4年ぶりのさいたま世界選手権がついに幕を開けました! せっかくやってきたシーズン最大の祭典をいまからもっと楽しむべく、今季WFS編集部員が取材してきたスケーターたちの活躍をご紹介します。今回は、2月の四大陸選手権で1年ぶりに競技会に復帰した中国のジン・ボーヤン選手です。
4回転時代への号砲を鳴らしたボーヤンの4回転ルッツ
2023年2月8日、四大陸選手権の取材で訪れたコロラドスプリングスのワールドアリーナ。会場に入ると、ほとんど真上に跳び上がる、あの4回転ジャンプが目に飛び込んできた。ジン・ボーヤンが帰ってきた! 前日の公式練習から、4回転トウループやトリプルアクセルをテンポよく降り、いくつかジャンプを跳んではブライアン・オーサーとトレイシー・ウィルソンのもとへアドバイスを求めに行く。母国でのオリンピックを終えた彼の、次なる旅が始まっていた。
中国のジン・ボーヤンといえば、4回転ルッツ+3回転トウループを世界で初めて試合で成功させた屈指のジャンパーだ。北京オリンピックでひとつの集大成を迎えた4回転時代。その時代を戦ってきたジャンパーたちが4回転時代に触れるとき、度々「ジン・ボーヤン」の名前が語られた。
羽生結弦の証言
2017年世界選手権メダリスト会見より
「4回転の種類に関して言えば、やっぱりここまで引き上げてきたのは彼なので、間違いなく。彼が4回転ルッツをしっかり跳んで、4回転ルッツとともにプログラムをクリーンにやってくるようになってきたからこそ、みんな『ルッツ跳んでもいいんだ』『ルッツって人間跳べるんだ』と思えるようになってきたと思うんですよ。だからそういった意味では、彼がここまで開拓してきたんだと思う。間違いなく彼がいまの“多種類4回転”というのを作りだしたんじゃないかな」
宇野昌磨の証言
「ワールド・フィギュアスケート」79号 ネイサン・チェンとの対談インタビューより
「きっとボーヤン選手が4回転ルッツを跳ばなかったら、ぼくがフリップをやろうとは思わなかったかもしれない。人って、けっこう気持ちの面が強いと思うんです。最初に誰かがやって『あ、これはできることなんだ』と思ってやってみるのと、『誰も跳べたことない』と思ってやるのと、そういう気持ちはすごく大事。彼があんなに簡単に4回転ルッツを跳んでいるのを見て、励みになりました」
ネイサン・チェンの証言
2017年四大陸選手権メダリスト会見より
「この4回転の大流行を始めたのはボーヤンで、ぼくらがトリプルに苦労しているときに彼はフリーで4本4回転を跳んだりして、ぼくらは『えっ?』となってましたから。ジュニアのころ、それが4回転を練習するモチベーションになって、シニアになった今表れてきているんだと思う」