2024年5月20日
衣装デザイナーの伊藤聡美さんに、様々な衣装の製作秘話をお聞きしました

コスチューム・ワールド~第1回・伊藤聡美~【後編】

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フィギュアスケートの枠を超えて

島田麻央、全国中学校スケート大会の演技©World Figure Skating/Shinshokan

ーーノービス、ジュニア、シニアでオーダーの違いはありますか。
伊藤 ノービスとジュニアではあまり差はないですが、ジュニアとシニアでは差が出てくると思います。シニアになるとみなさん「ちょっと大人っぽくしたい」と気にされます。ノービスとかジュニアだと、スカートの裾にテグスを入れてクルクルとかわいくさせたりするのですが、シニアになると「さらっと大人っぽいイメージがいい」というオーダーが多いですね。

ーー既製品もつくっていらっしゃいますが、デザインはどのように決められるのですか。
伊藤 いままでオーダーで作ってきたなかで人気の形がわかってきたので、既製品は人気がある系統のデザインにしています。なので正直に言うと、音楽のイメージというよりも人気のある形や色を選んで作っていますね。

ーーフィギュアスケートの以外の衣装も手掛けていらっしゃいますね。
伊藤 フィギュアの衣装だけを作っていては、自分が成長しないんじゃないかって不安になったのが始めたきっかけです。バレエの衣装は素材がまったく違うので、それだけですごく新鮮さを感じました。そのほかの社交ダンスや新体操も、やっぱりそれぞれの競技で特性がある。たとえば装飾が落ちても減点はないので、フィギュアよりも装飾をたくさんつけられます。新体操ではレオタードに直接絵を描いたりして、競技が違うだけで作り方や表現の仕方が変わるんだなというのを知りました。そういったことをフィギュアの衣装にも活かしたいと感じますね。Vaultingという馬上でパフォーマンスをする競技の衣装を作った際は、「大きな石があると馬が痛がる。色味で装飾をはっきりさせてほしい」というオーダーがあって、なるほどなと思いました。

ーーこれから挑戦したい分野は?
伊藤 たくさんありますね。「BEYOND」や「プロローグ」の衣装を作って、ああいった舞台作品のような衣装ってすごくいいなと思いましたし、フィギュアの世界に必ずしも固執しなくてもいいのかなっていうのは正直、少し思います。ミュージカルとか舞台の衣装もやりたいですし、なんなら自分でプロデュースして発表したいくらいの気持ちです。それが大きな夢です。

ーーありがとうございました。伊藤さんのこれからのご活躍も楽しみにしています。


「ワールド・フィギュアスケート 97号」では、三原舞依選手や島田麻央選手の今季の衣装の製作秘話や、浅田真央さんの「BEYOND」、羽生結弦さんの「プロローグ」の衣装についてのお話をさらに詳しく掲載しています。どうぞ本誌もお楽しみください。

プロフィール
伊藤聡美 (いとう さとみ) 高校から服飾を学び始め、エスモードジャポンを卒業したのちにイギリスの芸術大学へ留学。帰国後はパフォーミングアーツの衣装などを手掛けるメーカーに勤務し、2015年に独立。以後、数々のトップスケーターの衣装を手掛ける。今季は「BEYOND」「プロローグ」といったアイスショーの衣装製作にも携わっている。
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