2025年4月28日
トップスケーターの“いま”に迫ります

INTERVIEW 友野一希①「自分への理解度が上がった」

spot_img
- AD -

いまがいちばん巧いと思えているのが大きい

―― 技術的なことになってしまうかもしれませんが、今季はシーズン序盤に怪我があり、4回転の練習に取り組めないという状況がありました。そのことによって、逆に身体の動きを強く感じたり、イメージがしっかり持てるようになったり、そういう練習を離れたからこその変化はありましたか。

「それはあります。怪我をするというのは、結局、自分の弱いところを理解するということ。それを改善する術も身につけることができた。股関節まわりや腸腰筋のトレーニングをしっかり増やして、疲労が溜まらないように意識して取り組んだり。あとは、ジャンプに対する考え方が、怪我の期間で変わったなと思います。より明確に、ただがむしゃらに『なんでできないんだろう』と思いながらやるんじゃなくて、より細かくフォームについても考えてやるようになった。怪我を経て、なんかすごく効率よく練習ができるようになったかなと思います。たぶん、効率効率ばかりの練習も自信にならなかったりするので、気持ち的なパッションもしっかり入れつつ、バランス感を考えながらって感じですね。調子悪いときの練習も変わってきたし、本当に自分への理解度がすごく上がった」

―― ジャンプも、もちろん試合で着氷する・しないというのはまた別の次元の話として、ジャンプ自体の精度や鋭さという部分がとても向上しているように思われるのですが。

「ジャンプに関しては、すごく無駄がなくなってきたんですよ。前の映像を見ると、3年前とかのほうがもっとダイナミックな跳び方をしていると思うんですけど、そこから粗がどんどん削れてきて、無駄がなくなってきた。ジャンプが洗練されてきたと思います。決まったときは、いまのほうが全然いいジャンプを跳んでいるという自信がある。そういう意味でも、やっぱり“いまがいちばん巧い”と思いながらやれているのが大きいんじゃないかな。結構ぼくは毎年フォームが変わるんですけど、年を追うごとにより無駄のない洗練されたジャンプが跳べるようになったんだと思います。それが確率にしっかりつながっていけたらいい。あとは、ジャンプに対する自信だよなって思います。“自分をバグらせていく”じゃないけど、あとはもう本当に、気持ち。自分を信じる力がオリンピックに向けて大切になってくる。そこで結構ブレーキがかかっちゃってる部分もあるので、ここから自分を強くしていくためには、行動から1つ1つ見直して、オリンピックに出るのにふさわしい選手になっていけるような生活を心がけることが大切かなと思います。頑張るだけじゃ多分無理。当たり前なんでね、スケートを頑張るというのは。そうじゃなくて、オリンピックに対して懸ける気持ちを、普段の生活のなかから出していくのが大事になっていくんだろうなと思っているんです。だからこのあと、削るところをしっかり削っていって、もう全部をスケートに懸ける。本当に、最後の1年なので、『これで終わりかもしれない』と思うと、できるんじゃないかなって思います」

―― 「集大成」、「ラストシーズンになるかも」、「大阪での全日本はラストかも」、そういったワードが友野選手から聞こえてくるようになりました。その辺のお話から、次回のインタビューで伺っていければと思います。

(2025年1月および2月に取材)

プロフィール
友野一希(ともの・かずき) 1998年5月15日、大阪・堺生まれ。第一住建グループ所属。幼いころから個性あふれる滑りで頭角を現し、2016年全日本ジュニア選手権優勝。シニアに転じてからはISU選手権やグランプリシリーズをはじめ国内外の大会で存在感を発揮し、四大陸選手権では2022年銀メダル。世界選手権では2018年5位、2022年6位、2023年6位。その競技力と勝負強さ、氷上での圧倒的なパフォーマンスで、「なにわのエンターテイナー」「代打の神様」などの二つ名も知られる。今シーズンは新たにSPでシェイリーン・ボーン・トゥロック、フリーでローリー・ニコルの振付に挑み、新境地を開拓中。同志社大学スポーツ健康科学部卒業。
- AD -

 関連バックナンバー

ワールド・フィギュアスケート No.102

浅田真央MAO RINKオープンにあたっての単独イ...

フィギュアスケート選手名鑑2024-2025シーズンガイド

総勢177人(組)の国内外のフィギュアスケーターを...

関連記事

- AD -

最新記事

error: