笑顔満開、楽しさいっぱいの第2部へ
第2部は、まず今年から始まった新企画「真夏の7番勝負」。愛知を経て4番目の勝負(7月27日昼回)は、「ボール運び」だ。小さなコーンが氷上に並べられ、イリア率いるチームAとジュンファン率いるチームBの3人ずつに分かれたチーム対決で、お玉に乗せたボールを落とさずにジグザグ往復するという、まさに“運動会”な種目に挑んだ。開始直前に宮原審判から「行きは前向き、帰りは後ろ向きで! あ、ずっとワンフットで!」という鬼指令。混乱に陥りお互い相談する男子たちだったが、容赦ない笛で競技を開始した。ときどきボールを落としながらも、抜きつ抜かれつのいい勝負に会場は大盛り上がり。チームBが勝利し、ドヤ顔ウィニングランで拍手を浴びた。
鼓童のソロパフォーマンス「屋台囃子」で太鼓の響きが会場を満たすと、今度はスケート巧者たちが本領を発揮するグループナンバー「Glide 滑走者」。無音のなかデニス、ケヴィン、ジャン=ルックのスケーティングの“音”だけが会場に響く。カーブ、回転、Tストップ、トウステップ。それぞれに異なる、繊細だけれど力強いスケートの音が、太鼓との好対照を描いた。続くイリア、ジュンファン、三浦、アレクサンドル・セレフコ、ミハイル、ニカと鼓童がコラボする「stride」は、まさに男子スケートの魅力を全開にするボーイズナンバー。太鼓のリズムに呼応し、日頃シングルで滑る彼らがグループで畳みかける4回転ジャンプ&テクニック、色とりどりのステップシークエンスでド迫力のコラボナンバーを生み出した。
唯一のペア、チャン&ハウが「Vincent」で舞うと、セレフコが「Why’d you lie?」で長身から繰り出す滑りをアピール。続いてジュンファンがフランス語のポップス「Mr/Mme」に乗って、まるで濃やかなエッジでリリックを歌うような、ピュアで広がりのあるパフォーマンスを見せた。トランジションナンバーでカップルたちがプログラム同士の間をつなぐなか、満を持して登場したのがパパダキス&シゼロン。黒の衣装をまとった2人の「when the party’s over」はしっとりとした大人の色香に満ち、離れては巡り合い、心を寄せてはまたすれ違うさまがまるで一篇の会話劇のよう。世界チャンピオン、イリア・マリニンはEX「Lovely」を披露した。ビリー・アイリッシュ&カリードの気怠いヴォーカルが描く静かな空気のなかに、伸びのよいスケーティングを溶かし込んでいく。ことに回転の美が光り、彼の表現の進展をも示して余りある演技となった。
トリは座長・宇野昌磨と鼓童のコラボレーション「巡 Meguru」。氷にパワーを打ちつけていくような宇野のスケーティングの質はもともと打楽器にぴったりだが、鼓童の太鼓とのコラボは愛知公演を経てさらにパワフルに。4回転や3アクセルも交えつつ、目にもとまらぬほどのエッジワークとスピード、そしてエモーショナルな表現で魅せていくプログラムは、自身のこれまでの競技人生へのオマージュとも、今後のさらなる進化への力強い宣言とも受け取れるようなナンバーとなった。
フィナーレ「結 Yui」は全員がカラフルな衣装をまとい太鼓にのって滑る、お祭りの雰囲気満点の賑やかな場面。イリアはバックフリップやラズベリーツイスト連発で、盛り上げリーダーを担った。続くグランドフィナーレは恒例の観客も立ち上がって踊る「君の瞳に恋してる」だ。スケーターと観客の垣根が低く、一緒に楽しむというスタンスで贈る真夏の氷上祭典は、盛り上がりのなか幕を閉じた。