大会3日目の3月24日、アイスダンスのリズムダンスが行われ、1位マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ(アメリカ)、2位シャルレーヌ・ギナール&マルコ・ファッブリ(イタリア)、3位パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ(カナダ)のトップ3で折り返した。日本の村元哉中&高橋大輔は、満場の大歓声に後押しされてRD11位。競技後の記者会見で、トップ3チームは異口同音に日本の観客への感謝を述べた。
アイスダンス リズムダンス会見
―― まず最初に3カップルに、本日の結果を受けての感想をうかがいたいと思います。
チョック 今回はアリーナのなかで本当にすさまじいエネルギーを感じることができました。何千人もの観客に囲まれて、ファンのみなさんが私たちをサポートしてくれたおかげで、本当に息をのむような、魔法に満ちた空間の中で演技をすることができました。みなさまの前で演技をすることができたのは本当に光栄に思っておりますし、そのおかげで彼らからエネルギーをもらってプログラムを前に進めることができました。とても楽しかったです。
ファッブリ 私たちも、いまマディソンが言ったのとまったく同じ気持ちです。本当に今日は観客のみなさんが素晴らしくて、よい雰囲気のなかで楽にスケートを滑ることができました。2人ともとても一生懸命プログラムの練習をしてきましたので、練習のときに私たちが期待していたような世界選手権での演技ができたことを本当にうれしく思っています。
ポワリエ 私たちもやっぱり今日の観客がいかに素晴らしかったかっていうことを、ぜひ絶賛したいと思っています。こんな観客のまえで演技ができるっていうことはすごく楽しかったですし、加えて今日みたいにラテン・リズムっていうのがテーマになっていると、どれもプログラムがすごく楽しくって、またリンクにエネルギーをもたらすことができたと思っています。みなさんのまえでパフォーマンスができたことは、特に3か月競技から離れていた私たちにしてみれば、また大会に戻ってくることができたという喜びも相まって、本当によかったです。すべての瞬間を楽しむことができましたし、またたいへん幸せな気持ちになりました。
―― いま「日本のファンの雰囲気がよかった」と言ってましたが、具体的に印象に残ったワンシーンなどがあれば教えてください。
チョック 私がいま印象に残っている一瞬っていうのが、ちょうど私たちが止まっていて、これからコレオステップをやるっていうときで、私はジャッジのほうを向いていて、そこからくるっと後ろにいた観客のほうに顔を向けたんですけれども、その近くで見たお客さまが、まるで私たちのプログラムのなかにいるかのようにエキサイトメントを共にしてくれているっていうその様子は、一生忘れないと思います。
ファッブリ いまこちらで笑っていたのは、私がまさに言おうとしていた答えをマディソンが言ったので、もう言えることがなくなってしまったじゃないかっていうことで笑っていました。でも、本当に彼女の言う通りで、お客さまを間近で見ると、本当に彼らがすごく反応してくれたりとか、私たちの演技を応援してくれたり、サポートを示してくれたりっていうことが感じられるので、それはすごいことです。私たちもコレオステップをちょうど始める瞬間、私の目に入った2人の女性の姿っていうのは忘れることができません。
ギレス 私は2組のカップルとはちょっと違う答えになります。ポールも私も、特にこの瞬間っていうのをおぼえているものはないんですが、ただ演技が終わって、そしてお辞儀をするときにファンのみなさんの姿を見渡せたことはとてもよかったです。実は私たちのファンもけっこういて、我々の名前を、サインを出してくれているファンの方がいました。しばらくぶりに、もう何年も前から私たちのキャリアの間ずっと追いかけてくれているファンの方がいて、その方が私たちの名前のサインを出してくださっているのを見て、特別な思いを感じました。
―― (カナダチームに)グランプリファイナル以降、演技はしていませんけれども、この世界選手権に臨むにあたって不利だったと思いますか?
ポワリエ 決して不利だったとは思っていません。もちろん状況によっていろんなプラスやマイナスはあるとは思いますけれども、確かに大会から離れていたっていう事実はあるものの、逆にグランプリ以降しっかりと休息をとることができた。そして充電もできましたし、その後まとめてしっかりとトレーニングをすることができたとは思っています。我々としましては、あらゆる状況を可能性、機会だというふうにとらえていて、このイベントに来るにあたってもしっかりと準備ができたと思っています。
―― 日本の三浦璃来&木原龍一組が初めてペアで優勝しました。彼らが「強くなるためにはいいコーチはもちろんだけれども、練習仲間がいないと強くならない。それは次の日本の課題だ」というふうに言っていたんですが、みなさんにとって練習仲間がいるということは、自分たちが強くなるうえでどんなメリットや貢献があったと思いますか?
チョック 私たちにとって大人数のトレーニングをするグループがいること、また定期的に彼らと練習をしていること、そしてコーチなどの強力なサポート体制があることが、やっぱり選手の寿命を長くして、選手として成功をおさめ、また幸せを掴むうえで非常に重要だと思っています。これは私たちの経験に基づいてのことですけれども、やはり大会があるときにも、これだけ我々のすばらしいコーチがここに集まってくれていますし、日々の大変な練習を共にした仲間がいることで、より強力なサポート体制が生まれます。ライバルや仲間たちとトレーニングをする、また自分たちが大好きな人たちと共にトレーニングをして、同じことを味わっている。お互いの気持ちがわかる。日々の大変な練習を共に耐えてやっていくっていうことはとても大事です。
ファッブリ 日々の練習を誰かと分かち合うということは、本当に練習を楽にさせてくれると思っています。私たちがスケートを一緒に始めたころは、コーチのバーバラ(・フーザル=ポリ)にとっても最初の教え子だったので、2人だけだったんですね。そこから他のチームや他のグループが加わってきたので、実体験として仲間がいるほうが非常にやりやすいということは言えると思います。お互いに応援をすることもできますし、さらにはその道を共に歩む人がいる、孤独ではないというところが大きいです。
ギレス 私たちは幸いにも、キャリアを通してかなり練習仲間がたくさんいる環境に恵まれています。やはりどんなときでもサポートをしてくれるようなアスリートが身近にいるっていうことはとても大事だと思っています。我々はどちらかといえば、練習仲間のなかでも上のほうで、割と若い人たちが周りには多いです。もちろんもっとシニアもいるんですけれども、ただその若い人たちがいることで、彼らにモチベーションを受けることもあります。ジュニアたちとはスケジュールがちょっと違うので見ることも多いんですが、彼らが一生懸命限界に挑戦しているのを見て、我々もそこからエネルギーをもらって、もっと限界に挑戦しようというふうにすごく気持ちを盛り上げていっている部分があります。キャリアを通していい練習仲間に恵まれたっていうのは本当によかったです。周りにそういうサポートしてくれる人がいると、嫌なことがあったとしても、もっとよい気持ちになれますので。
―― フィギュア界全体についての質問になるのですが、ロシアの選手たちが国際競技会に来られなくなって、もう1年以上が経ちます。そのことがフィギュア界全体だったり、アイスダンスにとってどのような影響があると考えていますか?
ベイツ 時間の関係もあるので、手短に答えます。やはりこの会場の雰囲気を味わうと、フィギュアスケートに対する深い愛情を感じていて、またそれはファンとスケーターともに感じていることだと思います。日本以外にこれだけの体験ができるところはなかなかないと思っています。世界選手権も今回非常に熾烈な競争になっていて、すべての部門で優秀なスケーターたちが技を競っています。1年間みんな一生懸命に努力をして、ここで最高の演技をしようと訓練をしてきたわけですね。まだ大会は半分しか終わっていませんけど、ここまでの結果だけを見ても、やはりお客さまにとっても、それから最高の演技を見せようと思っているアスリートにとっても、いまベストの環境だと思います。
ファッブリ いまの彼の答えは本当によい言葉だったと思います。そこに私から付け加えられることはありません。
ポワリエ ぼくもそれほど付け加えることはできないと思っています。いまエヴァンがぼくたちみんなの気持ちを非常に上手に代弁してくれたと思っています。フィギュアスケートをすごく愛する気持ちのある、ここは特別な場所だと思っています。そんな特別さを私たち競技者もみんな今夜は感じたと思っていますし、これだけこのすばらしいスポーツであり、またそのすばらしいスポーツを愛することができていることは本当によいことです。
―― 今回のリズムダンスに関しては(ルール上)パターンダンスがなくなり、パターンダンスタイプステップシークエンス(PSt)になっています。みなさんにとっても少し自由度はあるのかもしれませんが、実際にジャッジの採点を見ると、シャルレーヌとマルコだけがレベル4をとれています。ということは、より難しいエレメンツだと言えるのでしょうか。
ベイツ まず、シャルレーヌとマルコがこのPStでレベル4がとれたっていうのは本当に立派だと思います。実際、エレメンツとしてはシングルの4回転のような難しさはないと思っていて、男性と女性が交互にターンをするのも楽しいものなのではないかなと思っています。アイスダンスに関しては、いろいろと実験をするといいますか、毎年ルールが変わってきているというところもあって、我々もそれには慣れています。常にオープンな気持ちでどんなルールになるのかを楽しみにしながらやっていこうと思っています。興味のある方は、間もなくルールについての会議もありますので、そちらを覗いてみてください。
ファッブリ 質問されたエレメンツに関しては、特に難しいと思っているわけではないんですが、コリオグラフィーの振付のなかにそれを取り込むっていうことがいつも難しいです。それはどのエレメンツでも、どのシーズンでもプログラムのなかにうまく入れるっていうところに苦労はしているんですけれども、それがこのPStだから特にっていうことではありません。
ポワリエ PStに関しては、リズムダンスでもう何年にもわたって、少し形を変えながら登場してはいるので、まったく新しいというものではありません。今年がPStに関しては男女でターンを共有して、そして回数が少ないぶん、よりこのアイスダンスの個性あるスケーティングを見せる時間がとれたと思っていて、そういう意味ではとても楽しめました。ただ、ステップシークエンスが各チームのスコアやレベルの違いがいちばん両プログラムともに出るものだと思っています。そういう意味では正確性がすごく求められているというところの難しさはあると思いますけれども、とはいえ今年のPStの構図、入れ方に関しては、より自由度が高かったぐらいではないかと思っています。
フリーダンス後に行われるメダリスト記者会見については、「ワールド・フィギュアスケート」98号に掲載予定です。