2024年4月22日
NHK杯EX 8Kパブリックビューイングで町田樹さんらが登壇し大いに盛り上げた

NHK杯パブリックビューイングに町田樹さんら登場

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新たな鑑賞スタイル

スケーターそれぞれの演技について、町田さん、石井さんが演技後にコメントした内容も示唆に富むものだった。

たとえば、デニス・バシリエフス選手について「最初のほうはコンテンポラリーダンスの様式が採り入れられていますね。デニス選手のコーチ、ステファン・ランビエルさんがコンテンポラリーのコーチを招き入れて、いろいろコラボレーションをしている。もしかしたらそういうプロジェクトとの関係があるのかもしれません。それにしてもランビエルコーチの身体様式がしみこんでいて、ときどきランビエルかなと思うくらい」、三原舞依選手について「同じ技を繰り返して見せていくのは、バレエでも『白鳥の湖』で32回転グランフェッテを見せると途中から非常に盛り上がる。それと同じで、三原選手が2トウ+2トウ+2トウ+2トウ+2トウ……と連続ジャンプをやっていくと、すごく盛り上がりますよね。彼女のもつ技術を生かして、最大限盛り上がるようにしているわけです」などと紹介。

「フィギュアスケートは、演技を見たあとに曲の歌詞の意味などを調べると、こういうことを表現しているんだとわかったりします。そのうえでもう1回演技を見ると、新しい発見がありますよ」と話すなど、演技の楽しみ方についてもサジェストし、「観るポイント」を広げるような視点を紹介した。

また石井さんは、長い観戦経験をもとに選手についての豆知識を紹介するなど、“ファン代表”の視点から的確に、かつ親しみやすくパブリックビューイングを盛り上げた。2人とも熱くなった演技は、たとえばフィアー&ギブソン。石井さんが「楽しそうに滑るんですよね!」と話すと、町田さんが「ついにブレークしましたね。彼らは『ライオンキング』のような野性味のあるダンサブルなジャンルか、LADY GAGAやマドンナのような歌姫の楽曲か、その2つのジャンルが得意ですね。スケーターごとに十八番のジャンルがある」と紹介。鍵山選手の演技では、石井さんが「最初のジャンプは助走がまったくなかったですね」と水を向けると、町田さんが「ステップからジャンプを跳んだほうが得点は高いのですが、こういう跳び方がまさに理想的ですよね」と応え、「怪我でいまだコンディションが100%ではないと思うので、これ以上怪我をしないでイタリア(ミラノオリンピック)まで行くのが大事だと思います」とエールを送った。

左から司会の上田早苗アナウンサー、町田樹さん、石井てる美さん ©World Figure Skating/Shinshokan

興味深いQ&A

エキシビション後には、石井さんが質問を投げかける形でトークを展開。お蔵出しの興味深い内容となった。

石井さん エキシビションの衣装は、たとえ出演が期待薄でも試合にもっていきますか?

町田さん もっていきますね。荷物のパッキングスキルから勝負が始まっているんです。スケート靴と衣装3着、ほかにウェアや食事をもっていくこともありますし、いかに効率よく1つのスーツケースに入れるか。ときどき衣装を忘れることもあって、私も2013年のアメリカ大会の「白夜行」のときに、衣装はもっていたんですが小道具の赤い手袋を忘れて、コーチの口紅をお借りして赤く塗って、「これでオッケー!」とまかなったときもありました。全部忘れて現地でファストファッションなどでそろえる選手もいますよ。

石井さん エキシビションならではの演技も?

町田さん ジャンプを跳んで得点を取るのも大事ですが、演技構成点(PCS)は徐々に醸成されていくものなんです。選手の演技の素晴らしさを1回ごとの試合で見せていけば、信頼が上がっていく。その選手のブランドを高めるうえで、エキシビションも大事な勝負の舞台です。1回ごとを自分のものにしていけば、勝負以外にも魅せられる選手は注目され、結果としてPCSも上がっていきます。

石井さん 今季はアダム(・シャオイムファ)選手の空中側転みたいな技もありますよね。

町田さん ほかにもイリア・マリニン選手がラズベリーツイストをやっていますよね。最近はケヴィン・エイモズ選手のJZスライドのほかにも、ニースライド系の振付もありますが、私が現役のころは氷上でスライディングすると転倒扱いだったんです。それがルール改正で、スライドもできるようになった。ここ10年、スライド系や浮遊系の新しいムーヴメントの開発が見られますね。ルール改正は基本的に毎オリンピックの4年ごとですが、適応しきれなくて引退を考える選手もいます。

石井さん 町田さんご自身が現役のとき、オリンピックシーズンに4回転を跳べるようになったのはコンパルソリーの練習をするようになったからだそうですが。

町田さん いまは無きコンパルソリーはいかに氷上に正確な図形を描くかという種目なのですが、ミリ単位で図形を描くコンパルソリーをやると、自分のエッジのどこに乗って、体重がどうで、まっすぐ滑るために足首や膝、股関節がどういう位置関係なら正確なエッジの軌道に乗れるのかを考えないといけない。同じ軌道を3回描くのですが、手をつかってボールペンでまったく同じ軌道を描くのでも難しいですよね。それを足でやるのはすごく難しい。自分の体を自己分析しないとできません。再現性を高めるという意味では、ジャンプも同じなんです。私も解剖学の医学書を読んで、筋肉の付き方や骨格を学びました。

石井さん 頭脳で解析していたタイプでしたか?

町田さん スケーターによって違って、天才タイプは本能で行ってできちゃうけど、私は頭で理解しないとできない。逆に自分の体を理解してからは、調子の波の上下がゆるやかになりました。

石井さん 大学ではスケートも教えていらっしゃるんですか?

町田さん フィギュアスケートは一切教えていなくて、スポーツ社会学やメディア論といった社会学系の学問ですとか、それからダンスの実技授業をやっています。将来体育教員になりたい人は、ダンスが必修なので、そういった学生に教えています。もう学校の先生になっている卒業生もいますよ。8割がたは私の来歴を知りませんが。

司会 町田さんはフィギュアスケートのいろんなプロジェクトを立ち上げていますね。

町田さん 選手はつねに新しい時代を切り拓いていますが、新しいイベントや仕掛けにはまだ開拓の余地があります。私はほかの芸術分野のマネジメントを研究対象にしているので、たとえばバレエが作品を踊り継ぐように傑作プログラムを滑り継いでいけないか、といったことを考えているんです。素晴らしいプログラムは時代を超えるということを証明したくて、<継承プロジェクト>に取り組んでいます。価値観を変えていくことを裏方でやっているわけです。


今回、8K映像という最新技術の粋を結集して実現したパブリックビューイング。4台の4Kプロジェクターを使用し、通常のハイビジョン映像の16倍もの高精細の映像で届けた。町田さんも「選手のエッジの軌跡さえも見えますね」と指摘した通り、巨大スクリーンとは思えないほど細部までくっきりと映し出された選手たちのパフォーマンス。フィギュアスケートの新たな観戦スタイルとして、今後も広がっていくことを期待したい。

NHK杯の模様は、12月10日(日)午後1時50分から、NHK総合テレビで総集編の放送を予定している。

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