鍵山優真「PIWはお客さんと距離が近いところが特別」
26日初回公演のあと、演出を務める菅野こうめいさん、PIWチームから吉野晃平さんと中西樹希さん、そしてゲストの荒川静香さん、鍵山優真選手、友野一希選手、樋口新葉選手、中田璃士選手が取材の場に登場し、今シーズンのPIWの魅力や、それぞれの演技について、たっぷりと語ってくれました。
―― 本作品に込められた思いとは。
菅野 「CLASSICS」と「Rocks!」と、ぼく自身も初めてのアイスショーだったので、学習しながら1年、2年とやって、その勉強した成果をみなさんに見ていただこうかなと思ったのが今年(の「The Best」)で、よく勉強したな、よくやったなとほめていただきたいという感じの出来。すごく満足しています。
―― ゲストとのコラボレーションについて。
菅野 PIWチームとゲストスケーターのみなさんは、いままでぼくが見た感じはセパレートした、ショーのなかでも(ゲストパートが)特別な部分みたいな感じがあったんですが、楽屋に行ってみると、みんなすごく仲がいいんです。小さいころからスケートをやっていたり、いろんなショーで知り合いだったり、メンバーとゲストのみなさんはとても仲がいいので、この仲のいいところをみなさんにお見せしたいなと。お客さんにも楽しんでいただきたいなと思って、(ゲストに)今回オープニングとエンディングに参加していただいた。とても素晴らしいオープニングとフィナーレができていますので、楽しみにしていただきたいと思います。
―― 吉野晃平さんは田中刑事さんのプログラムの振付もされたそうですね。
吉野 きっかけは、田中刑事さんは同い年で昔からの仲で、よく振付を頼んでくださるので。今回、こうめいさんピックアップの「ディア・エヴァン・ハンセン」という作品からの1曲なんですけれども、作品作りにおいては、演者の田中さん本人と密にやりとりをして、照明さんと唐川くん(唐川常人/PIWチーム)に助けていただきながら、PIWチームとの融合をコンセプトに、あとはエヴァンとコナーという登場人物のちょっといびつな人間関係と優しい嘘というのをテーマにしてみました。
―― 中西樹希さんはPIW以外のショーにも出演経験がありますが、改めて感じるPIWの魅力はどんなところでしょうか。
中西 いろんなショーに出させていただけて幸運だなと思っているんですが、PIWといえば群舞であったり、(チームの)対応力が魅力の1つ。菅野こうめいさんの演出になってから、さらに1人1人の個性を引き立ててくださる演出に変わり、群舞、そしてソロやデュエットでも滑れる。伝統を残しつつ、どんどん進化していっているというのが、魅力の1つだと思います。
―― 荒川静香さんは長くゲストとしてPIWに出演されていますが、今回はいかがですか。
荒川 ミュージカルとフィギュアスケートはすごく親和性のあるものだと思うので、本来であればミュージカルは長編を1作品演じて世界観を楽しんでいただく作品が多いと思うんですが、フィギュアスケートでは、いろんな作品から曲との親和性があるものをピックアップしながら、(作品の)世界観をしっかり見せつつも、スピード感や役柄だけでなく、(スケーターの)個性をしっかり楽しむ演出を次々と展開していくので、非常にスピーディでメリハリがある。ミュージカルが1つのコンセプトとしてありながらも、いろいろな側面を楽しんでいただける作品になっていると思います。PIWチームの人数が多いだけにすごくスケール感がアップすると思うし、そこにソロでもスケーターが活躍していく構成が、スケーターのやる気やモチベーションにもつながっている。それぞれが責任を持ちながら、チームになったときの一体感がこれだけ出せるショーはなかなかないので、グレードアップしたいま、集大成が、こうめいさんの演出によって見せられる世界観になっていると感じています。いろんなミュージカルからいろんな場面が展開していくので、そのなかにゲストが入るとまたおもしろいテイストで、前半と後半でゲストが変わるとまた個性も変わっていくので、いろいろと楽しんでいただけるゴールデンウィークになると思います。
―― 樋口新葉さんは、ブロードウェイミュージカルのナンバーが並ぶなかで「ドリームガールズ」を滑っていかがでしたか。
樋口 いろんなブロードウェイのミュージカルの曲が繋がっていくなかで、自分が「ドリームガールズ」の曲を滑って、すごく好きなプログラムなので、それをつながりを持ちながら滑れるのがいいなと思っています。
―― 本日2回目の公演ではまた違うナンバーを滑るんですよね?
樋口 そうですね。「ライオン・キング」を滑ろうかなと思っていて、それもミュージカルにもなっている演目で、自分がもう1つ好きなプログラムなので、思い切り滑りながらミュージカルのつながりを途切れさせないようにできたらいいなと思っています。
―― 中田璃士さんは、PIWのBROADWAY三部作すべてにご出演されていますが、今回はいかがですか。
中田 今回は(前2作と)少し違うところもたくさんあって、作品もさっき見ていてすごかったので、お客さんにも絶対楽しんでもらえると思いました。
―― ご自身のナンバーについて。
中田 今回は、エキシビ(「Take Me To Church」)とショートを滑るんですけど、エキシビションは苦しい感情を表現して、フラメンコでは……ノリのいい滑りを――
菅野 「情熱」とか言うんだよ。
一同 (笑)
中田 勢い、で。
―― 友野一希さんは数々のアイスショーにも出演されていますが、PIWの他のショーと違う魅力は?
友野 今回、PIWは2年ぶりに出させていただいたんですけど、自分は(PIWの)大ファンなので、見られる分は全部見ているぐらい毎年本当に楽しみにしています。いろんなショーに出たからこそわかる、群舞でのチームの一体感だったり、さらにミュージカル(BROADWAYシリーズ)になってからそれぞれのスケーターの個性にスポットが当たるような演技も多かったり、ゲストのトップスケーターのみなさんも楽しめて、初めて見るお客さんも、スケートが大好きなスケートファンのみなさんも全員が本当に楽しめるアイスショーになっているかなと思います。今回また、PIWに出られて、自分自身も出演しながら楽しめて、残りの公演も自分もいい演技をして、さらにチームのみなさんの演技も楽しみたいなと思います。
―― 鍵山優真さんは、コーチであるお父さまの正和さんもPIWにご出演されていて、親子2代で出演されていることも含めて、鍵山さんにとってのPIWの魅力は?
鍵山 父が出演していたPIWの素晴らしい舞台で、ぼくも本当にありがたいことに2021年くらいから毎年出ているんですけれども、まずPIWチームのみなさんの演目を見るのがすごく楽しくて。自分のソロもシーズン終わりの締めくくりだったりとか、新しいプログラムだったりで、お客さんとの距離がとくに近いと感じているので、そういうところを楽しみながら見られるのが、ぼくのなかでは特別な舞台に思っています。
―― 荒川さんは、これからオリンピックシーズンの競技の解説などもされると思いますが、今回ゲストの選手たちの印象を一言ずつ聞かせてください。まずは中田さんについて。
荒川 璃士くんは、ショーでエンターテインメント性を学び、それを競技に活かして、そこにまた高難度の技を落とし込み――と、めまぐるしく成長しているのを感じるので、成長を止めずに、いい循環が進んで成長していってほしいなと思っています。
―― 友野さんについて。
荒川 限りなくプロに近いエンターテイナーであって競技者。いま本当に経験も、技術も、表現も、すべてが高いところにあると思う。おそらく次のオリンピックシーズンが集大成に近くなっていくことを考えても、すべてのエネルギーを注ぎ込めるようにオフの時間も充実させていってほしいです。
―― 鍵山さんについて。
荒川 オリンピックのメダリスト、世界のトップスケーターで、向かう先は決まっていると思います。お父さまとのやりとりもあると思いますし、ご自身のオリンピックの先の夢もあると思いますから、まだまだ可能性がある鍵山くん。次のシーズンも通過点というくらいの気持ちで向かっていって、いい軌道に乗せてがんばってほしいなと思います。年々、表現面の魅力、色気が引き立つプログラムを滑っているので、オリンピックシーズンに勝負するプログラムがどんなものになるかも楽しみにしています。
―― 樋口さんについて。
荒川 オリンピックで団体戦のメダルも獲って、世界選手権のメダルも獲って、競技者としても高みに登っているなかで、魅せるとなったらグッと人を引き込む力が強い選手。休養から復活してきてから、スケートに対する視野もすごく変わってきたんじゃないかなと感じる。スケーターとしても、競技者としても魅力的な魅せ方で、余裕を持って滑っているのを感じます。みんな、怪我なく満足いくような過ごし方をして、いけるだけいってほしいなと思います。
―― ゲストを代表して、鍵山さんから新シーズンへの意気込みを。
鍵山 2025年のシーズンは、あと10ヵ月くらいでオリンピックが始まる。中田選手は来シーズンもジュニアですけれども、璃士くんには璃士くんの目標があって、それに突き進んでいきますし、ぼくたちもオリンピックに向けて、でもオリンピックだけじゃなくて、それ以外の試合もすごく大事になってきたり、1つ1つの試合がオリンピックに繋がっていくと思うので、過程を大事にしながら自分たちの目標に向けて突き進んでいけたらいいのかなと思います。
―― これからショーに来るお客さまへのメッセージをお願いします。
菅野 PIWをプロデュースするようになって、スケートの練習を自分自身も始めたんですけれども、3年目でちょっと滑れるようになって、今年は鍵山くんや、後半に出てくる佐藤駿くんの活躍のおかげで、オリンピックに3枠あるというので、いよいよぼくの出番が。
スケーター一同 ……。
菅野 笑っていいんですよ?(笑)ぼくはショーに出ませんけれども、後半もここにいないみなさんも出ていらっしゃってますます盛り上がると思います。ゴールデンウィークはぜひアイススケート、新横浜に来ていただけるようにお願いしたいと思います。
荒川 PIWチームもシンクロのスケートを見せながらも、個々が名前とスケートで認識されるぐらいの演出だと思うので、ミュージカルのファンも、スケートのファンも、そして初めてスケートに興味を持ってくださった方にも、またもう1回行きたいと思っていただけるような世界観になるよう、みんなで力を注いでいきたいと思います。ぜひ1人でも多くの方にスケートの世界へ足を運んでいただいて、また次にスケートを楽しみにするような場にしていただけたら。私たちも真心をこめて作っていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
友野一希「新しいSPを自分の代表作にできるように」
―― (記者の質疑で友野選手へ)プログラムに込めた想いやテーマは。
友野 振付はシェイリーン・ボーンさんで、曲も送っていただいて、いろいろ聴いたなかで、本当に迷ったんですけど、新しい要素もありつつ、日本人スケーターのなかで、SPでいちばん存在感を出せるような、そんなプログラム作りをしたいと考えていて。自分にしかできない、自分の魅力がつまった、さらに技術が点数にしっかりつながるようなバランスのとれた、自分の代表作となるようなショートプログラムにしたいという思いがあったので、すごくいいプログラムを振付けていただけたなと思います。このプログラムを自分のなかで代表作にできるように、フリーもそうですけど、まずはPIWから1つ1つしっかりと気持ちをこめて滑っていきたいなと思います。
―― 新プログラムを4月のショーからいち早く披露された狙いは?
友野 間違いなく大切なシーズンになってきますし、自分のなかですべてを懸けて臨みたいと思うシーズンなので、早い段階から準備を、ショートもフリーも振付を。準備が(早くから)できるシーズンだったので、しっかり準備をして、自分の気持ちを次のシーズンに向けられるように、今回のPIWでまずはショートプログラムをやっています。ぼくはシーズンのスタートが遅れたりすることが多いので、そういったことがないように、しっかり照準をグランプリシリーズから合わせられるように、どんどん競技プログラムをこのショーで披露してしっかり体を動かしていこうという気持ちです。
―― 片手側転が入っていましたが。
友野 シェイリーンさんの振付は、「これできる?」「あれできる?」みたいな感じで、いろんなパターンを作っていって気づいたらできているという感じが多いんですけど、いろんな動きをやっていくなかで「側転できる?」と。正直、最初は全然できなくて、いまもまだちょっと脚が伸び切っていなかったり、演技の後半でかなり脚にきているところなので、若干怖い部分もあるんですけど。ぼくにできる動きを全部つめこんだみたいなプログラムで、側転もその1つで、「できるんだったら入れちゃおうぜ」みたいな感じで、けっこういいところで入れてもらったんですけど、かなり練習しないと。入れたことがなかったので、滑る以外の要素というか、ちょっとアクロバティックな要素も入っている分、魅力があるだろうし、もうちょっときれいにできたらなと、公演を通して成長できたらと思います。
―― 菅野さんが田中刑事さんの「For Forever」を選曲されたとのことなのですが、選曲理由を教えてください。
菅野 前のシリーズ(「Rocks!」)で刑事くんには「オペラ座の怪人」を踊っていただいて、最後の公演で「来年は何をやろうか」とぼくが持ちかけたら、ミュージカルやりたいですと言ってくれたんです。それで、何曲かちょっと新しめのブロードウェイミュージカルのベルティングソングのベスト6くらいをぼくが選んでお渡しして、そのなかから刑事くんがあの曲を選んでくださった。すごく大好きな曲だったので、セレクトの1つを刑事くんが選んだというのが経緯です。