「自分の新しい価値が生まれてくれればうれしい」
―― 「Echoes of Life」以来の単独公演ですが、初日を終えていかがですか。
羽生 すごい疲れました。たくさん練習してきたつもりですけれども、やっぱりこうやって 1人でずっと滑り続けるっていうことも、ぼくにとっては 1シーズンぶりだったので、やっぱり緊張してましたし。あと今回初めての試みとして、自分のソロプログラムとして、すごく密度の濃いものが結構立て続けに続いてたり、また初めて、後半をすべて出ずっぱりでやるということもやって。いろいろ挑戦だったんですけれども、非常に自分の新しい価値というか、そういったものが生まれてくれば嬉しいなって思っています。
―― 単独公演で1年以上時間を取った中で、肉体的、精神的な変化を改めて教えてください。
羽生 ちょっとスケートから離れる時間もあり、離れざるを得ない期間があり……。体のメンテナンス、いろいろ傷んでいる場所であったりとか、いろいろ酷使してきた場所だったりとか、そういったものを、ちょっとでもいい方向に、これから先長く続けていくにあたって、いい方向に進めていきたいと思い、メンテナンスということをしてきたんですけれども。
その影響で、改めてバイオメカニクス的な体の使い方であったりとか、運動力学的なものであったりとか、また自分の体の感覚の、関節の1つ1つの感覚であったりとか、そういったものをすごく1つ1つ見つめながら、また勉強しながら、ここまでやってきました。その上で、踊り方だったりとか、ジャンプの跳び方を含め、ちょっとずつ理にかなったものができるようになってきたので。まだ、まだまだ成長段階なところですけれども、今急激に変わっているところなので、ぼく自身も楽しみに、これからも滑り続けたいなって思います。
―― 第1部が「REALIVE」、第2部が「PREQUEL」。それぞれのコンセプトというか、意図を教えてください。
羽生 「REALIVE」は、ぼくが今まで「ICE STORY」というものの中で滑ってきたプログラムたちを、こうやってメンテナンスして新しくなってきた自分の体を通して、みなさんにどう変わったかとか。今ここに生きていることを見せるみたいな。ぼくにとっては、プログラムって本当に一期一会だと思ってるので。もちろんジャンプの出来であったり、スピンの出来であったり、ステップの出来であったり、またお客さん、みなさんの歓声であったりとか、その会場のあったかさとか、その時の天候とかによっても、全然雰囲気が違うので、本当にそこに生きているものだなってぼくは思うんですよね。だからミュージシャンたちが、ライブっていうのが、すごくぼくは自然に感じられてて。だからそういう意味でもライブっていうふうに思いながら、このリアライブというものを作りました。
そして「PREQUEL」 は「ICE STORY 4th」をやるぞということを、まず念頭に置きながら、「4th」に向けての何か、その期待感を持っていただけるような、ワクワクできるようなものを何かしら1つ作りたいということで、頑張って作ってきました。主人公がモノクロの世界から徐々に徐々に外の世界の色を知っていく。いろんな出会いや、いろんな旅路のなかで、だんだんと外の世界を知っていって……いろんな感情が芽生えてくるみたいなストーリーにしたつもりです。
―― いまお話しできるなかで、「4th」のヴィジョンは、どこまで思い描けてるんですか?
羽生 コンセプトはもうできてて、物語もだいたい自分のなかでは書ける段階にはあって。もちろん前日譚なので、それがないと書けないんですけど。だから、ある意味ではその前日譚を書いた……作ったときに、もう「4th」はぼくのなかでは出来上がっている状態なので。あとはみんなでいろいろ話し合いながら、次に向けて、また頑張りたいなと思います。明日もあるんですけど、はい」
「みなさんが想像できる余白のある物語に」
―― 第2部は、20 分と長かったと思うのですが、演劇を見ているようでした。振付などは、どなたが担当したのでしょうか。
羽生 えっと、MIKIKO先生とほぼ共作っていうような感じですね。MIKIKO先生にいろいろコンセプトを伝えながら、また先生にもいただいた振付のコンセプトを聞きながら。そしてMIKIKO先生の頭のなかで出来上がってる演出とともにこういうふうにしたい、ああいうふうにしたいということを振付けてもらい、で、「じゃあ、ここのパートはこの振付にしたいんだけど、スケートだったらどうしたらいいかな?」っていうことを、本当に1つ1つすごく時間をかけて、密にコミュニケーションを取って頑張って作り上げた1つの作品っていう形です。
―― メンテナンス期間開けの、初めての単独公演に宮城を選ばれました。宮城を選んだ理由と、初日を終えて、いまどんな感想をお持ちですか?
羽生 やっぱり、初めてのスタートは自分の故郷でありたい、みたいなところがあり、やはりぼくにとって、宮城という場所は、特別な場所で。なんというんですかね、やっぱ、ふるさとですし。そして、この単独公演というものに、本当に世界中の方々が注目して、集まってきて。そして、またいろんな媒体でも、注目して見に来てくださっているので、そういう意味では、自分の故郷を見ていただけるというのは、すごいうれしいなと思って。はい。ここからスタートとしたいなって、思いました。
―― 故郷の公演を終え、どんな感想をお持ちですか
羽生 明日もがんばりたいです。はい。
―― 第 2 部は、スケーターもこんなことまで?というすごく驚きのあるものでした。この原作は、小さい頃から思っていたことがあふれ出たものなのでしょうか。どんなふうに世界観が生まれていったのでしょうか。羽生さんは、原作を書くとき、脚本家のように文字として起こして見せるのか。どのように作っていったのか教えていただけますか?
羽生 そうですね。いつもの「ICE STORY」ってセリフが基本あって、それを全部書いていって、このセリフの時にこういう情景みたいな感じで書いていくんですけど、今回は全部文字でその動作を全部書いてくみたいな感じで書いていって。感情としては、あんまり自分のことというよりは、「ICE STORY」全般そうなんですけど、「この子がもし存在するとしたら、どういうふうに感じて、どういうふうに世界を探検させたいかな?」みたいな感じで想像を膨らませて書いていきました。根本にある思いがたぶん一緒だったりとか、もちろん自分のなかから出てくる言葉たちだったり情景だったりするんで、きっと、ぼくのなかにあるものだとは思うんですけど。きっとぼくだけの思いだけだと、全然独りよがりの、ちっちゃいものにしかならないなとぼくのなかでは思うので、みなさんが想像できる余白のある物語にしたいなって思って作ってきました。
―― 第 1 部の構成、選曲の意図と「4th」の時期について教えてください。
羽生 「4th」の時期は、ちょっと言えない。言えない。言えないよね。言えないよね、関係者(……と周囲の関係者の反応を確認)。「4th」の時期は、まだ言えないけど、「4th」はやります。そのための今回です。「リアライブ」は「GIFT」と「RE_PRAY」、「エコーズ(Echoes of Life)」のプログラムたちのなかから、たとえば、「GIFT」……たとえばなんですけど、エコーズだったら、マスディス(「Mass Destruction」、「UTAI」の2曲で、「RE_PRAY」からはメガロ(「MEGALOVANIA」)、「鶏蛇」((鶏と蛇と豚)」の2曲。で、「GIFT」からは「あの夏へ」と「Otonal」。「Otonal」は滑っていないんですけど、あえて。曲を使ったっていうこともあって、曲を使っているのにまだ滑っていないプログラムだなということもあり、サプライズをこめて「Otonal」を滑りたいと思って。2曲、「GIFT」の中から「Otonal」と「あの夏へ」を選ばせていただきました。あとは、ある意味、原点である「PROLOGUE」からの「SEIMEI」ということで構成をしていきました。
本当にほとんど強い曲ばっかりなんで、非常に大変ではあったんですけど、とくに今回初めて最初の1 曲目から2 曲目の間が、約1分ちょっとしかないという、本当に裏でも靴を脱がない、もう早く着替えてそのまま出るみたいな新しいことをやってたりとかもしてたんで。本当に技術的にも、すごい新しいことをやってたんですけど、非常にみなさんの反応も、すごく気持ちよくて、大変だけど、頑張ってる甲斐があったなって思いました。
―― 第2部のクリスタルチックなキャラクターの子が出てきました。あの子は希望の権化と言ったらいいのか、それとも外の世界を知るための水先案内人だったのでしょうか。
羽生 どうなんだろう?どこまで言うか悩むんですよね。さっき言ったように、どういうふうに見えてほしいなっていうのは自分の中ではあるんですけど。それを言っちゃうことによって、狭めちゃうのもあれだしなっていうのはありつつ。うーん、でも、それぞれの大切な人であったり、大切なものであったり、大切な出会い、みたいな感覚で、あの子を見ていただけたら嬉しいなって思います。
「自分が書いたストーリーに色をつけてくださっている」
―― 第2部の『PREQUEL』で、白い布が降りてきました。いろいろな捉え方があると思いますが、あそこはどういう見方をしたらいいのでしょうか。
羽生 原作としては、あそこ、すごく風のイメージなんですね。階段を登っていって、風に切り裂かれながらも、そこに巻き込まれずに、自分の、自らの意思で突き進むみたいな感覚で。張り巡らされた風の線みたいなような形プラス、ちょっと鳥居に入っていくっていうこともあって、神聖な感じも出しつつ……階段を上っていくにあたり、自分の心をちょっとずつ神聖な部分に持っていく、みたいな感覚であえて演出を作っていただきました。
―― 空間を生かした大がかりな演出です。
羽生 そうですね。本当に緊張するんですけど、やっぱ「ICE STORY」でしかできない、「ICE STORY」 の演出しかできないものですし、ぼく自身もすごく楽しみしながらやってきましたし。現地入ってからじゃないと練習できないんで、いろいろ大変ではあるんですけど、でもスケール感だったり、楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。
―― 最後の場面で、羽生さんが「『4th』を開催するって発表した」と(速報記事に)書いてしまいました。大丈夫ですか。
羽生 大丈夫です。全然大丈夫です。はい、開催はします。
―― 原摩利彦さんに曲を書きおろしてもらうことになった経緯と、演じての感想をお願いします。
羽生 今回、全編オリジナルにしたいっていう気持ちがあって、そのなかで誰にお願いしたいかなということを、まず原作を作り、原作を作ったうえで、「じゃあ、こういう方かな、こういう方かな、この方かな」っていうのを何人か、演出チームと映像チームと話し合いながら……「ICE STORY」チームで話し合いながら、そのなかで原摩利彦さんにお願いしたいなということでお願いしたところ……本当は当初、全曲っていうプランではなくて。もう、摩利彦さんは本当にお忙しい方なので 、1曲だけでも2 曲だけでも、みたいな感じでお願いしたら、摩利彦さんが「全部書きたい」って言ってくださって。わざわざ自分のところだけじゃなくて、映像のところまで全部書き下ろしてくださって。自分のストーリー、自分が書いたストーリーに色をつけてくださっている。音色という色をどんどんどんどんつけてくださって、そのストーリーを聴覚で感じられるようにしてくださってて、本当にぼく自身も滑ってて気持ちいいなとか、自分自身がそのゼロの、何だろうね……なんて言っちゃえばいいんだろうね、ちょっとネタバレになるなと思って、ちょっと(話すのを)やめちゃった。まあ、書いた原作者として、すごくその物語を感じながら、滑らせていただいています。
「ICE STORY 4th “WHITE…”」の開催時期は後日発表される。羽生結弦が書き下ろした原作をもとに、MIKIKOが演出、さらに映画「国宝」の音楽、主題歌制作を手掛けた原摩利彦による新作音楽とともに描かれる第4弾。世界初演がいまから待ち遠しい。




