ずっと見続けていたい選手を目指して
―― フィギュアスケートにおいて、難しいことは何だと思われますか?
「これはフィギュアスケートに限ったことではないんですけど、継続することじゃないですか。それがいちばん難しい」
―― 続けるのが難しい状況になったとき、どう乗り越えましたか。
「目標をなかなか達成できないときも、もちろんありました。そういう時は、休むことが大事なのかなと思います。離れて、気持ちをリセットする。そうすると、やっぱりまた滑りたくなってくるので、その時が再開の合図かなと思います」
―― フィギュアスケートがやっぱり大好きだなと思うのは、どんなときですか。
「何人かいる選手のなかでこの選手はずっと見続けたいなって思うことってあるじゃないですか。ぼくは大きな試合に行ったときも、あえて見ないようにしているんですけど、でもやっぱりその中にはすごく素敵な選手がいたりする。この選手をずっと見続けたいなと思う選手を見ていると、スケート好きなんだなという気持ちになります」
―― 優真選手の最大の強みは何だと思いますか。
「彼のスケートには彼の人間性が全て現れているように思います。それを知って振付をしてくれてるローリー先生もすごいと思う。彼の人間性をよく知っていて曲を選んで、彼に合った振付をし、彼の人間性をより引き出してくれる。彼がそれを滑ることによって、さらにお客さんに伝えていくことができるということが、すごく彼にとってはプラスになっていると思います。だから先ほども言ったようにローリー先生と出会って、彼のスケートが一段と変わっていって、ローリー先生も彼を理解することで彼への振付の仕方もたぶん変わってきているんだと思います。彼もそれを受け止めることによって、さらに意識が変わってきている。だからスケーターとしての変化は止まらないんじゃないですか。止めたくないというか、見続けていたいなと思う選手になりつつあるのではないですかね」
―― ご自身と優真選手が似ていると思う点と違う点は?
「何かひとつのことを突き詰めていくことに関してはたぶん似ています。ぼくももちろん好きなことに関しては几帳面ですけど、彼は私生活でもけっこう几帳面なところがある。ぼくはおおざっぱなところが多いので、ぼくたちは違うところのほうが多いと思います。(笑)」
―― この1年で心が動いたパフォーマンスや出来事は何でしょうか。
「優真がバレーボール好きなのですが、オリンピック出場が決まった試合を一緒にテレビで見ながら応援したときは、ちょっと感動しましたね。それ以外で言えば、本当に親ばかになると思うんですけど、今年(2024年)の世界選手権で優真が活躍できたことです。もちろん出場は狙ってはいましたけど、当然メダルを狙う位置に行けるとは思っていなかったんです。周りの方から期待していただけるようにまでなったんだということが、ひとつ大きな感動で、それが現実になったのはとても嬉しかったです」
優真選手が理想のスケートを体現する
―― 以前、プログラムのなかでのジャンプの見せ方を大事にしたいと話されていましたが。
「そこはぼくのこだわりなんです。美しいジャンプは、ジャンプの入りと後のスピードがまったく変わらないで、いつ跳んだの? という雰囲気のジャンプを理想としています。1つひとつのジャンプで流れが止まってしまうと、当然プログラムの流れも止まってしまうわけです。もし物語があるのであれば物語が止まってしまう。ストーリーを傷つけないようにするために、ジャンプの流れっていうのは大事にしていきたいなとは思っています」
―― 正和さんの理想とするスケートのいちばんの体現者が優真選手ですね。
「いま優真が跳んでいるジャンプは、もちろんぼくの理想でもありますし、 理想が体現された形だと思っていただいていいと思います」
―― ところで、新たに福岡を拠点とした「育成プロジェクト」に参画されるそうですね。アスリート支援のプロジェクトと伺っています。
「福岡からオリンピアンや世界にはばたく選手を輩出していきたいという趣旨のプロジェクトだと伺い、それならば協力させていただきますということになりました。具体的な内容というのはこれから進めていきますが、ぼくの名前を挙げていただいたことを光栄に思っています。これからは優真以外にも技術指導をしていきたいと思っています。メインの先生はメインの先生で教えていただいて全然かまいませんので、遠慮なく言っていただければ。技術を教えることが好きなので、いろいろな選手を指導していきたいなと思います」
―― ありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。
提供/オリエンタルバイオ