人気作品の衣装製作
—— 『オペラ座の怪人』や『SAYURI』などの人気の作品だと、複数の選手からオーダーされると思いますが、どう変化をつけていますか。

伊藤 それは本当に難しいです。どうしても自分のテイストがあるので、飾りのつけ方や素材の使い方は似てきちゃうんです。なので、その選手のスタイル全体を見たり、似合う色でうまくバランスはつけているつもりです。あとはあまり同じようなモチーフは使わない。いろいろな衣装を見ていると、同業者なのでこれ別の人の衣装で使っていたなとか、あそこで買ったんだなとかわかっちゃうんです。そういったことが解らないように工夫しています。

—— 『SAYURI』の衣装は、エフゲニア・メドヴェージェワ選手や竹野比奈選手など、本当にたくさん作っていらっしゃいますよね。

伊藤 『SAYURI』はとにかくみんな着物をイメージするので、そこからは外れられないとちょっと諦めています。(笑)メドちゃんの場合は「力強くてかっこいいイメージの『SAYURI』の衣装にしたい」とご本人の希望があったので、黒にブルーのグラデーションを入れてパキッとするようなイメージ。比奈さんの場合は、見た目がたおやかな方です。『SAYURI』の映画の最後のシーンでさゆりがグリーンがかった着物を着ていて、桜が舞うシーンがあるんですけど、比奈さんとも「ああいうイメージの衣装にしたいね」という話になって。それでいままでの人とはちょっと違う美しさの衣装になりました。
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後編では本誌に載せきれなかったエピソードをお届けしています!