2025年2月6日
生きることの意味を問う意欲あふれるアイスストーリーを発表

羽生結弦ICE STORY 3rd「Echoes of Life」TOUR、さいたまで開幕

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「Echoes of Life」――この世の中だからこそ、「生きること」を問う

―― 公演初日を無事終えられて、率直ないまの気持ちを教えてください。

羽生 とうとう開幕したなっていう感じがいちばん強いです。本当にたくさん緊張しましたし。もちろん、すごく時間をかけて、毎日毎日トレーニングも練習も積んできましたけれども、やはりその本番になってみて、皆さんの前で滑ってみないとわからない。成功なのか失敗なのか? みたいなところもあったので、正直とうとう始まったなっていう気持ちと、まずは初日怪我なく、ストーリーとして完結できてよかったなという気持ちでいます。

―― 今回のICE STORY 3rdは、「生きる」ということをひとつテーマに掲げて制作されたと思いますが、改めてそこに込めた思いや願いを教えてください。

羽生 もともと自分が、“生命倫理”っていうものを、小さい頃からいろいろ考えたり、または大学で履修したりしていく中で、「生きる」ということの哲学について、すごい興味を持っていました。で、そこから、ずっと自分の中でぐるぐるとしていた思考であったりとか、理論であったりとか、そういったものを、また勉強し直して。で、皆さんの中にも、この世の中だからこそ、「生きる」ということについて、皆さんなりの答えが出せるような、哲学ができるような公演にしたいと思って、『Echoes of Life』を綴りました。

―― 改めてになりますが、お誕生日おめでとうございます。

羽生 ありがとうございます。(笑)

―― たくさんのファンの皆さんに、「ハッピーバースデートゥーユー」と、バナーも本当にたくさんありましたが、ああいう光景の中で迎えられた30歳はいかがでしたか。

羽生 30歳になるんだな……っていう気持ちと(笑)、なんか今、30歳って言われて、あ、30歳かって思ったんですけど。でも、自分が本当に幼い頃からずっと思っていた30代っていうものと、今現在自分が感じている、この体の感覚や精神状態も含めると、全然なんか想像と違ってたなって思いますし、まだまだやれるなっていう気持ちでいます。『エコーズ』の中でも、「未来って何?」とか「過去って何?」みたいなことがありますけど、本当に、未来は自分が想像してるよりも、もっともっと良くもなるし、なんか、今ということの中で最善を尽くしていくことで、自分の中では「30、おっさんじゃん」って思っていた頃とは違った30代を迎えることができたなって、なんとなく思っています。

―― 改めて30歳の抱負をお願いします。

羽生 自分の中では、フィギュアスケート年齢としては劣化していくんだろうなっていう漠然としたイメージがあったんですけど、例えば野球とかサッカーとかに置き換えて考えてみたら、これからやっと経験とか、自分の感覚であったり、技術だったりが脂が乗ってくる時期だと思うので、本当に自分自身の未来に、それこそ希望を持って、で、絶対にチャンスをつかむんだっていう気持ちを常に持ちながら、練習もトレーニングも本番も臨みたいなと思います。

哲学が音として体に入ってくる

―― 文字が音になるという発想が面白かったのですが、その辺はどういう風な思いが?

羽生 もともと自分は光景が……例えば色が音になったりとか、感情になったりとか……。簡単に言うと、例えば赤という色に対して、情熱と思う方もいらっしゃったら、それが恐怖と捉える方もいらっしゃる。そこは人それぞれの解釈なんだけれども、そういうことを、ぼくは音として、わりと小さい頃から聞こえてきたタイプだったんですね。別に絶対音感があるとかではなくて、なんとなくメロディ的な感覚で聞こえてくるような感じがしていて。で、そういった自分の経験だったりとか、またフィクションとして書く中で、この子(ノヴァ)にどういう能力を持たせようかなと考えた時に、自分がトレーニングとしてやっている言葉の抑揚であったりとか、意味であったりとか、そういったものを表現するということを、物語の中に入れ込んで、それで全体を、哲学が音として体に入ってくる、その哲学が音楽になってプログラムが出来上がるみたいなことを、なんかいろいろ発想を飛ばして書いていった物語です。

―― 今日の物語の中には思わず書き留めたくなるような言葉がたくさんあったと思うんですけど、ひとつは選べないと思うんですけど、ひとつ何か選んで、思いを語っていただきたいなと思うのですが。

羽生 本当にいろんな哲学書を、その生命に対してだったり、また自分が大学で履修していた教授の本であったり、そういったものを読み直して、いろいろ綴っていったんですけど、そうですね……。「運命」というものが、偶然の連なりだということを、哲学書をいろいろ見ながら学んでいきました。なんか本当にすごくすごく脆くて、なんでこんな偶然が繋がっていったんだろうっていうような運命が、人それぞれきっとあるんだろうなって思って。それが、皆さんの中でいろいろ振り返った時だったり、また、現在進行形でその運命を感じているような時に、こんなに滅多に出会えないような、こんな偶然の出来事に出会えたんだっていう喜びであったり、奇跡みたいなことをぜひ感じてもらいたいなと思って綴った文章のひとつです。

―― 今回、新作衣装もたくさんあったと思うんですけど、このICE STORYシリーズにとっての衣装をどのように思ってらっしゃるかというのと、今回思い入れが深い衣装は。

羽生 今回の中でいちばん思い入れの深いのは、やっぱりノヴァの衣装ですかね。今まで、映像の中と、実際に演技する衣装のリンクということをしたことがなかったので、わりと本当にファッションに使えるような服を、氷上で着るということは結構難しかったは難しかったんですけど、でもやっぱりノヴァという主人公の衣装にはかなり思い入れが強いものがあります。また今回、フィギュアをずっと専門にしてくださっている方も含めて、新たにフィギュア(の衣装)を作ってこられなかった方も参加してくださって。ほんといろいろ、もう何着も何着もアレンジを繰り返して作り上げた衣装たちもたくさんあるので、今までとは、もちろん『RE_PRAY』、『GIFT』『プロローグ』とはまた違った毛色のアイスストーリーになっていますし、そういった衣装も含めて、フィギュアっぽくないというか、『エコーズ』じゃないと見れない衣装の布感であったりとか、そういったものもぜひ感じてもらいたいなと思ってます。

―― 映画のような映像を活用されていると思うんですけど。撮影に要した時間と、もともとスクリーン上の演技やお芝居に挑戦したかったのかどうかについて。

羽生 なるほど。まず後ろの方の質問からなんですけど、1回ぼく、映画に出演させていただいたことがあって。で、お芝居というものをさせていただいたんですけど、本当に「あ、向いてないな」って思ったんですね。だから映画に出たいとか、そういう気持ちは全然なくて、ただそのノヴァという主人公に対して演じるということに関しては、何も違和感がなかったというか。やっぱり自分が綴った物語であって、自分が完全に入り込める主人公を描いているので、そこに関しては、やっぱ自分が演じないといけないなっていう感覚ではいました。撮影に要した時間は丸2日と……あ、でも3日間ぐらいかけてですかね。丸2日間ずっとやって、で、半日ぐらいやって、もう1回半日みたい撮ってみたいなことと、プラス、ナレーション録りをしなきゃいけないので、ナレーション録りでもまた2日かけて録っているので、大変でした。

―― 音楽について伺いたいんですけれども、クラシックや民族音楽、現在の音楽を使われていらっしゃいますが、それぞれについて、選曲のこだわり、表現のこだわりを教えていただけますか。

羽生 なんか『RE_PRAY』が結構ゲーム寄りに作っていったので、新プロを作りつつも、わりとクラシカルなものを結構やりたいなっていう気持ちがあったのと、今回のテーマ的にも哲学ということをテーマにしていたので、ピアノの旋律であったり、また気持ちが凛とするような曲たちをわりと多めに選曲はしています。その中で、自分がストーリーを描く中で、ここは戦いたいところだなとか、ここは芯を持つべきところだなとか、ここは言葉をそのまま使いたいところだなとか、そういったことをいろいろ考えた中で、選曲をこだわっていったという感じですかね。今回とにかくいちばん悩んだのは、5番目の曲のピアノのクラシックの連続のところからの「バラ1(バラード第1番)」というのが、今までやったことのない、その1回もはけないで、30秒間ずつぐらいで、ずっとプログラムを演じ続けるみたいなことをやってるんですけど、あそこは清塚信也さんと一緒に、クラシックのことも勉強し、どういう意味を込めて弾きながら、またぼくも、ジェフリー・バトルさんに振付を頼んでるんですけど、ジェフともいろいろ「こんなイメージで滑りたい」ということを本当に綿密に計算しながら作った、10何分間のプログラムですね。

(運営 時間になりましたので取材終了になります)

―― ありがとうございました。また違う「DANNY BOY」が見られました。

羽生 戦争のシーンとかもあるので、すごくダニーが映えたなと思います。本当にありがとうございました。

▶イベント開催情報
Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd「Echoes of Life」TOUR
12月7、9、11日/さいたまスーパーアリーナ 2025年1月3、5日/広島グリーンアリーナ 2025年2月7、9日/LaLa arena Tokyo bay
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