2024-2025シーズン、グランプリシリーズ第3戦フランス・グランプリで3位となった住吉りをん選手。4回転トウループを日本女子として初めて公式戦で成功させた高い技術とともに、たおやかでありつつも意志のある表現で魅了するスケーターです。さまざまな試合経験を積み重ねてきた住吉選手が、今季目覚めた「新しい自分」について語ってくれました。
自分のできることを正直に見られるようになった
―― 今シーズンのグランプリシリーズでは、フランス大会で200点超えを果たしての3位表彰台となりました。振り返ってみて、どんな試合でしたか。
「緊張はしていたのですが、あれだけすごいメンバーだったので、どんな結果になるかはわからないけれど、楽しんで自分ができることを精いっぱいやろうという気持ちに完全にシフトすることができました。おかげで淡々と、やるべきことを1つひとつ丁寧にできたと思いますし、“200点”と“3位”がついてきたというのを感じられた試合でした。普段だと、どうしても点数や順位のことが頭の片隅にあったんです。それをしまいこんでがんばるみたいな感じでしたが、今回は“気になっていないな”と感じられた。自分ができること以上を求めて考えすぎることがなくなったので、よくなったと思います」
―― そういう気持ちで試合に臨めたというのは、ご自身としても変化ですか?
「取り組んできたメンタルトレーニングがようやく効いてきた、成長してきたと感じられました。フィギュアスケートなので綺麗に見せるべき競技ではあるのですが、いままでは、自分をよく見せようとしすぎるクセが抜けなくて。“こうしなきゃ、ああしなきゃ”と考えすぎることから抜け出せなかったのですが、今季は“自分のできることはこれだ”ということを正直に見られるようになりました。全然違うなと思っています」
―― 200点という数字はひとつの道標だと思いますが、どんなふうに受け止めていますか。
「200点という点数を見たときに、やっとだといううれしさ半分、安心半分。トップで戦える自信がついたところはあるんですが、直後のNHK杯であれだけの点数を見てしまうと、喜んでいる場合ではないと気が引き締まります」
―― 4回転トウへの挑戦を行ったうえで200点を越えたことにも価値があるのではないかと思うのですが、本番で降りる・降りないとは別に、プログラムに入れていること自体がとても大変なジャンプなのではないですか?
「そうですね、いちばん負担になるのが、6分間練習で時間配分がかなり変わることです。4回転のために最後に1分半は残しておきたいので、そうなるとほかのジャンプを確認する時間が短くなります。ほかのジャンプに不安感を残したまま演技に臨んでしまうことがわりとありました。今回は、フランスに行く前から、ほかのジャンプに対する自分の脳内のイメージと、現実のジャンプを一致させる作業を繰り返しやりました。そのおかげで、“6分間でこういうジャンプになったから大丈夫”と体も脳も覚えてくれていて、安心して4回転を入れられた。4回転自体にはあまり自信がなかったのが出てしまったのですが、ぱっと気持ちを切り替えて次が崩れなかったのは、今シーズンずっとがんばってきたのがよかったのかなと思います」