突き抜けて、遠くまで表現が届くようなイメージを心掛けています」と話す通り、指先までていねいに、意志をもった表現をするタイプのスケーター。初めて取り組むペアの技に挑戦しながらも、心を合わせて2人の表現を作り上げていくだろうことが想像できる。本田が紆余曲折を経ながらも大切にしてきた「自分のスケート」も、清水というパートナーを得て、さらに広がっていくに違いない。

 

東日本選手権はFODにてライブ配信・見逃し配信される予定。
ペア 競技スケジュール:SP 11月4日18:05~ フリー 11月5日12:20~
FOD https://fod.fujitv.co.jp/

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