2025年3月31日
日本のエースとして、4度目の世界選手権へ

INTERVIEW鍵山優真「まず試合自体を楽しんで、自分のやるべきことに集中したい」

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1人の人間としても成長したい

―― コーチのカロリーナ・コストナー先生に全日本選手権のときなどにお話を伺った際に、「鍵山選手は大人になった」とおっしゃっていましたが、ご自分で「大人になったなあ」と自覚するところはありますか。

「どうだろう? シニアに上がってから、試合の舞台でもそうですけれども、ありがたいことにスポンサーさんのお仕事も増えて、無意識のうちに大人にならなきゃなっていうふうに思っていたのかもしれないですし、やはりトップに立てば立つほど、いろんな責任やスケートファン以外からの注目も増えていくと思うので、自覚して行動しなければなと思っています」

―― 鍵山選手にとって、かっこいい大人って、どういう人ですか。

「かっこいい大人か……難しいな。『悪いことをしない』かな。(笑)わからないけど」

―― 社会人としての責任をすごく意識されていらっしゃるんだなと、いまお話を伺っていてもすごく思います。かっこいい大人にさらに近づいていらっしゃる感じがします。

「そうですね。アスリートとしても、しっかりしなきゃいけないけど、やっぱり人間としても同時に成長しなければいけないと思います。そういうところは、引退した後でも信頼につながっていくと思うので、しっかりと1人の人間として、もっと成長できるようにがんばりたいなと思っています」

すべては2026ミラノ・オリンピックのために

―― このあと、世界選手権の事前合宿で、ローリー・ニコル先生のところに向かわれると思うのですが、ここに集中して世界選手権で発揮したいと思っているのは、ずばりどこでしょうか。

「まずはしっかりと、ショート、フリーをそろえてがんばりたいなというふうにはもちろんつねに思っていて、事前にカナダでローリー先生に見てもらえるので、細かい表現力とか、カロリーナ先生ともスケーティングの部分だったり、全体的に世界選手権に向けて強化していきたいなと思っています」

―― 先日、淺井トレーナーにお話を伺ったとき、鍵山選手は、自分に必要なことを見極めて、しっかり集中して取り組むアスリートだと話していました。いつごろからそう考えるようになったのでしょうか。

「もともとではないんですけど、アスリートとしてすごく意識が変わったのは、22年に怪我をした時です。そのときは、まずなぜ自分が怪我をしたのかもまったくわからない状態だったんですけど、いろいろ調べていくうちに、自分にいま必要なものはこれだ! いま食べなきゃいけないものはこれだ! とわかるようになってきました。そのうちに自分のなかで、こういうトレーニングをしたほうがいいのかなと思ったり。そのうえで、わからないことがあったら、トレーナーさんに聞いたり、栄養士さんもいるので、何を食べたらいいか聞いたり、自分でするようになって。そこがすごく大きな変化の年でした」

―― 怪我をしたことで、その先に進むための知識を得たんですね。

「怪我をしたときは、ものすごく悲しかったんですけど、いまは焦るべきではないなと思い、その先のミラノ・オリンピックに向けて、いまはしっかりと休んで、またがんばらなきゃなっていうふうに思っていたので」

―― 自分に必要なことを意識するようになったということでしょうか。

「そうですね。どこか身体が痛くなったときも、いままでの経験を生かして対処できると思うし、たとえば、将来インストラクターになる、のかはわからないんですけれども、誰かに聞かれたときにそういう情報って、すごく役立つのではないかなと思います」

―― メンタルのトレーニングは何か取り組んでいますか。

「メンタルコーチはいないんですけれども、今シーズンはとくにメンタルの部分で試合がうまくいく、うまくいかないと大きく分かれることが多かったので、最近は本を読んでみたり、練習のなかでどういう気持ちでやったらうまくいくのかをいろいろ試行錯誤というか、自分自身を実験台にしながらやっています」

―― 鍵山選手は、もともとポジティブな考え方の持ち主で、試合で何かうまくいかない結果になったときも、そこから分析して前に進んでいけるアスリートに思えます。 

「そうですね。すべては26年のミラノ・オリンピックのために、いまこうやって悔しい思いをできているのは、すごくいい経験になると思うんです。来年同じ思いをしないためにも、本当にすべての経験を次に生かしていけるように、いろいろ反省したり、チームで話し合いながらやっています」

―― 4度目の世界選手権ですが、過去3回はすべて表彰台に上がっています。目指すところは。

「3回銀メダルだったので、もちろん金メダルを取りたいという思いはつねにあります。でも結果を1番に考えるのではなく、まずは自分のやらなくてはいけないことを100%やるのが最大の目標です。結果はあとからついてくるものだと思っているので、まず結果は重くは考え過ぎずに、自分のやりたいことをやっていければいいなと思います」

―― 応援しています。ボストンでの演技を楽しみしております。本日は、どうもありがとうございました。

提供/オリエンタルバイオ

プロフィール
鍵山優真(かぎやま・ゆうま) 2003年5月5日、横浜生まれ。オリエンタルバイオ/中京大学所属。5歳より父・鍵山正和のもとでスケートを始める。2022年北京オリンピック個人・団体銀メダル。2021年、2022年、2024年世界選手権2位。2024年四大陸選手権優勝。2022-2023シーズンは左足首の怪我に見舞われたが、2023-2024シーズンに完全復活。ソチ・オリンピック銅メダルのイタリアの至宝カロリーナ・コストナーがコーチ陣に加わり、スケーティングや表現面に磨きをかけている。今シーズンは、グランプリシリーズのNHK杯とフィンランド杯で優勝、グランプリファイナル2位。全日本選手権では初優勝を飾る。2025年1月のワールドユニバーシティゲームズ(イタリア・トリノ)で優勝、2月のアジア大会(中国・ハルビン)で銀メダル。3月には、世界選手権(アメリカ・ボストン)に出場する。
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