2025年1月26日
男子フィギュアを代表するアーティスティックスケーターが語るフィギュアスケート

INTERVIEW ジェイソン・ブラウン「ぼくは自分を”ジャンパーじゃない”とは思わない」

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過去2シーズンはシーズン前半をアイスショーの世界で過ごし、全米選手権から本格的に競技へ参加、世界選手権で磨きのかかった演技を披露するスタイルで、新たなキャリアモデルを築いてきたジェイソン・ブラウン選手。今季は、ミラノ・コルティナ・オリンピックを目指して、2021-2022シーズン以来となるグランプリシリーズに参戦し、スケートカナダで初戦を迎えました。観客を巻き込むエンターテイニングなパフォーマンス、洗練されたテクニックの1つ1つでフィギュアスケートの魅力を体現する彼に、改めて「フィギュアスケートとは何か」を聞いてきました。12月5日発売の「ワールド・フィギュアスケート」102号では自身のキャリアにまつわるストーリーを掲載。あわせてお楽しみいただくと、ジェイソン選手のフィギュアスケート観をより感じていただけるお話です!

―― シーズン初戦、お疲れさまでした。3季ぶりにGPに参戦しています。またGPでお会いできてうれしいです。

ジェイソン ありがとう! まずはまた新しいシーズンが始まってワクワクした気分だよ。今回はお見せしたかったものができたわけではなかったけど、多くを学べました。試合での学びをまた2戦目にすぐぶつけられるチャンスがあるのはGPシリーズの醍醐味のひとつだよね。2年GPシリーズを休んでいたから新鮮で驚くことも多くて、シーズン序盤のこの時期から準備や心構えが整っていることもそう。次のステップに進むのが楽しみだし、学びと努力を続けながらシーズンを戦い抜きたいです。

―― ここ数シーズンはアイスショーと競技を両立しながら、アスリートとアーティストの両方として過ごしていました。この夏、日本代表の強化合宿のコーチとしてカート・ブラウニングさん(世界選手権4回優勝=1989~91、93)が参加していたのですが、彼は現在の男子スケートについて「観客はジャンプに興奮し、スケーティングに感動する。フィギュアスケートはスポーツであり、芸術でもあるから、どんなタイプのスケーターも報われるようになるべき」と話すなかで、それを体現するスケーターの1人としてあなたの名前を挙げていました。自身のキャリアを通して、フィギュアスケートの競技性をどう感じていますか。

ジェイソン そんなふうに言ってもらえていたなんて……うれしい! ぼくは、このスポーツにおいていちばん大事なことは、アスリートが成長する姿を見せることだと考えています。もちろんぼく自身もその姿を見せたいと思っています。このスポーツには、競技を推し進める方法にも、競技システムを広げる方法、それから観客と繋がる方法にも、いくつものやり方や道があります。ぼくが美しいと思うのは、ぼくらのスポーツが技術的なところに留まらないものだということ。ジャンプにしたって、スピンやフットワークにしたって、ただそれだけのものではなく、芸術的な美しさと運動能力の融合なんだ。だから、ぼく自身も、芸術的側面やストーリーテリング、感情表現をプッシュし続けていきたいし、そういう点においてこの競技の代弁者であれたらと思っています。ぼくのゴールはすべてを出来栄えの「+5」をつけられるくらいクオリティを上げること。ジャンプ、スピン、ステップ全部で高い質のものを届けることが目標です。

―― 競技と芸術という2つの側面は別々のものではない、ということですね。

ジェイソン ええ。とくにここカナダにいると、パトリック・チャンが思い出されるわけだけど、人々が彼を語るとき、彼の“スケート”の話をしますよね。素晴らしいスケーティングスキルを持っていて、信じられないようなジャンプを跳んでいて、スピンだって美しい。彼が1人の“スケーター”として知られているのは、彼のスケートにはすべてがあったからです。ただ……、ここ2、3年は、細部ばかりが注目されがちというか、「ねえ、見て! あのジャンプすごくない!?」という感じがする。あ、もちろん大前提として!、みなさんが競技を後押ししてくれようとしていることは素晴らしいことで、ぼく自身もみなさんの姿勢には畏敬の念を感じています。だけど、“スケーター”として語ってほしいということを心に留めておいてもらえたらうれしいです。

ーー なるほど。

ジェイソン たとえば、素晴らしいジャンパーがいたとして、もちろんジャンプが素晴らしいとしても、“ジャンパー”としてだけ見ないで、そのスケーターが氷上で見せるすべてに視線を注いでほしいんです。スケーター自身にも、「自分はジャンパーだ」と自分で自分をカテゴライズするようなことはしてほしくない。そんなことない、きみにはもっともっとたくさん素晴らしいところがあるんだから。それはもちろんぼくにも同じことが言えて、たしかにぼくは芸術的な側面で競技をプッシュしているほうだとは思うし、ジャンプの種類に関して言えばここが天井だとも思うけど、自分を「ジャンパーじゃない」とは思わない。ぼくもいいジャンプを跳べるからね。だから、ぜひ選手たちがこのスポーツに何をもたらし、競技のなかでどうフルパッケージを見せているかに注目して観てもらえたらと思います。

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プロフィール
Jason Brown(じぇいそん・ぶらうん) 1994年12月15日、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。2014年ソチ・オリンピック9位、団体銅メダル。2015年全米選手権優勝。2020年四大陸選手権2位。2022年北京オリンピック6位。2023、2024年世界選手権5位。今季はスケートカナダ8位、NHK杯7位。2018年からトレイシー・ウィルソン、ブライアン・オーサーに師事し、トロント・クリケットクラブで練習を積む。競技を続けるいっぽうで、世界中のアイスショーでも活躍し、日本でも「羽生結弦 notte stellata」、「フレンズオンアイス」、「THE ICE」、「ファンタジー・オン・アイス」などに出演。
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