2025年12月21日
平昌オリンピック銅メダリストの兄妹アイスダンスチームによる新連載スタート!

第1回:マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ「ぼくたちはずっとある種の孤独を感じていた」

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病との戦いと日本で過ごした日々、そして浅田真央との夢のような時間

マイア でも2019年に開催したスケートセミナーのすぐ後に、私の腎臓に悪性腫瘍が見つかったんです。それを取り除く手術を受けることになりました。まったく予想していなかった困難で、最初は肉体的な問題だったけれど、だんだん気持ちの面やメンタルに大きく影響するようになった。私はそのときまだ25歳で、思ってもみない病気でした。身体から切り離されてしまったと思った。アレックスや家族、友人の支えがあっても、それでもまだ孤独で……。打ちのめされてしまいました。

アレックス 腫瘍を偶然見つけてもらえたことには感謝していて、それがなければいまぼくらはこの位置にいない。手術のあと、マイアは横になっている時間が長かったけど、そのうち「ちょっと滑りに行ってみない?」と誘ってみた。LAにあるリンクの一般営業の時間帯に行きました。とても怖がっていたけれど、滑る気持ちよさや自由を感じてほしかったんです。

マイア とても支えになったの。1ヵ月に1度、試しに行ってみる? くらいだったのが、週に1度、週に2度、と増えていって。

アレックス 競技のためじゃなくて、純粋に楽しみのためにリンクに行っていたんです。COVIDが始まって、そのあいだは競技に戻ろうとは思っていませんでした。そのときは心身ともに準備が整っていなかったから。

マイア でもね、滑り始めると、やっぱりちゃんと滑りたいと思うものなんです。COVIDの制限が緩和されてくると、私たちは日本で時間を過ごすことが増えていきました。

アレックス 競技への思いが、日本に戻って、日本のことも、日系人である自分たちのことももっと知りたいという思いに切り替わっていった。日本で、もっといろんな繋がりを作ったり、自分たちのルーツを知るきっかけをくれるような人たちと出会ったりしたいと思っていたんだ。2021年から2024年にかけて、全部で1年以上日本で過ごしたんじゃないかな。それがぼくたちが競技復帰を決めた大きな理由でもあって、滞在中に真央のアイスショー「Everlasting33」のために彼女にアイスダンスを教えたり、振付を作ったりする機会をもらえたし、2人でもちゃんとアイスダンスの練習をすることができた。

マイア 真央と一緒に時間を過ごすことができたのは夢のようだった。歳はいくつかしか違わないけれど、彼女はずっと前を先行する存在で、まるでお姉さんのようなロールモデルでした。真央と時間を過ごして、彼女のために何かを作るなんて特別な体験で、うれしかったしモチベーションにもなったわ。

©Kisshomaru Shimamura

>>次ページ:もう一度競技へ――「自分たちにはできる」と信じて

プロフィール
Maia Shibutani and Alex Shibutani (まいあ・しぶたに&あれっくす・しぶたに) マイアは1994年7月20日、ニューヨーク生まれ。アレックスは1991年4月25日、ボストン生まれ。日系アメリカ人としてアメリカで生まれ育ち、兄妹でアイスダンスチームを結成。2011年に16歳と19歳で世界選手権銅メダルを獲得。以降、世界のトップシーンで活躍し、2014年ソチ・オリンピック9位、2016年世界選手権2位、2017年世界選手権3位、2018年平昌ではアジア系アイスダンスチームとして初めてオリンピック銅メダル、団体銅メダルを獲得した。2018年以降は競技を離れ、今季のNHK杯で8シーズンぶりに競技会に復帰する。
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