ステファン・ランビエルが自身のスクールを構えるスイス・シャンペリーで、2024年8月にステファンが演出を手がけるアイスショーが開催されました。題して「L’Apprenti Sorcier 魔法使いの弟子」。宇野昌磨、宮原知子、本田真凜も日本から駆けつけ、彼の生徒たちであるデニス・ヴァシリエフスや島田高志郎らと華やかに競演しました。その国内独占放送が2025年2月1日(土)、CSスポーツチャンネルのGAORAで予定されています。放送に先立ち、ステファンのセンスと愛情、彼の弟子たちから師への想いに満ちた、仲間たちが作り出すアーティスティックなアイスショーをご紹介します。
センスと愛情に満ちたアイスショー「魔法使いの弟子」
「魔法使いの弟子」といえば、ディズニー映画「ファンタジア」で用いられた印象的な音楽がまず思い浮かぶ。ちょっと不思議な、けれども心が浮き立つようなリズミカルなメロディ。「シャンペリー音楽祭」の一環としてステファン・ランビエルが手がけたアイスショー「L’Apprenti Sorcier 魔法使いの弟子」は、このお馴染みの音楽から幕を開ける。リンク際にはグランドピアノが置かれ、ステファンの長年の友人でもある世界的ピアニストのベアトリス・ベリュが演奏を担当。このアイスショーは、全編ピアノの生演奏で彩られるショーなのだ。
魔法のほうきを携えた見習いの少年が登場する、曲の世界観そのままのオープニング。トップスケーターからキッズまでが氷上にさまざまなトレースを描いていく。そこから、ゲストのスケーターたちによるパフォーマンスへ。それぞれに魅力を振りまいた本田真凜、島田高志郎ら、次々に登場するスケーターたちは、みなどこか魔法をイメージさせる、不思議で印象的な音楽を選んで演技を披露する。この采配がステファンの真骨頂。スケートの美しさと、物語の楽しさを結びつけて、魔法使いが指先のひと振りで魔法をかけるように、エレガントな空間を作り出していく。アイディアを練り、長い時間をかけて準備したと語ることも納得の仕上がりになっている。
なかでも見ごたえがあるのは、魔法の力で100年の眠りにつく姫に宮原知子、姫を目覚めさせる王子にステファンが扮する「眠れる森の美女」。物語のエッセンスを巧みに織り込みながら、スケーティングの純粋さで引き込む2人のデュエットは必見の素晴らしさだ。
さらに、日本から恩師の招きでシャンペリーの氷に戻ってきた宇野昌磨が極めつけのパフォーマンスを見せてくれる。現役引退したのち、ステファンとの初共演となったのがこのアイスショー。2人の親しみにあふれた姿からは、ステファンの指導を受けて世界チャンピオンへとステップアップしていった道のりが、喜びに満ちたものだったことが改めて伝わってくる。
このショーで宇野が披露したのは、ステファンからの提案で選曲した「魔法といえば”これ”!」という1曲。ピアノのライブ演奏と心地よく息を合わせたスケートのひと蹴り、腕のひと振りで、どんどんプログラムの世界に引き込んでいく。その姿は、恩師のアーティスティックなエッセンスを感じさせ、「魔法使いの弟子もまた――」と思わせてくれる。あまりにも彼によく似合う音楽は8月にも話題になり、ご存知の方も多いはずだが、もしご存知でなければググったりはせず、ピアノの音が流れ出すと同時に「なるほど!」と唸ってしまう選曲とパフォーマンスをぜひ放送で確認していただきたい。
ステファンの至高のセンスとスケートへの愛、そして弟子たちへの深い愛情がすみずみにまで行き渡ったアイスショーは、唯一無二の魅力を放っている。「魔法」というコンセプトもさることながら、たとえば全員でスピンをするシーンがこんなにも魅力的なショーはほかにないだろう。弟子たちとの固い絆は、師と”3兄弟”弟子たちが織りなすアンコール・プログラムからも伝わってくる。見て楽しむエンターテインメントとしてはもちろん、温かな灯りを胸にともしてくれる特別なひとときになるはずだ。