2024年11月21日
ファンタジー・オン・アイスの衣装などを手がける原孟俊さんにインタビュー!

コスチューム・ワールド~第2回・原孟俊~

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フィギュアスケートの衣装デザイナーの方々にお話をうかがう連載「コスチューム・ワールド」。「ワールド・フィギュアスケート 98号」掲載の第2回はファンタジー・オン・アイスなどのアイスショーから、競技用衣装までを手掛ける原孟俊さんです。これまで手掛けてきた衣装の裏話や、衣装製作における独自のプロセスなどをお聞きしました。本誌では、アイスショー「羽生結弦 notte stellata」でのお話や、2022-2023シーズンに手掛けた村元哉中&高橋大輔組や坂本花織選手、三浦佳生選手、渡辺倫果選手の競技用衣装の製作秘話をお届けしています。本記事では、本誌に載せきれなかったエピソードをご紹介!

最初期に作った衣装

ーー 競技用衣装で最初に携わったものは、無良崇人さんの「黒い瞳」の衣装だったそうですね。

2015年、全日本選手権での「黒い瞳」の演技をする無良崇人©Shinji Masakawa

原 そうなんですよね。じつは、無良さんは今年3月の「notte stellata」のフィナーレでも着ていらっしゃいました。ぼくは衣装チームとして「notte stellata」の現場に入っていたのですが、そのフィナーレで久しぶりに「黒い瞳」の衣装に再会してびっくりしました。浅田真央さんの「サンクスツアー」に無良さんが出ていらしたことで、体型が現役時代並みに戻ったらしく、「全然いまでも着られます」とおっしゃっていました。ぼくの衣装製作のキャリアは、高橋大輔さん、無良崇人さん、鈴木明子さんといった方々からスタートしたんです。

ーー ファンタジー・オン・アイスの衣装製作には、もう何年も携わっていらっしゃいますね。

ファンタジー・オン・アイスでは、オープニングやフィナーレの衣装も担当©Kiyoshi Sakamoto

 まだデザインをしはじめる前、アドバイザーであった2015年、2016年のファンタジーにも関わっています。アーティストさんや選曲を踏まえて、「こういう方向の衣装がいいと思います」とアドバイスをする立場でした。ステファン・ランビエルさんはこのときにも出演されていて、「個人的にも衣装を作ってもらえたら」というお話が来ました。その後に何度かやりとりをさせていただき、スイスの「アート・オン・アイス」の大トリの衣装を依頼されました。「もうぼく自身デザインに関わらないと、これは作れないですね」という話になり、これがデザインの仕事のスタートとなりました。

notte stellataの衣装デザインに込めたこと

ーー 3月に行われたアイスショー「羽生結弦 notte stellata」にも参加されていらっしゃいましたが、いかがでしたか。

 羽生結弦さんと内村航平さんのコラボレーションプログラムの衣装を担当しました。お2人とも、上腕二頭筋がこの世のものとは思えないぐらい美しいんです。それを特徴的に、品よく見せるためにはどうするかということをすごく考えました。内村さんのほうはアームバンドなどをつけて男性的な筋肉の見せ方にして、羽生さんの場合はスリーブの長さで肌の見せ方をコントロールすることで、デザインの考え方としてはフェミニンに。そういったところでフィギュアスケートらしさと体操らしさの区分けを表現しました。また、このショーの根底にある震災へのレクイエム的なニュアンスも考えましたね。未曽有の大災害などは時が経っていくと、その土地の儀式みたいなものとして残っていきます。その出来事を忘れないために、神事として鎮魂の気持ちを含めてセレモニーを行う。そんなイメージを思い描いて、それにふさわしい衣装になるようにデザインを考えました。

アイスダンスの衣装への挑戦

ーー シングルの選手だけでなく、アイスダンスの衣装も、競技会、アイスショー問わず製作されていますね。

2021年、NHK杯にてリズムダンス「Soran Bushi/Koto」を力強く滑る村元哉中&高橋大輔©Yazuka Wada

 アイスダンスの衣装をやりたいなとはすごく思っていました。ファンタジー・オン・アイスに出演されるアイスダンスのスケーターは、ヴァーチュー&モイア組、パパダキス&シゼロン組、カッペリーニ&ラノッテ組といったハイレベルな方々ばかりです。彼らのパフォーマンスというのを何年も目の当たりにしていて、シングルのスケーターたちが持っているパフォーマンスや衣装の面白さとは、目指しているところが違うんだなと感じていました。アイスダンスの衣装に関われたら面白いなとぼく自身が思っていたときに、村元哉中&高橋大輔組のRD「Soran Bushi/Koto」と、エキシビションナンバー「You are the reason」の高橋さんの衣装製作のお話をいただきました。

デザイン画に比重を置かない衣装製作

ーー 原さんの場合、衣装の具体的なデザインはどのように作り上げていくのでしょうか。

原 作り出すもの(実際の衣装)がすべてなので、デザイン画を描くことにあまり時間はかけません。デザイン画をきちんと仕上げて作られる方もいて、それはそれで素晴らしいなと思うのですが、そこにあまり比重を置かない作り方というのもあります。ぼくが作るときには、ブランドのコレクションの写真だったり、映画や音楽関係の資料を膨大に集めます。そこから掘り下げていって、マテリアルを切ったり貼ったりしてデザインを組み上げていきます。


「ワールド・フィギュアスケート 98号」では、村元哉中&高橋大輔組、坂本花織選手、三浦佳生選手、渡辺倫果選手の衣装の製作秘話や、羽生結弦さんの「notte stellata」の衣装についてのお話を詳しく掲載しています。どうぞ本誌もお楽しみください。

プロフィール
原孟俊 (はら・たけとし)  神奈川県出身。10代の頃からプロのギタリストとしての活動をはじめ、アーティストのレコーディングやライブに参加する。2015年頃からフィギュアスケートの衣装製作にアドバイザーとして携わり、2016年からはデザイナーとしての活動も開始。2021-2022シーズンの村元哉中&高橋大輔組の「Soran bushi/Koto」の衣装は2023年ISUアワードのコスチューム部門にもノミネートされる。競技衣装のほか、ファンタジー・オン・アイスや羽生結弦notte stellataなど、アイスショーの衣装も手掛けている。Instagram:@taketoshihara
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