2024年5月17日
カナダより親友の引退に寄せて

INTERVIEW ナム・ニューエン「ぼくはキーガンが大好きだから」

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今年3月、カナダ・カルガリーで行われた世界ジュニア選手権を取材中のことでした。男子フリーのスモールメダルセレモニーに参加しようと会場付近をうろうろしていると、突然「Excuse me?」と声をかけられ、振り向くと、そこにいたのは、2015、2019、2021年の世界国別対抗戦にも参加した元カナダ代表のナム・ニューエンさんでした。今回は、大会ホストとして、セレモニーの司会を担当するといい、フリーで2番に入った吉岡希選手の名前をどう発音するのか教えてほしいとのことでした。偶然に感謝しつつ、大会の感想と、選手時代に切磋琢磨を続けたよきライバルであり、親友でもあるキーガン・メッシング選手のラストシーズンへ寄せて、メッセージをもらうことができました。

今夜、キーガン選手のラストパフォーマンスを前に、「I love him so much」と締めくくられたナムさんのインタビューをお届けします。

―― 男子の試合はどうご覧になりましたか。

ナム すごかった。次世代の選手たちが世界の舞台に上がっていくのを見られました。これから男子フィギュアがどうなっていくのか、彼らの残りのキャリアがどんなものになっていくのかと思うと興奮するね。今週は男子スケート界にとって最高の1週間になったと思う。その目撃者になれて幸せに思います。

―― 選手たちの印象はいかがですか。

ナム 日本は本当に毎年強いスケーターが出てきますね。カオも彼なりの道のりでやがてレジェンドになるだろうと思います。一度一緒に試合で戦ったことがあるけど、あのときから今日までの成長を見ることができて感動しました。素晴らしかった。カナダの男子たちも強くなってきています。ウェスリー・チュウとアレクサ・ラキックはベストを尽くせたと思いますし、彼らの今後が楽しみです。

―― 今後の男子スケートにはどんなことを期待しますか。

ナム もちろん変わらず選手たちにいい滑りを見せてほしいです。これから数年は新しい選手、チャレンジャーも出てくるだろうと思います。現に、ぼくらはすでに4回転アクセルを目にしているわけですし。あとに続けと、難しい技術に挑戦する選手も現れてくるんじゃないかな。でも、いちばん大事なことはつねに美しく正しいスキルを磨いていくこと。その点においては、いまいい方向に向かっていると思います。それにしても、新しい世代が出てくるのはいつでもワクワクしますね。

世界ジュニア選手権ではホストとして参加し、プロモーションイベントへの参加やスモールメダルセレモニーの進行を務めた ©World Figure Skating/Shinshokan

―― 女子シングルもご覧になりましたか。

ナム 最後の数人だけですが、見られたよ。マオ(島田麻央)は傑出していました。彼女は驚異的です。今シーズンの初めにトロントでローリー・ニコルと振付をしていたのを覚えているんだけど、ただ滑っているだけでも十分美しかった。マオ、世界ジュニアのタイトルおめでとう! 次に何を見せてくれるのか、本当に楽しみです。

―― エキシビションに参加されると伺いました。

ナム はい。2019-2020シーズンのフリー「ビートルズ」を滑ります。でも後半だけです。もう全部滑るのは息がもたないんだ。(笑) またこのプログラムを滑れてうれしいし、楽しみです。

―― 現在の活動についても教えてください。

ナム いまはホッケー選手にスケーティングを教えるコーチをしています。ホッケー選手が“スケーター”として成長する手伝いをするという感じかな。同じスケートでもまったく別の世界です。でも、ぼくの生活はいまこの仕事で充実しているし、ぼく自身も集中して取り組んでいます。フィギュアスケートの世界でも、必要とあらばどこの会場へでも行きますよ。というのも、ぼくはいまホッケーの世界に身を置いていて、そこでの経験に熱中もしている。だから、いまはほんの少し距離が必要だと感じているところなんです。いまの仕事は去年、引退を発表してから始めました。

―― 今季は、キーガン・メッシング選手の競技人生最後のシーズンです。どんな思いでご覧になっていますか。

ナム 楽しんで見ていますよ。今シーズン、彼のここまでの道のりがとてもいいものになっていて、ぼくもうれしいです。四大陸選手権なんて素晴らしかったよね! 夢みたいな大会だったと思う。ぼくも思わず電話しちゃったよ。(笑) そのときは子どもと、家族との時間を過ごしていました。彼も残りのシーズンをどう締めくくれるのか、すごくワクワクしながら家族との時間を大事にしていた。ご存じだとは思いますが、ぼくは彼が大好きだからね。親友のラストシーズンを楽しみながら応援しています!

2022年スケートカナダにて。ホストと選手、立場は違えどともに地元開催のグランプリを盛り上げた ©World Figure Skating/Shinshokan

(2023年3月5日、世界ジュニア選手権最終日に取材)

なお、世界国別対抗戦の会場で先行販売されている「ワールド・フィギュアスケート」98号(4月21日頃〜書店発売)では、キーガン・メッシング選手のロングインタビューを掲載しています。そのなかで、親友ナムへのメッセージも話してくれたキーガン。こちらもあわせて是非ご覧ください。

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