2024年2月25日
JGPファイナルにコーチとして初参戦する”遅咲き”スケーターのセカンドキャリア

INTERVIEW ロマン・ポンサール「ぼくの人生にラファエルとネイサンがいてくれて幸せ」

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いよいよ開幕するグランプリファイナル。シリーズを勝ち抜いたシニアとジュニアのトップ6が集まるこの大会に、コーチとしてキャリアを通じて初参加するのが、元フランス代表のロマン・ポンサールさんです。ジュニアグランプリ大阪大会で優勝したジュニア男子フランス代表のフランソワ・ピト選手とともに北京へやってきます。選手時代はラファエル・アルトゥニアンコーチのもとで、ダイナミックなジャンパーとして世界選手権やヨーロッパ選手権にも出場し、長くフランス代表として活躍。2021年に競技を退いてまもなくコーチに転身しました。

そんなポンサールさんに、ジュニアグランプリ大阪大会で、久しぶりにお話を聞くことができました。教え子の活躍や、それを支えてくれた恩師ラファエル・アルトゥニアンコーチと親友ネイサン・チェンさんの存在。“遅咲き”と呼ばれた彼だからこそ感じる、教えることへの思いなど心に沁みるお話ばかり。ぜひ、ポンサールさんの新たな旅路をたどりながら、インタビューをお楽しみください!

引退直後に鳴ったコーチ依頼の電話

―― まずはフランソワ選手のジュニアグランプリ大阪大会での優勝おめでとうございます。


ポンサール ありがとうございます。何よりも彼がプレッシャーを乗り越えられたことがうれしいです。昨季からショートでは3位に入れていたのですが、フリーではどうしてもメダルの重圧に苦しんでいました。心理学の専門家を含めたチームを作ったり、プログラムの練習を増やしたりして安定感につなげられていたので、今季は準備万端でしたし、もうプレッシャーのなかでもうまくやれると信じていました。


―― 今回のショートのあとは、どんなアドバイスを?


ポンサール ショートのあと、彼は3回転+3回転が3回転+2回転になるミスをしてしまってがっかりしていました。練習ではしたことがないようなミスだったからね。ファイナルに行けるのか、もしかしたら表彰台がまた遠ざかってしまうんじゃないかとすごく心配していました。だから、彼には「ショートは結果が出た以上もうどうしようもないことで、きみがどうこうするべきことじゃない。次にきみにできるのは、明日のフリーに集中することだろう」と伝えました。自分で自分にプレッシャーをかけすぎないで、ただ氷へ出て行って練習の成果を出せばいいって。それを今日、彼が見せてくれたのでとても幸せな気持ちです。


―― 彼はとてもいいジャンパーですね。選手としてどんなところが素晴らしいと感じていますか。


ポンサール 第一にジャンプのクオリティです。回転速度も速く、自然に質の高いジャンプを跳ぶことができる優れたジャンパーだと思います。いま取り組んでいるジャンプもどんどんよくなってきているし、いまはシニアへの移行期間ということもあり、自分が観客やジャッジに何をもたらすことができるのかという感情表現の部分にも力を入れています。それもあって、彼が自分自身を表現できるように、2つのプログラムはまったく別の個性を見せられるものを選びました。振付師でもあるアンジェリーク・アバチキナ(元フランス代表アイスダンサー)と一緒にがんばっていますよ。いまは試合のなかで、スピンと踊り、それからジャンプも全部が1つのパッケージとして見せられるかを見ている段階です。それができたら、シニアで戦うための4回転に取り組んでいかないとね。


―― ご自身のことも聞かせてください。コーチとしてはいつから教えているんですか。


ポンサール 1年半くらい前かな? フランソワから2022年の世界ジュニア選手権のあとに電話があって、ジャンプに苦戦しているから助けてほしいと言われました。ただ、そのときはぼくも自分のキャリアを終えたばかりで、ラファエル・アルトゥニアンコーチと練習していたカリフォルニアから引き揚げてくるところだったので、フランスに戻ってから、ぼくがスクールを設立して指導できるのはいつになるかわからないよと伝えたんです。でも彼は、「問題ない。ぼくはついていきます」と言ってくれたので、ぼくも「OKだ」と。まずは1週間試しに一緒に練習してみて、それでも彼はやっぱりぼくのもとに残りたいと言ってくれたので、いよいよぼくも「わかった。ぼくもベストを尽くすよ」と伝えてコーチをすることになりました。


―― フランソワ選手が最初の生徒なんですね。


ポンサール ええ。ぼくにとってもプレッシャーはかなりのものでした。ぼく自身が選手生活を終えたばかりなのに、最初の生徒がいきなりジュニアグランプリに出ているような選手で、ぼくに教わりたいと言ってくれたんだ。でも、ラファエルがつねにぼくを導いてくれて、ネイサン(・チェン)もすごく助けてくれる。選手時代からそうですが、いつも彼らがそばにいてくれて本当にありがたく思っています。いまでも彼らに電話で相談したり、彼らのほうからぼくに助けを出してくれたりするし、そのアドバイスがまたいつも的確で。コーチを始めると、プレッシャーを感じたり、決断に迷ったりすることもありますが、ラファエルとネイサンのような人のサポートがあれば、いつでも安心できます。ぼくの人生にそういう人たちがいてくれて本当に幸せに思います。

ネイサン・ブックを見ながら挑んだフリー

―― 今回がコーチとしての初勝利ですか?


ポンサール その通りです。


―― 改めて、おめでとうございます! いまは何人くらいの生徒を教えているんですか。


ポンサール いまはスイスのフリブール(フライブルク)でフルタイムコーチとして働いていて、半分はクラブのコーチとして、もう半分はプライベートレッスンです。いまはアンジェリーク・アバチキナと一緒に9人の選手と、クラブの生徒たちを教えています。子どもたちはみんな一生懸命で、いい子たちですよ。


―― 拠点はスイスなんですね。


ポンサール そうです。母の体調が少しよくないこともあって、家族の近くにいたかったので、カリフォルニアに残るのはやめてスイスまで戻ってきました。いまは母のいる地元まで4時間くらいで帰れます。フランスだと働けるリンクを見つけるのがすごく難しかったので、スイスで準備をしているときに誘ってもらえて、フランソワと一緒にいまのリンクへ移ってコーチを始めました。


―― どのくらいの生徒を教えているんですか。


ポンサール 11歳から13歳くらいの幼いスケーターたちを教えていて、フランソワがいちばん年上。でも、あんまり早くこの時間が過ぎ去ってほしくないなと思うんです。すでにフランソワをはじめジュニアグランプリに出るような選手が2、3人いますが、ぼく自身もコーチとしてできるだけじっくりと最善の学びを得ていきたいし、少しずつチームが大きくなっていったらいいなと思っています。


―― これからのコーチとしての目標、次の夢はどんなことでしょうか。


ポンサール 何よりもベストを尽くしたい。ぼく自身がカリフォルニアでラファエルから学んだことを伝えていきたいですね。カリフォルニアへ行って、ラファエルの指導を受け、ネイサンがオリンピックサイクルを過ごす姿を見て、ぼくの人生は変わりました。学びの日々でした。でもラファエルのもとに行ったとき、ぼくはすでに22歳。スケーターとしてはもうすでに年齢を重ねていたので、いまは若い世代のスケーターたちが、ぼく自身は若いころには出会えなかった知識を持って練習できるような機会をあげられたらと思っています。できる限りのスケーターをヨーロッパや四大陸など選手権大会に連れて行ってあげたいですね。


―― ネイサンさんは折々で子どもたちにスケートを教えていますが、選手を指導するコーチではないですよね。また違った視点からどんなアドバイスを?


ポンサール ぼくらがよく話しているのは、幼い子たちががんばり続けられるようにモチベーションを保つのは大変だよねってこと。子どもたちに練習をさせようとしても、さぼっちゃうときがあるんです。そういうときは、氷上での練習をゲーム形式にして遊びが練習になるように工夫したりするんですが、ネイサンはそういうアイディアをたくさんくれるんです。自分が子どもだったころにどんなことをしていたかをいろいろと教えてくれます。実際に取り入れてみると、子どもたちはどうやって遊ぶかを学んでいくうちに、それがちゃんと練習になっていて、一生懸命練習するようになっていたり。すごく楽しいですよ。それに心理的な面でも助けてくれます。ネイサンは本当に精神的に強いので、ぼくを通してフランソワのこともサポートしてくれています。たとえば、今日。フランソワは最終滑走でした。最終滑走で滑るときの心構えは、ぼくらがネイサンと取り組んでいたことの1つです。今回が初めての最終滑走だったので、ネイサンからもらった情報を書いた小さなノートを見ながら(笑)、彼が6分間練習から演技までにやっていたルーティンを実行してみました。フランソワはネイサンにすごく憧れているからね。彼の助言がフランソワにも自信を与えてくれて、その結果小さなピースを埋めることができ、今回ホールパッケージを揃えられたんだと思います。


―― 今大会には、同じくリンクメイトだったミハル・ブレジナさんもコーチとして参加していました。


ポンサール そうなんだよ! こうやってコーチとして試合に戻ってきて、友人に会えるなんてね。ミハルとは、赤ちゃん元気にしてる?って話をしていたんだ。彼はいまやパパだからね。みんなが進んでいく姿を見るのは楽しいし、ぼくらはそれぞれの人生を歩み出しているんだなと思いました。


―― みなさんの新しい旅が始まっているんですね。今後も楽しみにしています。ありがとうございました。


(2023年9月16日、ジュニアグランプリ大阪大会男子フリー後に取材)

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