山本草太のミラノ・オリンピックシーズンは、まさにそのミラノ、1年後にオリンピックが開催されるリンクの表彰台から始まった。
2025年2月、オリンピックのテスト大会として行われたRoad to 26 Trophyに日本代表として出場し、3位で表彰台に上がった。そのまま新フリーの振付のため、カナダのローリー・ニコルのもとを訪れ、新シーズンへと始動したのだ。
7月上旬に参加したミラノ・コルティナ・オリンピック対策合宿では、今シーズンをともに戦う同志の面々と顔を合わせ、「いまは自信をもって臨むことができている」とオフシーズンの手応えを口にした。SPは3季ぶりに「Yesterday」(樋口美穂子振付)を滑ること、新フリーはローリー・ニコルの提案で「ハレルヤ」に決まったことが明かされた。
シーズン初戦は、7月20日から邦和みなとスポーツ&カルチャーで行われた名古屋市スケート競技会みなとアクルス杯。SP「Yesterday」ではいきなり94.62点をマークし、結果としても鍵山優真に次ぐ2位と上々。「早い段階で課題を確認できたのはよかった」と自身の内容を振り返りつつ、普段から同じリンクで練習する鍵山についても、「遠い存在ではなく、ぼくも戦えるレベルに、今シーズンを通して一緒にがんばっていける存在になれたら。きれいとか巧いだけじゃなくて、怖いぐらいのすごさを優真くんのスケートから感じる」と、リスペクトと闘志を一緒に燃やす。
心身の充実ぶりが演技にも、言葉にも表れ、シーズンへの期待が膨らんだ初戦から数日。山本草太の夏にさらに迫るべく、ホームリンクの中京大学アイスアリーナを訪ねた。これまで歩んできた道のり、今シーズンへ懸ける思い、そしてそのために捧げたこの夏について、ロングインタビューに応えてくれた。
本記事の中盤以降は有料記事としてお届けしています。自身のスケート・フィロソフィーや周囲の人々への思いを語った深いお話から、山本選手の“好き”を知る一問一答まで、ぜひお楽しみください!
競技のための練習を1日1日積み重ねて
―― 今シーズンは昨季よりも早い時期に初戦に臨まれましたが、オリンピックシーズンのスタートラインに立ったという実感はありますか。
山本 そうですね。昨シーズンはチャレンジャーシリーズ(ネーベルホルン杯)からの試合だったので、9月からシーズンが始まる形でした。そのすぐ次がグランプリだったので、課題を見つけて調整していく期間が少し短かった。その反省を生かして、今シーズンは7月の試合からエントリーしていこうということは、昨シーズンが終わって振り返ってみたときから考えていたことでした。オリンピックシーズンの初戦を終えてみて、すごくいいところもあり、課題もありという形で、次の試合に向けてたくさん課題を見つけることができたので、シーズンに向けてまた頑張っていこうかなという気持ちでいます。
―― 「充実したオフを過ごせていて、いい状態でシーズンインできそう」と、7月上旬のミラノ・コルティナ・オリンピック対策合宿のときにもおっしゃっていました。オフシーズンはいつもと違う夏だったんですか。
山本 昨シーズンの終わりごろ、2月にミラノでオリンピックのプレ大会(Road to 26 Trophy/3位)に出場したんですけれども、その前から今シーズンの曲を考えたりしていました。今シーズンはショートプログラムが「Yesterday」、フリーがローリー・ニコルさん振付の「ハレルヤ」なんですけど、2月のプレ大会が終わってから、そのままカナダに行く形でプログラム振付の時間を取ることができたんです。今シーズンのプログラムが3月にはもう出来上がっていたので、このオフシーズンは、競技のためだけの練習を1日1日積み重ねることができた。そういった意味では、いい準備期間だったのかなと思います。
―― 「Yesterday」をリバイバルするのは、ご自身のアイディアでしたか?
山本 そうです。オリンピックシーズンのショートとフリーを考えたときに、本当に直感で、「Yesterday」をもう一度持ってきたいなと思いました。自分が自信を持って演技できるプログラムですし、完成度の面でも、点数的にもすごく強みになるようなショートプログラムだったので。今シーズンは勝負のシーズンになってくるので、やっぱり自信の持てるプログラムを引っ張ってきたという感じです。
―― 「Yesterday」は2021-2022シーズンと2022-2023シーズンで続けて使用されていたので、これが3シーズン目になりますね。
山本 はい。2シーズンやって、今回3シーズン目になるんですけど、練習も試合も、自信を持って、自分らしく演じることができるプログラムだなと思います。
たくさんの方々のおかげでいまがある
―― 7月のみなとアクルス杯では、試合で初めて新しいフリー「ハレルヤ」をお披露目されましたけれども、観客の反応も含めて、どんな手ごたえがありましたか。
山本 本当に久しぶりに名古屋で試合をすることができて、たくさんのファンの方々が応援に来てくださって。ぼくのバナータオルで会場が緑色に染まっていたりして、すごく近くで応援を感じることができて、パワーをもらいました。フリーは試合という場では初めてでしたけど、お客さんの反応というより、自分でショートとフリーの映像を見返したときに、まだまだだなと。次の試合に向けて修正していきたいです。