日本オリンピック委員会(JOC)主催の「2025-2028年TEAM JAPANシンボルアスリート・ネクストシンボルアスリート認定式」が4月21日、都内で行われました。シンボルアスリートは、実力、知名度、人格などを総合的に評価し、JOCが唯一無二のシンボル的存在として認定するトップアスリート。2005年にスタートし、フィギュアスケートでは荒川静香、村主章枝、安藤美姫、高橋大輔、浅田真央、羽生結弦、宇野昌磨、宮原知子が務めてきました。今回新たに、シンボルアスリートに坂本花織が認定され、次世代を担う若手を認定するネクストシンボルアスリートには、島田麻央が認定されました。認定式と、島田も登壇したアスリートの素顔がうかがえるスペシャルトークの模様をレポートします。
坂本花織、シンボルアスリートに新たに就任
シンボルアスリートには、前回のタームまでは宇野昌磨が務めていたフィギュアスケート界から、坂本花織が新規で認定された。ほかのスポーツ競技からは、北口榛花(陸上競技/新規)、渡部暁斗(ノルディック複合)、橋本大輝(体操競技)、藤波朱理(レスリング/新規)、見延和靖(フェンシング)、阿部一二三(柔道)、阿部詩(柔道)、上野由岐子(ソフトボール)、髙木美帆(スピードスケート)が認定された(阿部詩、髙木は欠席)。
またネクストシンボルアスリートには、新規で認定された島田麻央のほか、栁田大輝(陸上競技)、玉井陸斗(飛込/新規)、一戸くる実(スキージャンプ/新規)、谷地宙(ノルディック複合/新規)、上野真歩(ホッケー/新規)、角皆友晴(体操競技/新規)、森重航(スピードスケート)、伊藤麻琴(アイスホッケー)、小野正之助(レスリング/新規)、松島輝空(卓球/新規)、新井道大(柔道/新規)、宮崎友花(バドミントン/新規)、野畑美咲(ライフル射撃/新規)が認定された(上野、伊藤、小野、宮崎、野畑は欠席)。
主催者挨拶として、JOC副会長の三屋裕子氏の挨拶に続き、同常務理事の星香里氏が概要説明を行い、選手たちが登壇して認定式が行われた。シンボルアスリートは、チームジャパンの中核を担うと同時に、オリンピズムが浸透した社会の実現に向けて、JOCの各種事業や、スポーツを通じた社会課題の解決にもJOCとともに取り組む。
何人かの選手が認定にあたっての思いを語るなかで、橋本は「体操は日本のお家芸と言われ、昔から注目され、オリンピックでも先輩方のおかげでいろいろ引き継いでこられて、いまの成果があると思っています。体操日本をさらにレベル高くしていくために、団体総合で連覇すること、ロサンゼルス・オリンピックで個人総合金メダルを獲ることが、体操王国日本を続けることになると思うので、それができるように体操界に還元しつつ、自分自身の演技でも何かひとつみなさんの心を動かすことができればと思っています」と志高いコメントを述べた。
クロストークに島田麻央が登壇、笑いいっぱいのトークに
認定式のあと、スペシャルコンテンツとして、シンボルアスリートとネクストシンボルアスリートのクロストークが行われた。北口榛花、渡部暁斗、阿部一二三に、若手の玉井陸斗、島田麻央が競技に向き合う姿勢について質問するという内容。初々しい玉井、島田からの質問と、それに答える経験豊富な北口、渡部、阿部の回答は、示唆と笑いに富んだトークとなった。
玉井 練習と試合で、何を意識して、何を大事にして競技に取り組んでいますか。
渡部 練習も試合もですけれど、つねに自然体でいることを意識しています。とくにスキー競技は天候に左右されやすく、自分のパフォーマンスが出したくても天気に左右されて出せないとか、試合自体がないとかもありますし、つねに流れのなかで自分を見失わないためには、自然体でいること、自分が何を大切にしているかを考え続けるようにしています。
玉井 自分自身も、試合と練習でいつも通りを出せるように意識しているので、同じように自分を見失わないようにすることを意識したいなと思います。
北口 私は意外とたくさん物事を考えてしまうタイプなので、練習では10個くらい考えていることを、試合では2、3個にできるように心がけて練習にも試合にも臨んでいます。減らせるように、練習ではいっぱい考えて、課題を少なくした状態で臨めるように努力しています。
島田 私も練習では結構悩んで、こうしたらいいかとか思うことが結構あるので、私も練習ではしっかり考えて身体に染み込ませて、試合ではあまり意識しなくても、自然にできるように、これからしていきたいなと思います。
阿部一二三 ぼくは練習では課題をもって取り組むことを意識していて、まあでも、悔しい思いをしたときのことを思い出して練習することが多いかなと感じています。絶対負けたくないんだという気持ちで練習するのを心がけるようにしています。
渡部 シンボルアスリートですけど、すごく勉強になる。(笑)強い気持ちを持つことは大切だと思いますし、負けたときの悔しさや強い思いを持つことは意識して次のオリンピックに臨みたいなと思いました。
阿部 (周りの声にプレッシャーを感じることは? という司会の質問に)たくさんの人がぼくの試合を見てくれるなかで、たぶん負けないだろう、絶対に勝つだろうという目線で見られている。それはもう慣れというか、慣れるしかないなって。正直、それと正面から向き合ってすべて感じてしまうと、すごいプレッシャーになってしまうので、あまり意識したり、感じたりしないようにしている。しすぎると体が硬くなってしまったりするので。
玉井 いますごくプレッシャーかかっているんですけど、あの、皆さんの言葉をまとめると(会場笑)、やっぱり平常心でいることが大事なんだと渡部選手と阿部選手のお話を聞いてすごく思ったのと、あとは、課題はどの競技でもどの選手でもあると思うんですけど、それをなくしていけるように、練習で経験しまくって、慣れる、染み込ませるのが、自分の競技を向上させていくうえですごく大事なんだなと改めて感じました。
島田 オリンピックは4年に1度の夢の舞台だと思っていて、冬季競技は2月ごろ、夏季競技は8月ごろにピークをもっていくことが重要だと思いますが、いま取り組んでいるピーキング法があれば教えてください。
北口 陸上は選手によって、試合の数を制限してピーキングしていくことが多いんですけど、私は試合がいちばん課題を見つける場所だと思っていて、試合数をある程度踏んで、出た課題に練習で取り組んでということを積み重ねることによって、試合の数が増えていきながら8月に行く(ようにしています)。まだばっちりピークが合ったという感覚がいままでないので、何とも言えないんですけど、自分はそういうふうにやるつもりです。なんか、ピークはいつなんだろうと思いながら試合をしています。(笑)
島田 ピークをもって行けなくても、いい結果が出せるように、つねに自分がいつも通りな競技結果が出せるようにしたいなと思います。
阿部 柔道の場合、年間3~4大会くらいなんですけど、減量で体重を落とさないといけないので、その2ヵ月が大会に向けてのピーキングというか、コンディションを合わせにいっている感じです。東京オリンピックくらいから、その2ヵ月が定着してきた。減量がないスポーツはわからないんですけど、その期間に自分のピーキングをもってこられるかを試しながらやっていけばいいのかなと。
玉井 飛び込みは水泳競技で、プラス感覚競技なので、年中動いていないといけなくて、あまり期間を決めてピーキングをすることがなかったので、というか(自分でも)悩んでいたことなので、期間を決め、区切りをつけて何かを制限したり、試合を意識していけたらいいなと思います。
渡部 これからよくわからない話をするんですけど(笑)、プラスマイナスゼロ理論というのがありまして。人生の流れというのは、プラスマイナスゼロになっている。オリンピックのときにいい運がほしい、いい流れがほしいというとき、マイナスを貯めていくんですよ。たとえば自分がどうしてこんなことをやらなければならないんだと思うことを敢えてやりに行くとか、嫌がらずにやるとか、自分の人生にとってはもしかしたらマイナスかもしれないことを貯めておく。そうすると本当に、実際に自分が発揮したいところでいい流れが来るんですよね。(オリンピック)3大会、そういうことを続けてきて、まあ金メダルまでは届いていないんですけど、メダルは獲れると思います! 逆にいいことが起こったときは、もう自分でマイナスを貯めにいく。そのくらいの気持ちでやっていると、自分がメダルを獲れるんじゃないかという流れになってきたりすることはあると思う。オリンピックとか、自分が目指しているポイントへの流れの作り方は、結構あるんじゃないかと思います。
北口 私も試合前の最後の投擲練習は結構悪いことのほうが多くて、結構それでへこむんですよ。そのプラスマイナスゼロ理論で、最後が悪くてもなるべくへこまないように試合に臨めたらいいなと思います。
渡部 競技って、たぶん自分でやりたいことなんだと思うんです。だから自分の競技に関係ないこと、人の役に立つとか、それをマイナスと言ってはいけないんですけど、自分の時間を敢えて人のために使うということも必要なのかなと。たとえば、オリンピックの前の試合とかで、追い風をもらって飛距離が伸びず、競技結果が出なかったときに、「もしかしたら流れが来ているかもしれない」と捉えると、逆にプラスとして捉えられるようになる。そうすると、オリンピックの本番ではちゃんと(距離が出る)向かい風が来たりということがあるんです。
島田 私も試合の日の朝の練習がすごく悪くて、でもそういうときは、試合のミスが出るところはもうミスし切ったと思って本番でやると、いいときが多いです。このお話を聞いて、そこは続けたいなと思いました。あとは、食事制限とかは一定の期間しか決めていなかったので、もっといろいろな期間を設けてみて、いちばんいい期間を探して、そしてピークをもって行けなくても、いつも通り、練習通りの演技ができるようにしたいなと思いました(素晴らしいまとめに会場から拍手)
坂本花織のイベント終了後の囲み取材コメント
シンボルアスリートに選んでいただき、本当に光栄です。いままでフィギュアスケートのシンボルアスリートといえば、私のなかでは宇野昌磨さんだったので、それが私に代わるということで、本当に責任重大ですし、フィギュアスケートもだいぶ世代が変わってきて、いろいろなカラーが見え始めていると思うので、ジュニアもシニアも個性が強い選手が出てくるなか、それを引っ張っていけるような存在になれたらなと思っています。オリンピック自体は、あと1年というより、もうあと10ヵ月、最終選考の全日本まであと8ヵ月なので、限られた期間しかないので、本当に1試合1試合大事にして、その積み重ねをしっかり生かして、最終選考でパーフェクトな演技をして、そこで勝ち取って、いままでの過去2回(のオリンピック)の想いも含めて、オリンピックで最高の結果を得られたらいいなと思います。精いっぱい頑張りたいなと思っています。
