「上野の森バレエホリデイ2024」の特別企画として、《Pas de Trois~バレエとフィギュアに捧げる舞踊組曲》が4月27日午後、東京文化会館小ホールで開幕しました。町田樹さんがバレエ公演に初出演する舞台であり、世界的バレエダンサー、上野水香さん(東京バレエ団ゲストプリンシパル)と高岸直樹さん(東京バレエ団元プリンシパル)と共演するスペシャルな公演。ショパン、ドビュッシーをはじめ、美しいピアノ曲とともに3人のエレガントな踊りが披露され、満場の観客からスタンディングオベーションが送られました。
画期的な公演が実現
昨年まで「上野の森バレエホリデイ」の一環で、トークイベントを行ってきた町田樹と上野水香が、「話し尽くしたので、次はいっしょに踊りますか?」と話したことが発端となったという本公演。2人に、町田が9年間師事するバレエの師である高岸が加わって、この日画期的な公演が開催の運びとなった。
上演プログラム(監修・構成:Atelier t.e.r.m、振付:高岸直樹、町田樹)は、3人で踊る“パ・ド・トロワ”の《エオリアンハープ》にはじまり、上野のソロ《楽興の時》、高岸と町田のデュエット《プレリュード》。町田のフィギュアスケート映像《チャーリーに捧ぐ》の特別追加上映を挟んで、町田のスケート映像《別れの曲》、町田のソロ《ノクターン》、高岸のソロ《ノクターン》と続く。そして、ふたたび町田のスケート映像《継ぐ者》、最後を締めくくる上野のソロ《献呈》まで、小ホールのステージで、文字どおり、舞台狭しと3人の優美な踊りがノンストップで展開された。
アンコールでは、町田と高岸が「トロルドハウゲンの婚礼の日」に乗って、客席に降りていくサプライズな演出も。鳴りやまない拍手のなか、最後にあいさつに出てきた3人に、観客は総立ちで喝采を送った。
そのあと、3人がマイクをもって再び登場。町田は、半年以上かけて、公演のために上野と高岸、制作陣と取り組んできたこと、そして観客のみなさんにベストの形で届けられたことに感謝の思いを述べた。今回、3曲のバレエ作品を振付けた町田は、2人に「ソロ作品に関して、踊るうえでの難しさやこだわったポイントがあったら教えてください」と質問を投げかけた。《ノクターン》を踊った高岸は、「町田くんの見本映像をみなさんにぜひお見せしたいんですけど、素晴らしいんですよ。すごくロマンティックで、優雅で、アカデミックで」と教え子を絶賛し、「彼の豊かな情感を大切にし、考えながら踊っていました」と笑顔で話した。また、上野は「《楽興の時》は純粋な明るい少女で、《献呈》は大人の女性で抒情的な表現が含まれている。2つの違うカラーを表現しました」と話し、また大ホールの舞台に比べると、かなりステージが小さいため、とくに《献呈》のような壮大な振付を踊ることが、じつは怖かったと明かしたが、「最終的には音楽と振付の世界に身を浸らせて踊ることが出来たのかと思います。本当に素敵な作品をありがとうございます」と語った。
いっぽう、高岸の振付によるソロ《ノクターン》を踊った町田は、「深夜にスタジオを借りて振りうつしをしてもらったのですが、鳥肌が立つほど素晴らしい作品でした。終電で帰ったのですが、興奮して眠れなくて。そのあと必死に自主練習して映像を送ったら「素晴らしい!」と評価してくださった。でも、次の日のレッスンでは、ミリ単位で一挙手一投足直されました(笑)」とリハーサルでのエピソードを明かし、「いま高岸先生のバレエの哲学に応えられる踊りが出来つつあるのかなと思っています。あと2回心をこめて踊っていきたいと思います」と力を込めた。
町田は、「「上野の森バレエホリデイ」では、ほかにもイベントが目白押しです。このあと大ホールで『白鳥の湖』が開幕します。私たちの踊りでバレエっていいなと思ってくださった方は、そのままぜひ大ホールへ走っていっていただけたら。そして今回スクリーンを使って、バレエとフィギュアをコラボさせる企画も行いましたが、もし私の演技映像をご覧になられて、フィギュアスケートに関心を持たれた方は、新横浜のプリンスアイスワールド公演にも走っていっていただけたら」と笑顔で語った。