2025年7月17日
2度目のオリンピックシーズンへ準備万端

鍵山優真、中京大で練習公開 新フリーは「トゥーランドット」

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鍵山優真「見ている方々の心を動かすプログラムに」

練習を終え、最後にメディア取材に現れた鍵山選手。オフシーズンの練習や、新プログラムについて語るにこやかな表情からも、日々の充実ぶりが伺えた。2度目のオリンピックシーズンへ懸ける思いが話の端々からあふれる。

©Manabu Takahashi

―― フリーのジャンプ構成について。
鍵山 とりあえずシーズン序盤は、父と話し合って、プログラムの完成度をしっかりと高めたいということだったので、4回転サルコウとトウ2本の構成でいきたいなと思っています。フリップはショートには入れる予定なんですけど、いまは4回転を少なくしてもプログラムの完成度をしっかりと上げていきたいので、(フリーは)少しずつ上げていく感じになると思います。

―― では、シーズンを通しての完成形というと?
鍵山 4回転は、3種類4本は最低でも入れたいと思っています。ルッツに関しては、試合をやっていくなかでのプログラムの完成度次第というか、ルッツの完成度ももちろん大事になってくる。去年はいろいろ試したりして、プログラムが崩れちゃうことが多かったので、まずはフリップまでをしっかりとベースで跳べるように、安定感を高めていきたいです。

―― フリー「トゥーランドット」は新録の音源とのことですが、自分のために演奏してもらった音源で大事なシーズンを戦うというのはどんな気持ちですか。
鍵山 ショート、フリーともにすごく自信が持てるような、自分のいまのモチベーションに繋がっているような作品になっているので、毎日、毎日、滑っていて楽しいですし、フルオケで演奏してもらっているパワーとか、音楽から伝わってくるものをすごく感じるので、自分も音楽に負けないように、表現を極めていきたい。ジャンプももちろん跳ばなきゃいけないし、もちろん高い点数を評価してもらうことは競技として必要になってくるんですけれども、それ以上に見ている方々の心を動かしていけるプログラムになったらいいなと思います。

―― 世界選手権後に、ルッツの練習よりも、プログラムの完成度を高めようとお父さまに言われたときは、すんなりと自分のなかに落とし込めましたか。
鍵山 すんなりと落とし込めました。昨季は初戦の段階からフリップに果敢に挑戦して、それでもフリップがなかなか決まらなくてガタガタ崩れていっちゃったり、ルッツを入れてプログラムの完成度自体が落ちてしまうという試合がけっこう多かった。ぼくもいきなりいろいろ全部詰め込んで試すということは、たぶん自分のシーズンの過ごし方に合ってないなと感じたので、まずは4回転が少なくても、プログラムの土台の部分をしっかり作って、いまの構成で自信が持てるようになったら、フリップを入れたりしたい。グランプリまでにフリップは入れたいですけれども、それまでの2、3試合は自分のプログラム、スケートに自信が持てるパフォーマンスがしたいなと思います。

―― 正和先生が、表現面やスケーティングなどPCSで満点を目指していくとおっしゃっていましたが、鍵山選手自身はその点についてどう考えていますか。
鍵山 ショートもフリーもすごく濃密な自分らしさ全開のプログラムを作っていただいて、自分で言うのもあれですけど(笑)、ノーミスしたら本当に(PCS)10点いけるんじゃないかなという自信のあるプログラムを作ったので、ローリー先生もそれを信じてこのプログラムになっています。昨季が悪かったわけじゃないですけど、今季はある意味、自分の集大成と言えるようなプログラムで、PCSはしっかりと9点後半から10点ぐらい出せるようにがんばっていきたいなと思います。

―― それができれば、世界チャンピオンのイリア・マリニン選手とも戦っていけるという手ごたえが?
鍵山 自分はそんなに4回転を何本も何種類も跳んでいるわけじゃないので、やっぱりその分、どこで点差を埋めていくかと言ったら、ジャンプのGOEだったりとか、スピンのレベル、GOEだったり、あとは本当にスケーティングの部分がすごく大事になってくる。1ミリもマイナスを出してはいけないとすごく感じているので、全部を練習するのは大変なんですけれども、最近はすごく楽しく練習できていると思うので、そこがだいぶ(昨季とは)違うかなと思います。

―― 集大成という言葉が出ましたが、鍵山選手のキャリアのなかで、このミラノ・オリンピックシーズンはどういう位置づけでしょうか。
鍵山 オリンピックが終わってからのことは一切何も考えていなくて、このオリンピックシーズンをとにかく全力で、後悔のないように走っていきたいなと思っています。ミラノの次のオリンピックも目指そうと思えば目指せる年齢ですけれども、とりあえずはこのシーズンが終わって、「全力でやり切った」と思えるようなシーズンにしていきたいなと思っています。

―― どういった部分で、このシーズンに懸ける思いが強いんでしょうか。
鍵山 オリンピックにおける目標だったり、団体戦のことだとか――以前、北京で銀メダルを獲ったときに、団体のメンバーで次もメダルを獲りたいねという話をしていて、花織ちゃんも今シーズンで最後ですし、フランスのオリンピック(2030年アルプス)ではもうみんな揃わないことが確定しているので、そういったところからもミラノは自分のためにももちろんがんばりたいですし、団体のためにもと思っているので、このチャンスを逃すわけにはいかないとすごく考えています。まずは、いま目の前にあることを一生懸命がんばって、そのあとはそのあとでしっかりと考えるというふうに過ごしていきたいと思っています。

―― 正和先生は、昨季と比べると練習もかなりストレスフリーでやれているとおっしゃっていました。
鍵山 だいぶ毎日の練習にストレスがなく、調子が悪くてもけっこうすぐ立て直せるぐらいには、本当にのびのびといま練習できているのかなと思います。

―― 充実感を覚えるくらい?
鍵山 そうですね。目標のために満足はしていないですけれども、自分がこういう練習がしたいだったり、オリンピックに向けてこういう選手になりたい、そのためにどういう練習をすればいいという目標を持ちながら毎日練習して、今日はがんばったと毎日思えるぐらいできているかなと思う。もっともっと自分を追い込んで、でもあまり重く考えすぎずに、自分がもともと持っていたスケートが好きという気持ちは忘れずに過ごしていきたいなと思います。

「銀の次は金しかない」

―― 団体戦については、現時点でどのように考えていますか。
鍵山 まず全日本をしっかりとがんばらないとオリンピックに出られないので。正直、団体はもし出られるなら、ショート、フリーどっちでもいいかなと思います。4年前は本当に楽しいだけでオリンピックを過ごして、いい結果を獲れたので、今年も結果はもちろん求めていきたいと思うんですけれども、試合に出られる喜びだったりとか、毎日楽しく滑る喜びを忘れずに、目標に突っ走っていきたいと思います。

―― 男子シングルでは、オリンピックの表彰台を知る唯一の現役選手ですが、北京の銀メダルはいまご自身のなかでどんな存在ですか。
鍵山 4年前の自分は、本当に自分のスケート人生のなかでいちばん最強の自分だったなと感じていて、もちろん銀メダルが獲れたのはすごく満足のいくものだったんですけど、でもやっぱり、「銀の次は金しかないでしょ!」って思っているので、ミラノでは団体、個人ともに金メダルを目指していきます。なかには、マリニン選手もいるので、「高く目標を持ちすぎじゃない?」と言う人もいるかもしれないんですけれども、目標は高ければ高いほどモチベーションになるので、自分の芯の部分はしっかり持って過ごしていけたらなと思います。

公開練習より ©Manabu Takahashi

―― 世界選手権後、お父さまからジャンプよりも表現面を重視しようと、練習の方向転換を言われたときはどう思いましたか。
鍵山 世界選手権終わった直後の自分は、とにかく「フリップもルッツもやらなきゃ勝てない!」って、変な考え方をしていました。昨年のシーズン中もそういう考えが多くて、結果を意識しすぎて、ちょっと変な方向に追い込んじゃっている自分がいるかなと思ったので、自分の原点というか、自分のよさをしっかりと出していくために、まずは4回転の数を少なくしてでも完成度を上げていくと言われたときは、しっかりと納得しましたね。

―― ジュニアのころからスケーティングスキルや音楽性の高さは言われてきたと思うのですが、改めて昨季が悔しいシーズンになったことで、原点回帰を図ることにしたということでしょうか。
鍵山 去年は本当に結果だけを求めちゃって。ロンバルディアからイリア選手も一緒にいて、その差を改めて感じて、どうしても追いつかなきゃ追いつかなきゃって、本当にやりたいことを忘れてしまっている自分がいたので、いままでの強かった自分は結果じゃなくて、自分がどういうスケートをやりたいか、どう楽しみたいかということを考えてやっていたと思うので、いまはそこに戻って練習できているかなと思いますし、ジャンプもいまはもとに戻ってきて、全然感覚も違うので、すごくいまは自信を持って取り組めています。

―― 今年の「攻めていく」とは。
鍵山 攻めるにもいろんな意味があると思うんですけれども、まず今回用意してもらったプログラム自体がすごく自分のなかで攻めている、オリンピックでも攻めているプログラムになっているかなと思いますし、自分らしさという部分では変わらない部分もありながらも、曲を作ってもらったりとか、偉大な方とコラボしたり、そういうところでは攻めているかなと思います。

―― お父さま以外にも、方向性として完成度を上げるほうにシフトしたほうがいいとおっしゃる方はいましたか。
鍵山 原点回帰ということについては、やっぱり父の言葉がすごく大きかったかなと思います。何回も何回も一緒に話し合って、本来の鍵山優真を取り戻していくために、どう新シーズンを過ごしていくかということをしっかりと話し合って、いまはそれを実行している段階なので、父ともすごくいい関係性で毎日過ごせていますし、カロリーナ先生とも、いまは会えていないですけど、動画を送ったりして「いい感じ」と言ってくださるので、いまはいいチームの体制を築けているかなと思います。

―― 「トゥーランドット」を滑るにあたって、宇野昌磨さんからアドバイスをもらうことはありましたか。
鍵山 とくにアドバイスはないですけれども。(笑)このプログラムを滑るにあたって、特別な思いというのはたくさんあって、まず曲を作ってもらうこと自体が初めてのことなので、「トゥーランドット」という大きなタイトルを演じるにあたって、自分がそれにふさわしいかどうか、最初のほうは不安だったんですけれども、いま滑ってみると、少しずつこれは自分にしかできないと自信を持ってやれていると思うので、自分なりの「トゥーランドット」のかたちをしっかりと作っていけたらいいなと思います。

―― イナバウアーは?
鍵山 イナバウアーはします! たぶん最初(音楽が)始まったときは「う~ん、これ……トゥーランドット?」みたいな感じだと思いますよ。(笑)最後のほうで「あー!」ってなるようなプログラムになっているので、新しいかたちとして見ていただけたらいいなと思います。

いよいよ今週末から新シーズンの試合がスタート! ©Manabu Takahashi

(2025年7月9日、公開練習後の共同取材より)

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