友野一希「自分の好きなスケートを極限まで極めていけたら」
イベント終了後には、友野一希、大島光翔、木科雄登、三宅星南の各選手が囲み取材に応えた。
―― 新シーズンに向けたプログラムを滑り、後半ではスケート教室も行いましたが、イベントを振り返っての感想を。
友野 今年2年目になるんですが、新しく三宅星南選手も今回来ていただいて、年々規模感が自分が思っている以上に、こんなに素晴らしいイベントに……たくさんの方に応援していただいてやっているんだと実感できるイベントでもあり、みんな言っていたんですけど、改めて気合が入るというか、またシーズンがんばるか、という感じになります。もともとは実際にスケートを見て、やってみて、スケートの楽しさを少しでも伝えられたらと思っているので、今回もそういうイベントになっていたらうれしいなと思いますし、協賛の企業の方々にお店を出していただいたり、花束があったり、去年よりもそういう面でもたくさん楽しんでいただけたかなと思います。自分自身、すごく楽しいイベントになったなと思っています。
三宅 今回はじめて参加させていただいて、温かい皆さんの前で滑らせていただいたことが、シーズンの気力じゃないですけど、「がんばろう」という気持ちにつながりましたし、そのあとのスケート教室も、ぼくはあまりスケート教室という形で指導させていただくことがあまりなかったので、すごいたどたどしかった部分もあるんですが、スケートが好きなみなさんと滑れたことが貴重な経験になりましたし、よりいっそうフィギュアスケートって素敵だなと思えました。素敵なイベントに呼んでいただけて本当にありがたかったです。
木科 自分の演技はミスもあったんですけど、昨シーズンからの継続ということで、自分らしい滑りがステップなどレベルアップしているかなという手ごたえが感じられる内容でもあったので、練習を重ねてジャンプもしっかり入れていけるように、シーズンに向けてもっと練習して、ラストシーズン、引退に向けてがんばっていきたいなと思いました。教室については、普段からスケート教室に通われている方から、今日滑るのが初めてという方まで、幅広い方々に参加してもらっていたと思うんですけれども、どのレベルの方にも楽しんでスケートをしていただけるように指導することを心がけて、普段ではファンの方と氷の上で交流する機会はあまりないので、貴重な機会になりましたし、ぼくもスケートのラストシーズンというところで、改めてスケート楽しいなとしっかり感じることができたので、このイベントに参加できてよかったなと思いました。
大島 ぼくも新しいフリーをお披露目させていただいて、ぼく自身花の投げ込みという経験をしたことがなくて、今回投げ込まれたのが初めてで、目で見える形でこれだけ応援していただいて、ぼくの演技をいいと思った方がお花を投げてくれて、直接的な愛だったり応援する気持ちを受け取ることができましたし、そういった意味ではこのフリー、来シーズンに向けて自信の持てる形でお披露目になったかなと思います。グループナンバーも、ぼくたちが普段作る側に回ることはなかなかないなかで、ぼくたちが案を出しながら、グループナンバーを作り上げていく時間は、いままで体験したことのない貴重な経験ですし、それが滑っている側としても去年よりレベルアップしたと思えたので、製作する側、見られ方としても自分たちのなかでは成長を感じられたと思います。教室は、間近で普段応援してくださる皆様と氷で交流する機械がいただけて、ぼくたちにとってもいい経験ですし、こういう機会があることで、見るだけじゃなくて滑る楽しさも知ってもらって、どんどんスケートの楽しみ方が広がるといいなと思います。
―― 友野選手がスケートを指導するときにとくに伝えたいことは。
友野 自分の感覚ややってきたことを言語化して伝えるのは本当に難しいと毎回思うんですけど、ぼくが言っていることはいろんな先生方から教えていただいたことを伝えていて、プラス自分ががんばってきたことで気づけたことを伝える。少しでも言葉で伝わって、感じるものがあればなと思います。結構ぼくはマニアックな指導をしていたかなと思いますけれども、いちばんはスケートに触れて、楽しんでもらえたらということだったので、そこは達成できたんじゃないかと思いますし、みんな技を見せたり、盛り上がって楽しいスケート教室になったんじゃないかなと思います。
―― 三宅選手の「In the Garden of Souls」といえば高橋大輔さんがかつて使用した曲ですが、選曲に込めた思いは。
三宅 今シーズン、ミーシャ・ジー先生にもこの曲を滑りたいと伝えさせてもらって、曲を選曲するときに、いちばん自分が滑りたい曲ってなんだろう、といろんな方のプログラムを見ていくかなかで、やっぱり高橋大輔さんに憧れてスケートを始めて、いちばん難しい、自分にとって挑戦になるものはなんだろうと思ったときに、「In the Garden of Souls」をやってみたいと心の底から思ったので、この曲を選曲させていただいて、今回滑らせていただいても、高橋大輔さんにリスペクトはこめているんですけど、ミーシャ先生にも言われたんですが、ぼくはぼくの良さを出して、「In the Garden of Souls」を完成させていくのが大事だと感じているので、すごいプレッシャーもありますし、ステップの振付も自分が苦手にしている動きが多いので、なかなか難しいところもあるんですけど、自分の覚悟の現れだと思ってもらえたらいいのかなと思います。
―― 大島選手の「フットルース」の選曲については。
大島 ぼくは滑りたいものや自分の案はないところからスタートして、今回ミーシャ先生にお願いして、曲もなかなか決まらずに先生が案を出してくれたりぼくが案を出したりと、すごい長いあいだ曲について話していたんですけど、行き詰っていた時に父親(大島淳コーチ)に相談したら、父親が「フットルース」が大好きで、父親世代の方はみんな「フットルース」が好きだと。これがいいという感じだったので、ならぼくはこれで滑ろうと決めて、去年はSP、フリーともに、SPは村元哉中さんで、フリーは父親が使っていた音楽ということで、やったことのない自分にチャレンジというシーズンだったんですけど、今年は“らしさ全開”といいますか、自分がやりたいこと、等身大の自分の演技をできればいいなと思っているので、気持ちよく、そしてお客さんにどう楽しんでいただけるか、自分の良さを伝えるにはどうすればいいか、というところで、この選曲や編曲は自分もミーシャ先生と話しながら決めていって、今回おきゃくさんに披露して、盛り上がっていただける部分とか、メリハリがついたプログラムかなと思うので、これから「らしさ」を磨いていけるよう、「フットルース」という曲が自分のものにできるように、これからがんばっていきたいなと思います。
―― 木科選手は氷上でも「ラストシーズン」と話されていましたが、改めてキャリアを振り返り、どんな思いをもって来シーズンに臨みたいかを教えてください。
木科 今日も氷上でファンの皆様の前で自分の口で「引退する」と言ったのは恐らく初めてかなと思うのですが、これまでのフィギュア人生は、ノービスのころから(全日本)ノービスの表彰台に上がったり、国際大会を経験させていただいたり、最近ではいい結果を日本で出しても海外に出れないというジュニアの選手も多いなかで、ぼくの時代は本当にたくさん海外試合にも出させていただきましたし、それはフィギュア選手としてだけでなく、世界各地のいろんなところに行って、いろんな景色を見たり、いろんな国の選手と交流を深めるなかで、自分自身プラスになることが大きかったと思うので、いい時期にスケートをやらせてもらえたなと、日本スケート連盟や家族、コーチ、自分に関わってくださった方すべてに感謝をしているので、今シーズンは自分の感謝という気持ちを込めて、ショートもフリーも滑りたいなと思っているので、最後、見ている人に、ぼくのスケートが少しでも記憶に残ってもらえるような演技ができるよう、しっかりと自分がやり切ったと思える演技をして、最高の形で全日本を終えることを目標に、これからがんばっていきたいなと思います。
―― 友野選手は27歳のお誕生日を迎えられましたが、ご感想は。
友野 そうですね……正直自覚がないというか、あっという間で、20歳を過ぎてから……。27歳、エーッて。(笑)いろいろしっかりしないとな思うこともたくさんあるんですけど、でも今年はたくさん祝っていただく機会が多くて。あまり5月ってイベントが少なくて、みなさんに祝っていただく機会はいままでも少なかった。今年はコラントッテさんのイベントや今回のフェスでも、普段応援してくださっているファンのみなさんとか、普段支えていただいているみなさんに祝っていただけて、すごく幸せな誕生日でした。あとはここにいるみんなにも祝ってもらって。光翔や雄登は自分ちにいたので、めちゃくちゃ壮大に祝ってもらって、星南もすぐLINEを送ってくれたり、今年はとくにたくさんの方に祝っていただけて、本当に幸せな27歳の誕生日を迎えました。まだまだ全然、ほかのスポーツを見ていても、30代から伸びてくる選手もたくさんいらっしゃったり、フィギュアスケートはなかなか激しいスポーツではあるんですけど、自分は年々成長できているなと実感しながら、それが自分が続けている意味でもあるんですけど、今年やっぱり自分のなかでそろそろ競技者としての完成形が見えてくるんじゃないかなという段階になんとなく来ているなと感じるので、自分が後悔がないように、自分が好きなスケートを競技のなかで極限まで極めていけるような、そんなシーズンになればいいなと思いますし、それをオリンピックの舞台で、自分の演技を残していけたらいいなと思います。