日々の生活のなかで変えていく
―― もうひとつ、メンタルトレーニングが実を結んできたというお話もありました。住吉選手のメンタルトレーニングはどんな方法なんですか。
「考えすぎてしまうのが自分の悪いところで、普段から焦燥感を感じやすいタイプなんです。どんなことに対しても、わりと焦る、急ぐ、考えすぎる、悩むというところがありました。それをなるべくなくしていく。えっ、そんなところを? と思われるようなことだと思うのですが、普段から予定を詰めすぎず、時間に余裕をもって行動することや、お昼にコンビニで何か買うときにも悩みすぎずにこれと思ったものにぱっと決めようとか、2つの選択肢があるとき、“この点に関してはこっちがいいけど、でもあっちのほうが後々を考えるといいかもしれない……”みたいに考えちゃうところを、“いやもうこっちに惹かれるからこっち“とファーストインプレッションでぱっと決めるようにするとか。自分のなかでごちゃごちゃ考えてしまう複雑な脳の使い方をしない、余裕をもつという練習を、日々のなかでやっています」
―― それはひと言でメンタルトレーニングというよりも、性格を変えていくという方向性ですよね。
「考え方のクセを直すという感じです。“そういう性格が試合に出ているんだよ”と専門家の方に言われて、やっぱり普段の生活から直すべきなんじゃないかということに、かなり時間がかかって行き着きました。座禅は早くからやっていましたし、焦りすぎちゃだめだよということは言われていたのですが、自分はずっとそのスケジュールで動いていたから、予定の詰め込みすぎだという自覚がなくて。だけど、気がついたらいつも走っているな、気づいたら次のスケジュールが大丈夫かなとせかせかしていたなと、自分で気づくまでに時間がかかりました。やはり昨シーズンが終わるころに、そのことに気づけた気がします」
―― それによって、日々のなかで新しい発見はありますか?
「たくさんあります。ながら行動をしないようにしているので、ながらスマホはもちろん、食事中や移動中にも、ひとつのことに集中するように心がける。そうすると、たとえば以前は乗換案内アプリを見ながら早歩きしていたところを、スマホをもたずに歩くと心も落ち着いているし、新しい建物や咲いているお花なんかにも気がついて、丁寧な暮らしになる気がします。スケートと関係ないじゃんというようなことなんですけれど、試合の前の落ち着きが今季はなんとなく違うなということは感じています」
―― わずかなことで変わってしまうスポーツですものね。
「本当に、そこが自分の弱みだったんだという。まさか自分の生活が、スケートの試合でのメンタルに結びついているとはまったく思っていなかったので、そこが自分にとっても新しい発見でした」