羽生結弦さんの初の単独ツアー公演「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd “RE_PRAY”TOUR」が2月19日、横浜市のぴあアリーナMMで千穐楽を迎えました。昨年11月のさいたま公演、1月の佐賀公演から続きツアーのフィナーレを飾る横浜公演。会場に詰め掛けた幸運な7000人をはじめ、テレビ放送、国内外のライブビューイングで大勢の観客たちが圧巻のスペクタクルを堪能しました。2月19日の公演と、終演後のコメント全文をレポートします。
魂をぶちこんで滑る
鬼気迫るほどの強い想いを感じさせた千穐楽公演。前半最後のプログラム「破滅への使者」では、6分間練習で集中を高めたのちに演技を開始。冒頭の4回転サルコウをあざやかに決めると、競技さながらの高難度な構成をものともせず、終盤の4回転トウループからの5連続ジャンプ、トリプルアクセルまで華麗に決めた。「いつか終わる夢」からアンコールまで、全力で滑り切る2時間半。
最後まで精緻なスケーティングを見せた羽生は、マイクを握ると、「『RE_PRAY』横浜公演、いかがでしたでしょうか? 今日も今日とて、魂から滑らせていただきました」とあいさつ。スタッフや関係者の皆さん、そして何より観客の皆さんへの感謝の思いを語ると、「やっと『破滅』ノーミスできた」と嬉しそうな様子。伝えたいことがたくさんあるけど、毎回滑りきるころには、酸素が回っていなくて忘れてしまっているといいつつ、「そうだな、なんか寂しいなって思って」とつぶやくと、会場からひときわ大きな声援が送られた。
今回、もう一方の主役は間違いなく観客だった。さいたま公演、佐賀公演を経て、緻密な展開とメッセージを咀嚼し、差し出される物語を受け取るだけでなく、ともに作り上げるという気概まで感じさせる熱い客席の反応。渾身の名演をさらに増幅し、共鳴し合う双方向のアイスストーリーを出現させていた。それが手ごたえとなって、羽生にも伝わったからこその、充実感のあふれる表情だったに違いない。
「毎回毎回魂をぶちこんで滑っているつもりです。どうか今日という日がちょっとでも皆さんの記憶だったり、心だったり、欠片ともいわなくてもいいので、一粒の砂みたいなものでもいいので、何か今日の感情が残ってくれればいいなって思っています。皆さんと一体となって、RE_PRAYを一緒に祈ってくださって、本当にかけがえのないものになっています。みなさんのなかでも、そうなっていたら嬉しいです」
最後には英語のメッセージも交えてMCを終えると、「ちょっとしんみりしちゃったんで、アゲていきましょう!」とアンコールの「Let Me Entertain You」へ。コール&レスポンスありの大盛り上がりで客席を沸かせると、「佐賀からここまで1日6時間くらい筋トレを毎日やってきて、やっとここまで来れたなと思います」と明かし、6年前の一昨日(2018年2月17日)オリンピック連覇をなしとげた「SEIMEI」で客席をさらなる興奮の渦に巻き込んだ。
エンドロールの映像のあとには、再び水色のコスチュームで登場し、「序奏とロンド・カプリチオーソ」を披露した。最後には「本当にどこも自信がなくて、どこも自分のこと好きでもない、こんなちっぽけな自分に、ありんこみたいな超ちっちゃい自分に、ここまで力をくださって、応援してくださって、いろんなことを感じてくださって、この瞬間、視覚と聴覚を皆さんくださって、ほんとうにありがとうございました!」と尽きない感謝の思いを伝える。そして、最後の最後には、恒例の地声で「ありがとうございました!」と叫び、観客に鮮烈な記憶を残し、羽生結弦はリンクをあとにした。