2024年12月21日
フィギュアスケートとのコラボでも知られるスペイン舞踊の雄が来日公演!

INTERVIEWアントニオ・ナハーロ「フラメンコを滑る秘訣とは?」

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スペイン・ダンス界のトップスター、アントニオ・ナハーロが自身のカンパニーを率いて、7月5日から東京・渋谷で来日公演をスタートさせます。スケートファンにとっては、ステファン・ランビエルの「ポエタ」やハビエル・フェルナンデスの「マラゲーニャ」の振付などで記憶に残るナハーロ。スペイン国立バレエ(スペイン舞踊が中心のナショナルカンパニー)で芸術監督を務めたのち、2020年からアントニオ・ナハーロ舞踊団の活動を再開させるかたわら、最近ではディズニー映画「ウィッシュ」のコレオグラフィを担当するなど、多方面で精力的に活動しています。フラメンコ・プログラムを滑るスケーターへの実践的なアドバイスをはじめ、興味深いインタビューをぜひ。

いまもスケートが好きで、よく見ています

―― ナハーロさんといえば、2008年の「チャンピオンズ・オン・アイス」でステファン・ランビエルとコラボレーションした「ポエタ」でのダンスが真っ先に思い出されます。

ナハーロ 懐かしいですね! ステファンともだいぶ会えていないけれど、いまも偉大なアーティストでいるだろうということは確信しています。彼の内側には、誰しも愛さずにはいられない魂がある。それが大事なことですよね。私も、いまでもフィギュアスケートが好きで、スペインでは数少ないですが、大会の中継なども見ていますよ。

―― 多方面で活躍されていて、昨年公開されたディズニー100周年記念映画の「ウィッシュ」では、ダンスシーンの振付を担当されたそうですね。

ナハーロ ある日、ディズニーから電話がかかってきたんです。「あなたはとてもオープンマインドなコリオグラファーだと聞いている。今度制作する映画の主題歌がスペインの曲なんだけれど、振付を頼めないか」とね。カンパニーのダンサーたちとともに何種類かの振付を制作して、それから会議に次ぐ会議。1回の打ち合わせに40人くらい参加していて、今回は目のデザインだけ、次回は鼻のデザインだけを話し合うという感じでした。(笑)私も頭の動きやカスタネットの鳴らし方をはじめ、細部まで修正に参加しました。多くの人々にスペイン舞踊について知ってほしいと思っていたから、またとないチャンスでしたよ。先日までシカゴで私の作品を上演していたんだけれど、「ウィッシュ」で知ったという方たちが見に来てくれました。スペイン舞踊界で、私のように外国語を話し、会議にも参加し、外の世界に対してオープンマインドな人はそんなに多くないんですよ。それだけにスペイン舞踊の普及において自分の責任は大きいと自覚しています。だから映画であれ、フィギュアスケートであれ、アーティスティックスイミングであれ、喜んで参加するわけです。

フラメンコを滑るスケーターたちへ

―― 最近のフィギュアスケートについてはどんなふうに見ていますか?

ナハーロ 楽しんで見ていると同時に、芸術的な面では、何か足りないものを感じることもあります。私が初めてスケーターに振付けたのはアイスダンスのマリナ・アニシナ&グウェンダル・ペイゼラ(2002年ソルトレイクシティオリンピック金メダル)でしたが、そのころから選手たちやコリオグラファーが努力して、フィギュアスケートを芸術的な面で成長させる様子を見てきた。けれども、このスポーツにはもっともっと可能性と潜在力があるはずだというふうにも思います。スケートの表現にエモーションを込めて滑るにはどうしたらいいか、演劇的でダンス的なムーヴメントをするためにはどうしたらいいか。私も手助けができるなら、喜んで手助けしたいという気持ちをもっていますよ。

―― フラメンコをはじめスペインの音楽と振付を表現しようとするスケーターのために、どうしたら表現をより向上させることができるか、アドバイスをするとしたら?

ナハーロ 最初に理解すべきなのは、「フラメンコとは何か」ということです。フラメンコには情熱やエネルギーや感性が大事だと思われがちですが、それ以前にまず正確な技術が必要なんです。頭をめちゃくちゃに振ったり、スカートをばたばた翻したりすることはフラメンコの表現とはいえない。戯画化や真似ごとになってしまわないように、正確なテクニックとポジションについて学んでもらえたらと思いますね。スペイン舞踊のダンサーが踊っている姿を見ると、すべてが流れるように、簡単に踊っているように見えるものですが、実際には難しい振付を正確にこなしています。できるなら、スケーターもスペイン舞踊の専門家から習ってもらえるといいと思います。

第2に、リズムの理解です。フラメンコにおいて音楽性は極めて重要で、すべての要素は完璧にリズムと合っていなくてはいけない。音楽との精密な一致はフラメンコの大きな特色です。第3に、滑っているときにどこを見るか、つねに視線の動きを意識することです。フラメンコでは、「どこを見るか」が意識から外れることはない。ダンサーは劇場の舞台で踊るので比較的容易ですが、スケーターは360度観客がいますから、視線を定めるのは難しいとは思います。でも、しっかりと1点を見つめることでスペイン舞踊らしさを際立たせてくれますよ。

―― 非常に興味深いお話です。今回はご自身の名を冠したカンパニーを率いての初来日ですが、日本公演ではどんな作品を上演されるんですか。

ナハーロ 「ALENTO アレント」と「QUERENCIA ケレンシア」という2作品を上演します。「アレント」は、スペイン舞踊のスタイルに、アルゼンチンタンゴやジャズ、ブルースなど異なるジャンルの音楽を融合させ、とても現代的で高難度な振付で表現する作品です。伝統的な美しさも保ちつつ、フラメンコの既成概念を破るような、新しいアートをお見せできるはずです。「ケレンシア」は、エスクエラ・ボレーラ、ダンスエスティリサーダ、フラメンコ、フォルクローレ(民族舞踊)というスペイン舞踊の4つのスタイルをすべて取り入れています。長いドレスや扇、カスタネットなども用いて、伝統を重視しながら新しさを同時に描いていきます。私はスペイン国立バレエ芸術監督時代にも何度も来日しましたが、今回は自分自身のカンパニーの素晴らしいダンサーたちと一緒に作品を披露できることが楽しみです。芸術を愛するスケートファンのみなさんにも、ぜひ見に来ていただけたらと思います。

▶公演情報
アントニオ・ナハーロ舞踊団
Aプロ=ALENTO(アレント) Bプロ=QUERENCIA(ケレンシア) 振付:アントニオ・ナハーロ
●東京公演
2024年7月5日19:00A、6日13:00A、17:00B、7日13:00B/渋谷区総合文化センター大和田さくらホール
公式サイト:http://miy-com.co.jp/events/najarro-tokyo/
●小田原公演
2024年7月9日17:00B/小田原三の丸ホール大ホール

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