新しい自分として臨む全日本
―― やはりアスリートにはフィジカルの練習だけでなく、さまざまな側面が関係することがよくわかるお話ですが、そのうえで迎える今シーズンの全日本に向けては、どんな思いがありますか。
「結果を求めなければいけない試合だからこそ、結果を求めるメンタルには絶対になると思いますが、そうなったときにどう落ち着くかを、いまからイメージしていくことかなと思っています。目標としてこうしたインタビューでお話しするのは『表彰台に乗って、世界選手権に行きたい』ということですが、その目標と、自分がやるべきことはまた違います。たくさんイメージトレーニングをして、その通りに丁寧に1つひとつこなすこと、いつも通りの練習を全日本でそのまま出すということを、自分のなかの目標としてやっていきたいなと思っています」
―― 全日本を応援する方々のために、今シーズンのショートプログラムとフリーについて、見どころを聞かせていただけますか。
「ショートは、1つの物語として、全部を見て感じていただけたらと思っています。失恋の物語ですが、そのなかにある女性の強さ、芯の強さを表現したい。見終わったときに、辛いことから立ち上がっていく勇気を感じていただけたらなと思っています。フリーに関しては、悩んではいるのですが4回転は入れない選択肢も考えていて、その場合は完璧にクリーンなプログラムにしたい。4曲をつなげたプログラムなので、それぞれの違いを見ていただいて、最後のステップでは、会場のみなさんとつながって、自分も楽しみながら、恵みの雨を受けているような楽しさを共有できたらと思います」
―― コンディションを整えるために日頃取り入れている工夫はありますか。
「普段、すっごい食べるんですよ。それでも試合前は食欲が落ちて、体重が減ったり集中力が切れたりということもあったんですが、前よりも試合前に糖質をたくさん摂るようにしたら、集中力も体力も持つようになってきました。体力だけじゃなくて、集中力も絶対に糖質なんですって。日本スケート連盟の栄養士さんのアドバイスで、筋肉は糖質も脂質も使えるけれど、脳は糖質しか使えないから、とにかく糖質を摂ってねと。自分ももともと食べることが好きで、栄養にも興味があって、一度アスリートの栄養に関する資格を取ろうと勉強したこともあります。大学の勉強もあるので挫折しちゃったんですけど、また時間があったらやろうかなと思っています」
―― とても基本的な質問になってしまうのですが、改めて簡単に、スケートを始めたきっかけを伺えますか。
「姉がトリノオリンピックの荒川静香さんを見て、スケートをやりたいと通い始めたのが私が3歳のときで、一緒についていって見ているうちに、やりたくなって4歳から始めました。5歳から岡島先生に習い始めたんですが、本当に不器用で、私も周囲も本気でやるつもりはなかった。転換点になったのは中学1年生で全日本ノービス優勝したとき(2016年)。これは本腰を入れてがんばるか、となったので、自分でも本当に遅いなって思うのですが、オリンピックを目指そうと思ったのはそのときからです」
―― スケート人生で出会ってきたなかで、大切だなと思う存在はどなたですか?
「やはり樋口新葉選手。5歳で岡島先生に習い始めたときから、いちばん身近にいるすごい選手で、自分にとっては新葉ちゃん抜きでは自分のスケート人生が語れないくらい、いちばん身近でいちばん憧れている選手です。それから、永井優香さん。優香ちゃんは初めて東京ブロックの試合で見たとき、なんて綺麗な動きをする綺麗なお姉さんなんだろうと感激して、話しかけたらすごく優しくて。競技から引退されたいまも、光栄なことに応援してくださって、試合の前後にメッセージをくださいます。カロリーナ・コストナーさんは、現役のころずっと演技を見ていましたし、ジュニア合宿で“自分の手足がここまでだと思っている、そのさらに先まで伸ばしてね”“エレメンツの練習も、その次の一歩まで練習して”と教えていただいたことなどを、日々の練習で生かしています」
―― 本当に生活の全般において競技のための日々を送られているという印象ですが、とても多趣味ですよね。最近は息抜きの時間にはどんなことをされていますか。
「本と、ハムスターと、あとなんだろう……。この前初めて、アニメを勧められて、絶対ハマらないと思いながら見始めた『ハイキュー!』にどっぷりハマっちゃって、いま見終わってロスになっています。最近ヒロアカ(『僕のヒーローアカデミア』)を勧められて、アニメオタクへの道が急に開けてしまうかもしれないです(笑)」
―― 住吉選手の現在が非常によくわかるインタビューをさせていただき、ありがとうございました。
提供/オリエンタルバイオ