今季アイスダンス結成1年目の櫛田育良(木下アカデミー)&島田高志郎(木下グループ)組が9月23日、軽井沢風越公園アイスアリーナ(長野県軽井沢町)で行われた第4回クリス・リード杯で競技会デビューを果たしました。女子シングルとの二刀流で競技を続ける高校3年生の櫛田と、昨季限りで男子シングルを卒業した24歳の島田。愛称が“いくこう”に決まり、2030年オリンピック出場を目標に掲げる新カップルは、アップテンポな音楽に乗って、息の合ったリズムダンスを披露しました。
グルーヴ感あふれるクールなリズムダンス
「クリス・リード杯」は、アイスダンス日本代表として、オリンピック3大会(2010年、2014年、2018年)に出場し、2020年に急逝したクリス・リードさんの功績をたたえるとともに、アイスダンスの普及を目的とした大会だ。選手権クラスの演技をはじめ、アイスダンスにおける歴史の長いパターンダンスやまだ歴史の浅いソロの部門なども行われている。クリスさんの姉であるキャシー・リードコーチから指導を受ける“いくこう”の2人にとって、特別な大会でのリズムダンスのお披露目となった。
ジュニアのリズムダンスが終わった10時55分ごろ、2人は氷上に降り立った。8月末のアイスショー「フレンズオンアイス」(横浜)ですでにエキシビションの演技を披露しているが、競技プログラムを観客の前で滑るのはこの日が初めて。5分間の練習を終えると、緊張感漂う中、スタートポジションについた。今季のリズムダンスの課題となるリズム/テーマは、「1990年代の音楽、ダンス・スタイル、フィーリング」。SM-Traxの「Got the Groove/Show Me Something Special」に乗って、ツイズルやリフトをまじえ、グルーヴ感あふれる息の合った踊りを披露。大きなミスなくプログラムを滑り終えた2人は、ほっとした表情で、観客やアイスダンスの仲間たちからの温かい拍手に応えていた。
櫛田「ちょっと緊張した。もっと大きく動けたかな」
演技後、2人は取材に応じ、櫛田が「(この大会を)楽しみに迎えました。ちょっと緊張しました」とほほ笑むいっぽう、島田は「楽しんだもん勝ちなんだろうなって思って楽しもうとしたんですけど、やっぱりめっちゃ緊張していた」と明かした。演技について、櫛田は「思い切って全部大きく動けたわけじゃないんですけど、うまくまとめた感じ。もっと大きく動けたかな」と振り返った。島田も同意し、「ターンを気をつけながらやっていてもできず、というのが毎日すごくある感じなので、ぼくのエッジワークもそうだし、2人の距離感もよくなっていけば」と話した。また「練習の成果が発揮できた点は?」と聞かれ、2人は「ツイズルはよかった気がするよね?」「位置とか結構よかったのかな」と確認し合い、「リフトは修正しないといけない部分がある」と課題も挙げた。
結果発表は10月4日、WEBにて公開される。この時点ではスコアはわからないが、リンクサイドで見守ったキャシー・リードコーチからは、演技後に「がんばったよ!」と声をかけられたという。2人は「『よかったよ!初戦にしては』という感じだったと思います」と笑った。
島田「キャシーとクリスが紡いだアイスダンスの歴史を感じられて、光栄です」
実戦デビューが「クリス・リード杯」だったことについて、櫛田は「キャシー先生にとって、すごく思い入れのある試合で初戦を出来たことがとてもうれしいです」、島田は「クリスの衣装が飾られているのを見て、すごく感慨深いと言いますか。キャシーとクリスが紡いでいったアイスダンスの歴史というものを感じます。この大会は、もう4回目になると思うんですけど、アイスダンサーとして試合に出ているのがすごく不思議だし、すごくうれしいということ、そしてその歴史を感じられているみたいで、すごく光栄だなと思いました」とコメントした。
島田「どれだけ『WOW!』が作れるか」
9月上旬には、関空アイスアリーナで開催された日本初のチャレンジャーシリーズ(CS)の木下グループ杯を観戦したという2人。アイスダンスの試合も見たという島田は「何から何まで違うというか、カップルごとの個性がより見えたときに『お~!』ってなりますし、ここが面白いとか、このリフト面白いとか、それはオリンピック予選会でも見ていて思いました。どれだけ『WOW!』が作れるかというか、ポイント、ポイントだったり、プログラム全体をとおして、それが多いカップルがすごいなと感じたので、それができるようにがんばりたい」とおおいに刺激を受けたようだ。
島田自身もさまざまなアイスショーにひっぱりだこで、表現力に定評があるが、櫛田もまた曲が流れると、表情が一変するスケーターだ。島田は「(育良ちゃんは)本当に女優さんと言いますか、周りから変えてくださいと言われているわけでもないのに、自分の世界感をすでにもっている」と賞賛し、「2人とも『もっともっと入って』と言われることはあるので、(表現について)まだまだもっともっとできるんじゃないかなと思います」と語った。
フリーダンスの初披露は、初の公式戦となる11月1~3日の西日本選手権(アイスダンス予選会)。
櫛田は「初めて試合に出て、いろいろ学んだことがあるので、その部分をまずリズムダンスを修正して、フリーダンスは仕上げていきたい。今回思い切ってできなかった部分をもっと全力を出し切れるように滑りたいと思います」と誓った。いっぽう島田は「クリス・リード杯はリズムダンスのみだったので、これまではリズムダンスにフォーカスして練習してきていたので、今度はリズムとフリー両方あるなかでの練習の積み上げ方や試合に向けての調整もわからないながら進めていくことが多いと思いますが、こうやって試合を経験できたことが大きな糧となると思いますので、その時できる最大のパフォーマンスをできるように練習をがんばりたいなと思います」と抱負を述べた。