衣装デザイナーの伊藤聡美さんが6月20日、ヒューマントラストシネマ有楽町で行われた、映画『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』のトークショーに登場しました。
映画『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』(監督:フェルザン・オズペテク)は、第70回ダヴィド・ディ・ドナテッロ賞(2024年3月~2025年2月までの期間に最多の観客動員数を記録したイタリア映画に贈られる賞)を受賞した作品で、日本では6月19日より公開されています。作品の舞台は、アルベルタとガブリエッラの姉妹が経営するイタリアの衣装工房。娘を亡くした悲しみが癒えぬままのガブリエッラ、夫のDVに悩むお針子のニコレッタ、輝かしい経歴を持ちながらもそれを重圧を感じているデザイナーのビアンカなど、衣装に関わる女性たち1人1人の困難が描かれ、共に手を携えて傷を乗り越えていく群像劇です。
上映終了後に登場した伊藤さんは、約30分にわたってデザイナー視点で見た映画の魅力や衣装製作の裏側などを語りました。
「神というか、普通に人間だよな」
羽生結弦さん、浅田真央さん、三浦佳生選手をはじめとした多くのトップスケーターの衣装を手がけ、イリア・マリニン選手に製作したコスチュームがISUアワードの最優秀衣装賞を受賞するなど、人気デザイナーとして活躍する伊藤さん。映画本編の上映終了直後に始まったトークショーではまず「いい意味で裏切られました。衣装関係の映画は、衣装を作っている場面をフォーカスするものが多いのですが、(この映画は)ドレスを作っている工房の方たちの人生、悩み事の部分を描いていて、それがいいなと。私も展示会でドレスを見て『わー、この職人さん神だな』と思ったりするのですが、この映画を見たら『神というか、普通に人間だよな』と思いました」と感想を率直に語った。
この映画と自身の共通点については、「デザイナーの方(ビアンカ)に感情移入しました。怒鳴り合ったりしてたじゃないですか。私もコーチや振付師の方とディスカッションすることがあるので、『わあ、わかるわ』と思いながら見ていました。『自由に作って楽しそうですね』と言われたりするのですが、フィギュアスケートだと『こういうイメージで』『こういう色で』と、デザインに意見を言う振付師さんやコーチもいらっしゃいます。そういう意見を1つ1つ聞いてまとめ上げるのが私の役割なのですが、『いや、私はこう思う』とけっこう言うタイプなので」と語り、衣装製作の苦労をにじませる。
さらにトークが伊藤さんの仕事の詳細に迫ると、「依頼されたら、言われた通りのデザイン画を1、2枚書いて、最後の1枚は自分がやりたいものにすると、意外と『この色いいね』となったりすることもあります。フィギュアスケートは競技なので、選手側の縁起のいい色、ゲン担ぎの色もあるんです。この色の衣装でいいメダルが獲れたからオリンピックではこの色がいいとなって、それで決まることもあります」と衣装デザインが決まる過程も明かされた。
羽生結弦さんとコラボレーションした写真集「Couture on Ice」に話が及ぶと、「まず羽生さんを被写体にした写真集を作りたい、衣装をオリジナルで作ってほしいというお話があって、『必ず氷上で撮影してほしい。それができないならやらないです』と言ったら、羽生さん側がOKしてくれました。(撮影時は)音楽をかけて滑ってくださったのですが、羽生さん自身も感情を込めて、そのシチュエーションに自分を乗せて、キャラクターみたいなものを作り上げてくれるんですよね」と熱く語った。
さらに、「近年、『ウェディングドレスを作ってほしいです』というオーダーが増え、それをきっかけにちょっと違うものを作りたいなと思って、10月にパリでファッションショーをやるんです」と大発表があり、会場からは驚きの声が。最後は伊藤さんの今後の活躍に期待が高まり、トークショーは幕を閉じた。
映画『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』は、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか都内の映画館で上映中。今後も、全国各地での上映が予定されている。



