2024年7月27日
クローズアップ:男子フリースケーティング

本田ルーカス剛史「最初で最後の演技」

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今後はペア競技に専念すると決め、シングル選手として最後の全日本選手権を迎えた本田ルーカス剛史(木下アカデミー)。いつもどおりの平静な表情で氷の中央に立つと、冒頭に3アクセルを着氷、2本目には4回転トウループに挑み、シングル選手としての意地を見せる。ひとつひとつのスケーティングで音楽のエッセンスをしっかりと掬い上げ、スピン、ステップともすべてレベル4。最後まで誇りをもって滑り終えたパフォーマーを、総立ちのスタンディングオベーションが称えた。キス&クライでは、恩師濱田美栄コーチ、佐藤洸彬コーチも涙。万感のラストパフォーマンスとなった。

―― 滑り終わってどんな思いがこみ上げてきましたか。

本田 正直こんなにいい演技ができると思ってなかったので、そこに対してびっくりなのと、本当に、最後のステップ入るまでに少し「終わりたくないな」っていう気持ちが多くて。でも本当に……全部、全体的に最後まで感謝の気持ちを持って滑れたんじゃないかなと思います。

―― 演技後は、濱田先生とどんなお話をされましたか。

本田 そうですね、「ありがとう」ってすごく言ってくださって。本当に涙してくれて、なんか「がんばってたんだな、がんばってきてよかったな」と……木下アカデミーが始まった最初のほうは、自覚はなかったんですけど、ぼくが引っ張っていくかたちになっていたと思うので、そういう面ですごく感謝をしてもらいました。

―― 演技後は会場もスタンディングオベーションでした。どんなふうにご覧になりましたか。

本田 3年前に羽生結弦選手が、ノーミスの演技で、360度全部スタオベしているのを見て、ぼくも全日本でいつかはフルで総立ちしてもらいたいなという思いでやってたので、今日それが見られて、すごく感慨深い。しかも同じ会場だったので、より感慨深いなと思いました。

―― シングルとしては最後の全日本選手権でのフリーですが、試合前の気持ちはどんなものがありました?

本田 至って冷静ではあったんですけど。やっぱり最後っていう寂しさだったり、下手な演技はしたくないなみたいな、そういう不安はあったけど、最後、スタート位置に立つときには、もう……うん、自信も少しありました。いい演技ができたんじゃないかなと思っています。

―― 2本目のジャンプはどういう気持ちで?

本田 4トウループですかね? とにかくどんなかたちでもいいから締めたいっていう気持ちが強くて。4回転をやらないと、(シングル競技を)辞められないなっていう、そんな気持ちで締めて、まあ良かったんじゃないかな。4回転の実施自体は良くないんですけど、でもぼくのなかでは満足しています。

―― やっぱり4回転を入れておきたいという思いがありましたか。

本田 そうですね。やっぱりシングルの選手として、試合では決められなかったんですけど、やったぞっていう自分の成長……何でしょうね、はっきりと目に見えるかたちで終えたかったというのがあって、今日はやろうと思いました。

―― ジャンプ以外の部分でも、速報値ではすべての要素でレベル4でした。今日の演技について、ご自身ではどう評価していますか。

本田 次に向けてはいちばん良かったんじゃないかなと。これ以上できなかったんじゃないかなというような演技ができたことは、本当に、大満足と言っておきたいなと思います。

―― 心残りなく次のステップに進めそうですか。

本田 ここまでできるから、次ももっと上を目指せるんじゃないかなという気持ちはもちろんあるんですけど、次に向くために今回最後だと意気込んでやったので、もう最初で最後の演技ですし、いい意味でもう1回したいとは思わないなっていう感じです。

―― もう一度見たいと思っているお客さんも多いと思うんですけれども、ご自身のなかではそういう逡巡はない?

本田 そうですね。やっぱりシングルの選手として……そうですね。まあでも一つ区切りとして、ここはしっかり切っていきたいなと思っています。

―― シングルとペアをやっているなかで、難しいことといいことはどんなことでしたか。

本田 いい面としては、やっぱり単純に氷に乗る時間が増えて、スケーティングだったり、体の使い方だったり、筋力だったり、本当に全部、いまとなってはすごいプラスの方向に働いたんじゃないかなと思いますし、シングルを「楽しい」って……ペアはもちろん楽しくやらせてもらっているんですけど、より相対的に楽しいなって思えたのも、すごくよかったなと思う。良くない部分は、やっぱりペアの練習の後にシングルを練習することが多いので、もっとシングルをやりたいと思っても、ペアのためにシングルを少し減らしたりという妥協だったり、100パーセントやり切れないという意味ではちょっと。本当にその点だけですね。


―― 濱田先生を泣かせたというのは相当のことではないですか。

本田 そうなんですよ。いや、でも、どっちかというと佐藤先生が泣いているのは初めてで、すごくうれしかったです。(笑)

―― お疲れ様でした。また違うかたちでの活躍をお待ちしています。

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