2024年11月23日
21年の競技生活に幕を下ろし、新たなステージへ!

宇野昌磨、引退会見「今後も楽しんで応援してほしい」

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ステファンの喜んでいる姿は鮮明に残る思い出

トークセッションが終わると、今度は会場の記者たちからの質問に答えながら、選手時代のことや引退を決めるに至った経緯を語った。

―― お疲れ様でございました。いろいろなモチベーションを持ちながらシーズンを迎えていたと思いますが、引退を決めた時期、自分のなかで、今期で区切りをつけようと思った時期はいつでしたか。
宇野 引退自体を考え始めたのは、2年前ぐらいでした。ただ、そこから自分が引退する姿というのがなかなか想像できないなかで、もちろん全力でスケートに取り組んできた。それから、いろんな経験をし、いまに至るという形ではあります。

―― はっきりとした時期はない?
宇野 はっきりとした時期は、だんだんと……。ただ、コーチに伝えた時期に関しましては、全日本が終わったタイミングで、ステファンコーチに、この次の大会で現役を引退しようと思うと伝えさせていただきました。

―― 中京大学の学生は、宇野選手に本当に憧れを持っています。
宇野 ありがとうございます。

―― 何度も何度も転んでも立ち上がる、その姿に憧れています。大舞台を経験したからこそ、得たものや感じたことなどを教えてください。
宇野 そうですね。大舞台を経験したからこそ……難しいですね。ぼくとしては、もともと人前に立って、こうやって喋ったりとか、大きな舞台で自分のパフォーマンスをすることを得意とする人ではなかったんですけれども、やっぱり一度大きな舞台を経験することによって、どんなことでもあの時よりは緊張しないよねとか、そういった部分には繋がったりするんですけれども。いまでも、大舞台を経験したことがたくさんありましたけれども、全然大舞台じゃなくても、プライベートな部分でも、たくさん緊張する部分はあるので。いちばんの思いとしては、そういう経験ができるのはいましかないな、と。貴重な宝、貴重な経験だったなと、振り返ると思うなというところです。

MC でも、宇野さん、今日はまったく緊張してないんですよね?
宇野 そうですね。(笑)好き勝手しゃべっていいと思ってるので、もう全然緊張してないです。

―― お疲れ様でした。これからもフィギュアスケートで色んなことに挑戦されていかれると思います。競技生活のなかで、何度思い出してもいい思い出だと思えるような、今後の自分のお守りになるような大会やシーンがありましたら教えてください。
宇野 そうですね。やっぱり世界選手権で初めて優勝したあとのステファンの喜んでいる姿は、すごく自分にとっても鮮明に記憶に残る思い出かなと思います。

―― 引退を考え始めた時期が2年前ぐらいからだったという話でしたが、これはどういったきっかけで考えるようになったのかお伺いできますか?
宇野 ぼくはもともと、どうしてもいい成績を残してやるぞという強い気持ちで競技をやってきたというよりも、本当に毎日ベストを尽くす、そして目の前の試合を全力でいちばんいいものにするという気持ちでやってきていたんですけれども。それが、世界選手権で1回優勝したときに、もちろん引き続き頑張るという気持ちは変わりませんでしたけれども、ゆづくん(羽生結弦)の引退だったり、ネイサン(・チェン)の引退もあり、ずっとともに戦ってきた仲間たちの引退を聞いて、すごく寂しい気持ちと、なんか取り残されてしまったという気持ちもありましたし、そういったところから自分も考えるようになったかなと思います。

―― お疲れ様でした。先ほどおっしゃった、羽生選手とネイサン選手との戦いのなかでいちばん印象に残っている試合を教えていただきたいです。あと1点、2年後にミラノ・オリンピックも控えるなか、まだトップ選手としての力を持っているなかで、ここで競技会から離れることで未練はまったくないのでしょうか?
宇野 まず未練というところに関してなんですけれども、正直、まったくないです。自分としては、これからまた自由にスケートをやれることの嬉しさとともに、昔の映像を振り返ってみても、本当によく頑張ったなって。ここまで毎日同じことを磨き上げられるというのは――自分のことなのであまり褒めちぎりたくはないんですけれども、本当に素晴らしいことを成し遂げることができたなと、ぼくは思っています。また、記憶に残るネイサンと、ゆづくんとの試合なんですけれども、彼ら2人は、ぼくにとっては雲の上の存在で、いつか同じ立場で戦えるようになりたいと常々思う、すごいスケーター2人でした。ぼくが、果たしてそこにたどり着けたかどうかは、自分では分かりはしませんけれども、それでもぼくなりの全力のフィギアスケート人生を送れたかなと思います。どっちかっていうと、大会よりも、2人の人間性の素晴らしさのほうが、ぼくは記憶に残るかなと思っています。

―― 競技者生活お疲れ様でした。体格が大きな選手に混じって、ご自身の強みとか、表現を作ってきた印象があります。その姿に勇気づけられる選手もいると思うなかで、振り返ってみて、考えてきたこととか、何か残せたものがあるなとか、いま思われることありますか。
宇野 そうですね。フィギュアスケートという分野で、身長が低いとかの部分で不利に思ったことはないです。本当にフィギュアスケートでよかったなって思ってます。まず、この157cmという身長で輝けるスポーツ――以外もですけれども、なかなかないので、偶然フィギュアスケートを始めて。本当に「恵まれている」という言葉を今日は口にしていますけれども、そういった部分も含めて、ぼくにとっては何も、不利とかマイナスな気持ちに思うことはなかったかなと思います。

―― 男子フィギュア界で言いますと、いまイリア・マリニン選手ですとか、若い選手も台頭してきています。そういった選手と戦っていく後輩たちに向けて、いま思うメッセージ、こういう戦いをしてほしいというものがありましたら教えてください。
宇野 ぼくも、この前、アイスショーで昔のプログラムを滑ってたので、昔の競技の映像を見ることがあったんですけれども、自分の映像を見ても、やはりこの数年間でこのフィギュアスケートという技術含め、もちろんぼくは技術がすごく進化したなと思っていましたけれども、昔に比べると表現の部分でも本当に進化しているんだなっていうのを、自分の演技を見て実感しました。どんどんどんどんハイレベルになっていくフィギュアスケートが今後も楽しみですし、また日本の後輩の子たち、みんなマジでいい子しかいないので、すごく仲もいいですし、全員がいい結果をもちろん望みますけれども、本人がいちばん楽しく、自分の目指しているスケートを体現できる選手が1人でも多く現れるといいなと思っています。

―― 宇野選手は昔から滑っているときと日常のギャップがすごいというイメージがあるのですが、表現したい、フィギュアスケートで何か伝えたいという、そのパワーはどこから湧いてくるのでしょうか。あと、滑っているときにどんなことを感じて、どんなことを考えて滑っているのかをお伺いしたいです。
宇野 ぼくは、小さいときはとくに人前でしゃべれないとか、すごく内向きな性格だったんですけど。たぶんぼくの両親も、あれだけのお客さんの前で、1人で氷上に立って、1人で演技するのが、このぼくにできると思ってなかったと思うんですけれども、逆に自分1人しかいないからこそ、自分が作る世界、表現をちゃんと見てもらえる機会。この場もですけど、ぼくが喋ったことを真摯にみなさん聞いてくださって、報道してくださる場というのはすごくありがたいことですし、だからこそ自分の色を出しやすい場所かなと思う。そういったことに関しては、自分があまり発信できるタイプじゃないからこそ、すごく性に合った競技というか、環境だったかなと思いますし、また自分の今後演じていきたいスケートに関しましては、やっぱりまずは自分が全力を出したい、そして日々楽しいと思えるプログラムを作って、自分の感情が前のめりに出てくるようなプログラムを、みなさんにまずはお披露目できたらなと思っています。そういった先に、「これやらなきゃ」ではなく、「やりたい」という気持ちから現れる素晴らしいプログラムが今後作れるんじゃないかなと、いまワクワクしています。

―― 素晴らしい演技をたくさんありがとうございました。今日の会見のなかでも、宇野選手の言葉の中に「全力」という言葉がたくさんありました。宇野選手が毎日スケートに全力で向き合ってこられた、その原動力を教えてください。
宇野 ぼくにも正直分からないです。ぼくは小さいときからゲームが大好きだったので、最初はゲームをしたくてスケートを頑張るという感じでした。ただ、そんなぼくでも、毎日スケートをしていくなかで、だんだんとスケートの魅力だったり、そして世界のトップで戦える自分というものにすごく惹かれていったんだと思います。また、全力というか、自分が本当にすべての時間をぶつけられる、趣味も含めてですけれども、場所があるのはすごく大事なことだなと思っていて。どんだけ落ち込んでいても、自分の心を無にではないですけれども、全力で取り組めるのは、すごく貴重なことなんだなと。ときにはそれによって疲れるときもあるかもしれませんけれども、ただ、ひた向きに向き合ってきた時間というのは、今後の自分の財産になると思いますし、今後ともこの経験は、自分の人生に活かせる部分じゃないかなと思います。


最後は、森田キャスターから花束を贈られ、集まった関係者や記者たちの温かい拍手と、画面の向こうのファンたちが見つめるなか、新たな1歩を踏み出した宇野選手。すでに7月のプリンスアイスワールドとザ・アイス、8月のフレンズオンアイス、そして9月のワンピース・オン・アイスと次なる活躍の場が待っています。今後いっそうの活躍を楽しみにするとともに、宇野選手の新たなスケート人生に幸多からんことを願っています!

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