2025年1月15日
現役時代から振付を始めて15年。芸術的なスケートファミリー出身のオリンピアン

INTERVIEW ミーシャ・ジー「芸術的にも、戦略的にもサポートします」

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2024年全日本選手権に、プログラムの振付を提供する選手たちをサポートするために来日したミーシャ・ジーさん。現役時代はウズベキスタン代表として国際大会に出場し、観客の心をつかむチャーミングでクリエイティブな選手として知られる存在でした。コリオグラファー(振付師)に転身してからは、それぞれのスケーターの個性やパーソナリティを把握し、動きそのものからオンリーワンの振付を作り上げるスタイルで、多くの選手の成長を助けています。選手たちをどのように手助けしているのか、またコリオグラファーとしてのバックボーンについて、全日本選手権の会場でお話を聞きました。

振付師として選手に最大限のサポートを

―― 今回は全日本選手権に出場する選手たちのサポートで来日されました。今回の全日本はミーシャさんが振付けたプログラムを滑る選手たちが本当に多かったですね。

「ぼくは振付師であるだけでなく、コーチでもあるので、ときには芸術的な視点から、ときには戦略的な観点、競技としての観点から、一緒に仕事をしているスケーターたちをサポートしています。それぞれのチームに敬意をもって接しているので、前に出すぎず、あくまで追加のサポート役としての役割を果たしている。みんながより自信をもって、バランスをとりつつ、落ち着いた気持ちで競技に臨んでくれたなら何よりです」

―― 女子では、住吉りをん選手が昨季に引き続きSPであなたの振付を滑っています。先日住吉選手にインタビューしたのですが、とても内省に富んだお話が印象的でした。

「本当に、りをんはとても分析的で、細部まで気を配るこまやかな人です。2年間一緒にやってくるあいだ、何度もいい意味で驚かせてくれた。遠くにいても、りをんは練習の動画を送ってきてくれるんですよ。それをもとにフィードバックし、どんどん改善していくことができました。あんなにプロフェッショナルな選手は競技全体を見渡してもそうはいない。振付のディテールや小さなトランジションから、感情、テンポ、演技の流れに至るまで、あらゆる面においてとても正確です。今シーズンの彼女は、アスリートとしてさまざまな状況に対処する方法を学んだと思いますし、予想外の状況であってもしっかりと対応するスキルは今年大きく向上したんじゃないかな」

―― どんなところが彼女のパフォーマンスの魅力でしょうか?

「今季のショートプログラムのテーマは、より成熟し、エレガントで美しい姿を見せることでした。昨季のダイナミックな振付から進歩して、今季はより奥深いプログラムを滑ることを選択した。彼女の成果は想像以上でした。成熟したエレガンスと、ジャッジや観客とつながろうとする気持ちが彼女の強みにもなっていると思いますよ。振付けたぼくまで魅了されてしまったくらい。(笑)」

―― 住吉選手には4回転トウを跳ぶパワフルな側面もあります。

「内面はこまやかでも、パフォーマンスは燃えるように強いというコントラストがあるのは、すぐれたアスリートが備えるべき資質のひとつです。ぼくはそれを二元性と呼ぶんだけど、陰と陽、白と黒、水と火といった、相反するもののバランスですよね。そのバランスを取ることも大事で、それぞれが方法を学んでいかなくてはいけない。試合の前におしゃべりをする人、静かにしていたい人、歌を聴くのが好きな人、動画を見る人、自分のパフォーマンスを視覚化する人、いつも変わらない人……。それぞれに異なる方法があって、りをんもそうしたことを学んでいる最中と言えるでしょうね。ぼくは振付師として最大限のサポートをするけど、どの情報を取り入れるかを決めるのは彼女自身です」

―― バレエを練習することを勧めたそうですが、フィギュアスケート選手にとってのバレエの重要性はどんなふうに考えていますか。

「スケーターにとっても、バレエは最も重要な基礎だと思います。姿勢やコントロール、音楽性、自信など、あらゆることを教えてくれる。バレエのレッスンを通して体の動きの基礎を身につけ、自分の体について知識を得ることで、スケートのプログラムを洗練させることができます。次のレベルに行くためには、バレエが必須だとぼくは考えています」

プロフィール
Misha Ge みーしゃ・じー 1991年5月17日、モスクワ生まれ。元ウズベキスタン代表。父がコーチ、母が振付師という両親のもと、幼少からスケートをはじめる。10歳から中国で暮らし、18歳からアメリカに移る。2013年以降は、中国、アメリカ、ロシアを拠点に練習を積んだ。豊かな音楽性と躍動感に満ちたスケーティングが光る屈指のエンターテイナーとして人気を集め、2014年ソチ、2018年平昌と2大会連続でオリンピックに出場。名門・北京ダンスアカデミーなどで振付を学び、現役時代から仲間のスケーターにプログラムを提供。2018年世界選手権を最後に競技を引退し、現在は振付師、コーチとして活躍している。尊敬する高橋大輔、コーチとしてもサポートする友野一希をはじめ、アンバー・グレン、アンドルー・トルガシェフら多くのスケーターに振付を提供。今季は住吉りをん、青木祐奈、三原舞依、中田璃士、三宅星南、イ・ジェクンらに振付けている。
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