2025年11月5日
平昌オリンピック銅メダリストの兄妹アイスダンスチームによる新連載スタート!

第1回:マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ「ぼくたちはずっとある種の孤独を感じていた」

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2018年の平昌オリンピックでアジア系として初めてアイスダンスの銅メダルを獲得したあと、競技を離れたマイア・シブタニとアレックス・シブタニ。7年後の今シーズン、兄妹チームは電撃的な競技復帰を発表しました。2人の初戦は今週末のNHK杯。久しぶりの試合を前に、日系アメリカ人として、オリジンである日本に深い想いを寄せる2人の語り下ろしによるweb連載をスタートします。

初回の今回は、復帰を決意した理由と、競技を離れていた7年のあいだ、スポーツのアンバサダー的存在として取り組んできたさまざまな活動について話してくれました。その年月に、マイアは思ってもみなかった大病を克服。若くしてメダリストになった2人が、どのように自分たちらしさを探求し、困難を乗り越え、スケートへの新たな想いを育てていったのか、いまだからこそ語れるストーリーです。

Maia Shibutani and Alex Shibutani

自分みたいな見た目の人たちが大勢街を歩いている!――日本との結びつき

マイア 2018年のオリンピックのあと、私たちは休養に入りました。引退するつもりはなかったけれど、それまでは競技のために多くの時間を割いていたし、私たちにはスケート以外での経験があまりありませんでした。アレックスと私は、自分たちに何ができるかやってみたいと思っていて、でもそれがハイレベルな競技と両立できるものではないこともわかっていました。そこで競技をいったん離れ、クリエイティブな面のスキルを伸ばしたいと考えたんです。

アレックス まず最初のプロジェクトとして、本を書き始めました。同時に、自分たちの内側にある日系アメリカ人としてのアイデンティティを探求するようになりました。アジア系アメリカ人としてのカルチャーに貢献したいと思った理由のひとつは、平昌オリンピックで、アイスダンス種目で初めてアジア系として表彰台に立ったにも関わらず、当時はそのことが広く承認されたような実感があまりなかったから。それが悔しかったというのではなくて、アイスダンスという競技のなかで、ぼくたちは数少ないアジア系のチームとして、ずっとある種の孤独を感じていた。だからぼくたちの後に続くアジア系のチームにはもっと競技の一部になってほしいと思ったし、彼らがより充実したリソースを得るために、できることをやりたいと思いました。

マイア この年月に、自分たちにとっても、日本との結びつきがどんどん強くなっていきました。ジュニアグランプリファイナルで、初めて日本で試合をしたのが2010年だけれど、何度も日本を訪れることで、私たちは人間としてもアスリートとしても変わっていったと思います。とくにショーに出演した経験を通して、自分たちのアイデンティティが作り上げられていったと思うし、いまの自分たちの内面にずっと残っていく影響を受けました。

©Kisshomaru Shimamura

アレックス 初来日のとき、自分みたいな見た目の人たちが大勢街を歩いているのを見るのが初めての体験で、衝撃だった。そのことを何度も思い出すんです。それ以来、日本で演技をするのはぼくたちにとって誇りでした。家族の見ているなかで演技をするようなものですよね。その年は日本の音楽を使っていて、「Nikkei(日系)」であること、日本文化への尊敬を示したいと思っていた。

マイア 2018年に有色人種として初のオリンピック・メダルを手にしたことで、多くの人に会う機会に恵まれました。さまざまな分野のクリエイティブな人たちと出会ったし、同時に、私たちにつながりを感じてくれている若い世代に対する責任を感じるようになった。日系アメリカ人であることで、異なる場所の架け橋になれることが誇りでした。

アレックス アメリカ国内でスポーツマネジメントを学ぶ大学生に向けた講演会で話したり、日本で米国大使館主催のセミナーの講師をしたり。自分たちの経験をシェアすること、若い世代や一般の人たちに教えることにやりがいを感じていた。学びたいと思っている人たちに自分たちの経験を伝えるのは、とても意味のあることだと感じていました。

>>次ページ:病との戦いと日本で過ごした日々、そして浅田真央との夢のような時間

プロフィール
Maia Shibutani and Alex Shibutani (まいあ・しぶたに&あれっくす・しぶたに) マイアは1994年7月20日、ニューヨーク生まれ。アレックスは1991年4月25日、ボストン生まれ。日系アメリカ人としてアメリカで生まれ育ち、兄妹でアイスダンスチームを結成。2011年に16歳と19歳で世界選手権銅メダルを獲得。以降、世界のトップシーンで活躍し、2014年ソチ・オリンピック9位、2016年世界選手権2位、2017年世界選手権3位、2018年平昌ではアジア系アイスダンスチームとして初めてオリンピック銅メダル、団体銅メダルを獲得した。2018年以降は競技を離れ、今季のNHK杯で8シーズンぶりに競技会に復帰する。
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