2025年2月23日
アイスストーリー第3弾、その至高のパフォーマンス

羽生結弦「Echoes of Life」、最終公演を迎える

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羽生結弦さんの製作総指揮で贈る「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOUR」。世界初演となった12月のさいたま公演、1月の広島公演を経て、2月7日より千葉・LaLa arena TOKYO-BAYで公演が開催され、2月9日、最終公演を迎えました。

全7公演を走りきり、瞳を潤ませた氷上でのあいさつで、「ぼくの頭のなか、気持ち、心臓のなか、魂、そんなものを全て詰め込んだものです。それを本当に短い期間で、普通はありえない速度で濃密な時間をかけて作ってくださいました演出チーム、映像チーム、氷、照明、カメラ、美術、すべてのスタッフに大きな拍手を。ご覧になってくださる方々、生み出させてくださり、そして見守ってくださり、本当にありがとうございました。苦しいこともたくさんあるし、人生綺麗ごとばっかりじゃないことは、みなさんがいちばんよくわかっていらっしゃると思います。それでも、これからも『Echoes』がみなさんの人生にとって、生きるきっかけになったらうれしいなと思っています」と感謝を述べた羽生さん。アーティストとしてさらに歩みを進めた彼の終演後の言葉を交えながら、作品を振り返ります。

自身の魂を昇華させたパフォーマンス

「とにかく頑張ったなということと、このアイスストーリーというものに関わってくださっている方々の規模が、本当に類を見ないくらい多くの方々が関わってくださっていて。ぼくのためにどれだけの方が動いてくれているのかということに対して、感謝の気持ちでいっぱいです」

羽生結弦が製作総指揮を務めるICE STORYの第3作となる「Echoes of Life」は、SF的な物語として立ち現れた。リンクの周囲には灰を浴びた残骸が散り、スクリーンに描かれるのは破壊された廃墟が林立する光景。そこに「選ばれし者」として、特別な能力を授けられて生を享ける「VGH-257 Nova(ノヴァ)」という名の主人公を、羽生が演じた。テーマとして掲げられたのは生命倫理。ディストピア的な荒廃した世界のイメージから出発し、命の在り方、生きることの意味を探っていく。

Novaが最初に氷に滑り出る「First Pulse」に始まり、清冽な「産声~めぐり」、毅然とした誇り高さを映す「Utai Ⅳ~Reawakening」、自身を知り、世界を知った主人公が戦いに臨む「Mass Destruction -Reload-」。さまざまな感情を溶かし込んだ渾身のパフォーマンスと、奔流のような言葉と映像によって描かれるストーリーラインの両輪が、観客を先へ、先へと運ぶ。

Novaに与えられた特別な能力とは、「音」を司る力、そして音を用いて再生させる力だ。世界初演の際、「哲学が音として身体に入ってくる、その哲学が音楽になってプログラムが出来上がるみたいなことを、発想を飛ばして書いていった」と話していた羽生。その真骨頂が、ピアノのクラシック曲のコレクションを連ね、その最後に「『運命』の言葉の『音』を奏でて」と促されて滑る「バラード第1番」まで、10分を超えて一気に紡ぐパートだろう。ピアニストで友人の清塚信也と対話を重ね、振付をジェフリー・バトルに託して作り上げた。「バラード第1番」はもともと彼の代名詞のひとつであるショートプログラムだが、最終公演では、針の穴に糸を通していくような精確さはそのままに、より自由に、自身の魂を昇華させたパフォーマンスへとフェーズが進化していた。

「最初からかなり苦戦して、旧採点ルールのなかのショートプログラムで、後半に2回、トリプルアクセルと4回転+3回転というジャンプを跳ぶという難しさを改めて感じました。フリーとはまた違う緊張感。そしてフリーとは違って、回復する余地がないのがショートプログラムの特徴で、非常にいろんなものが詰まっているからこそ、フリーよりも難しいんだということを、今回ツアーを通して改めて感じました。で、その難しいものを、ピアノまでのあいだに4曲ですかね、4曲やっていて、ああ辛いなと思いながら出ていく難しさと、あとはぼくの希望だったんですけど照明付きで、そしてまた会場によってリンクサイズが変わるということもあって、非常に挑戦は難しかったんですが、氷の職人さんも含めてみなさんが一生懸命やってくださったおかげで、なんとかできました」

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