2025年2月5日
グランプリファイナル2024プレスカンファレンス①女子シングルメダリスト

GPF女子メダリスト会見 千葉&坂本「もしアンバーが全日本に参加したら、間違いなく……」

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グランプリファイナルが12月5~8日、フランス・グルノーブルで開催されました。女子シングルでは、GPシリーズ参戦8年目にしてファイナル初進出のアンバー・グレン選手が初出場初優勝、いっぽうでシリーズ参戦2年目の千葉百音選手が堂々の2位、前回大会優勝の坂本花織選手はSP4位からフリーで追い上げて3位に入りました。

4位には7年ぶりのGPファイナルを戦った樋口新葉選手、5位に2年連続出場の吉田陽菜選手、6位にファイナル初挑戦の松生理乃選手と続きました。グレン選手と5人の日本選手が緊迫した戦いを繰り広げた女子シングルのメダリスト会見をお届けします!

アンバー・グレン in 全日本選手権!?

―― 3人のメダリストをお迎えします。これは全日本選手権ではありませんよ?(笑) それは2週間後に大阪で行われますから。ということで、最初の質問です。アンバー、大阪の全日本に参加してみるのはどうでしょう?
グレン せっかくですが、遠慮しますね。(笑)私は、(全米選手権が1月のため)彼女たちより2週間くらい休みが長いと思うので、しっかり休養をとるつもりです。

―― 前回グランプリファイナルでアメリカ女子が優勝したのは10年以上前です。前回の優勝者は誰だったか覚えていますか?
グレン ええ、アリッサ・シズニーです。

―― その通り。2010年まで遡りますが、それ以来の優勝を果たしたいまの気持ちは?
グレン まだ実感がないんです。今シーズン、自分にとって初めての国際大会の金メダルをベルガモ(ロンバルディア・トロフィー)で手にしました。グランプリ、ジュニアグランプリ、全部の国際大会を含めて初めての金でした。13歳から国際大会に出始めて、いま25歳。たくさんの経験をしてきました。だから、私にとって本当に意味のある優勝だと思います。

―― では、日本の2人へ。全日本選手権にアンバーが参加したら、おもしろい試合になると思いませんか?
千葉 間違いなくおもしろい戦いになると思います。アンバー選手は、今季もう失敗知らずというか、すごく安定感が増してきていて、心の芯の強さをすごくひしひしと感じる試合も多くて。とくに中国杯は、みんな緊迫したなかでもしっかり完璧なノーミスの演技をしたり。もし全日本で一緒に戦えたら、すごく楽しいだろうなと思います。
坂本 今回の結果を見ると、間違いなく壮絶な戦いが繰り広げられるんだろうなというのがあって。このメンバー+ジュニアの子たちも全日本は出るので、本当に誰が勝つのかわからないし、ショートもフリーもミスが許されない状況になってしまうので、勝負するうえではなかなか刺激の強い試合に、アンバーが参加したらなるんじゃないかなという気がしました。

―― 3選手への質問です。今日の演技を振り返っていかがですか。
グレン 演技前に、「やり切るから」とコーチに伝えてリンクへ出ていきました。ベストな状態ではなかったので、残念ながら「イエーイ! 楽しかった、最高!」と終えられるスケートではなかったと思います。仕事をするためにここへ来て、自分の能力を最大限発揮したという感じ。パフォーマンスというより、スキルのデモンストレーションみたいになってしまったので、全米選手権、そして願わくは世界選手権に向けて、この点は努力していきたいところです。でも、自分の安定感はとても誇らしく思います。それこそ、すごく長く苦労してきた点だったから。滑り始める前に、自分自身にも大声で言って聞かせたんです。「あなたがここにいるのは、やり遂げるため。さあ、いこう!」って。
千葉 最初だけ英語でいきます。I’m glad that I got the silver medal, but I don’t feel I gave my all. (銀メダルが獲れたことはうれしいですが、今日の演技に自分の全部を出せたとは思っていません。) 今日のフリーの演技は、とても完璧と言える出来ではなかったんですけど、それでもループの着氷で耐えたり、最後のフリップもけっこう危なかったんですけど、全体的にまとめることができたのは、すごく大きな成果だと思います。
坂本 今日の出来は、いま自分ができることを90%ぐらいできたので、それなりに満足はしていて。2日前のショートでミスしてしまったのが、やっぱり点数に響いたので、本当にミスなくまとめるのが大事なんだなと、今日改めて点数を見て感じました。

チームUSAの”マミー”として

―― アンバーへの質問です。今大会が今季4試合目で、トリプルアクセルに8回挑んだことになります。覚えている限りでは、ミスをしたのは中国杯だけだと思います。トリプルアクセルはすべてのスケーターにとってもっとも難しいジャンプの1つですが、いま自身にとってトリプルアクセルは簡単なジャンプになってきていると言えるのでしょうか?
グレン フランスのGPでもステップアウトしてしまっていましたが、中国杯での“q”(回転不足)も、感触自体はよかったのでとくに影響はありませんでした。プログラムの最初のジャンプなので、自分の心の置き所さえ正しくできていれば、それほど難しくないんですが、今日みたいにアドレナリンが最大限出ているときはいつもより大仕事です。どんどんアドレナリンが出てくるけれど、跳ぶときにはそれがおさまってくるので、精神的というよりフィジカルの部分が大事になってきます。たしかにいまは以前より簡単なジャンプになったと言えるけれど、ここにくるまで本当に長かったです。

―― アンバーへの質問です。1つ目の質問は、この夏から一気にうまくいくようになったと話していましたが、どうしてだと感じていますか。2つ目の質問は、アメリカの若手女子たちから「マミー」と呼ばれていますよね。チームUSAの選手たちをとても気遣っているのだと思うのですが、彼女たちにとって自身はロールモデルあると感じていますか。
グレン そうですね。スケート界は小さなコミュニティだから家族みたいなものなんです。遠くに住んでるいとこって感じで、私はいいおばさんか、お母さんみたいなものかな。なんでみんなから「マミー」が出てくるかっていうと、みんなにお菓子を食べさせたり、バンドエイドもヘアピンもヘアスプレーも必要な子には差し出したりしているからだと思う。どこに行くにもめちゃくちゃ大きいダッフルバッグを持ち歩いているから、みんなが必要になりそうなものはなんでもどこでも出せちゃうので、「マミー」って呼ばれているんです。それに、もし誰か悩んでいる選手がいたときに、私はみんなよりけっこう年齢が上だし、自分のメンタルヘルスについてもオープンにしているから、アドバイスがほしいときや問題を抱えたときに相談しに来られるんだと思う。長くずっとチームUSAにいますしね。そういう相手は、自分がもっと若かったころにほしかった存在だったから、そうあることは私にとっては原点であり、長いこと私のスケートにおいて最も大事な側面の1つになっています。スケーターたちが私をそういう存在として見てくれることはとてもありがたい。人にはそれぞれのスペースがあるから、ボーダーラインは心がけています。必要のない状況に首を突っ込むことはしたくないけど、何か問題があったときに私のところに来てくれたらと思っています。

グレン それから何がはまったか、ですよね? 自分はできると感じられたんです。ここまで4つのいい演技ができていて、ジンクスを作ることはしたくないんですが、以前に脳震盪を起こしてしまったこともあり、ニューロセラピーを始めました。他にもいろいろあるけど、転んだり、何かにぶつかって両方の眼窩骨折や目の周りにあざを作ってしまうこともあったりして、そういうトラウマと向き合いながら成長してきました。ドッグクリッカーに似ていて、脳を休ませることでその状況から抜け出すんです。それまでは、試合に出ているときは、クマにでもおいかけられているような気分で、ずっと激しく動き回ってすぐに疲れてしまっていた。いっぽうで、いまはどちらかというと瞑想みたいな感じで、アドレナリンをクラッシュさせるというより、息がしやすくなって自分の身体と対話できる。昨シーズンの全米選手権、世界選手権が終わったあと、集中力切れてしまって(フリーの)後半で何度も挫折してしまう私に、スポーツ・サイコロジストが勧めてくれたのはありがたいことでした。ほかのスケーターにも(ニューロセラピーのことを)話しているので、始める選手もいるかもしれません。「あのね、これが、いま私がやっていることで、私が抱えていた問題はこれのせいだったんです」と話すことができたのも、とてもうれしく思います――ごめんなさい、長くなってしまいました。 

―― アンバー、演技前はコーチからはどんな言葉をかけられましたか。
グレン 氷に出て行く前にかけてもらった言葉の1つが、「落ち着いた獣になれ」です。あるとき、私がすごくうまく滑れたときにコーチの1人が「落ち着きのある獣みたい」と言ったんです。落ち着いていて、何事にも動じないけれど、同時にパワーがあって、いつも通りのことをやる。世界選手権以降は、すぐに修正しないといけないことをずっと口にしていて「これとこれをやった」「こっちはやらなきゃいけないって言われてるんだった」って感じになってしまっていたんですが、コーチが「ちょっと待って! 大丈夫、よくやっているよ」と落ち着かせてくれました。おかげで、こうなったということです。

―― ありがとうございました。3人とも、おめでとうございます。
(2024年12月8日)

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