12月21日、全日本選手権2025が終了し、ミラノ・コルティナ・オリンピックをはじめ、世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の日本代表が発表されました。
本記事では、代表発表後に行われた日本スケート連盟の竹内洋輔フィギュア強化部長による選考理由の説明および質疑応答を掲載します。説明を前に、竹内フィギュア強化部長からは、オリンピックの団体戦メンバーはISUの規定により競技前日の発表となること、今回の選考については、選手への事前アンケート及び選考基準に基づいて決定されたことが説明されました。
2025-26シーズン フィギュアスケート国際競技会 派遣選手選考基準
ミラノ・コルティナ・オリンピック(2月6~22日/イタリア)

●男子シングル
1枠目に関しては全日本選手権優勝者で鍵山優真選手が1人目に選考。すべての選考において、1枠目、2枠目、3枠目と分かれているものに関しては、上位の枠に選考された選手は次の選考過程から削除され、次点の選手が繰り上がるかたちになっている。選考基準が「順位」で書かれているものに関しては変わらない。よって2枠目の選考から鍵山選手が抜けた状態のなか、選考対象選手として佐藤駿選手、三浦佳生選手、友野一希選手の3名が選考の土台に上がった。最終選考会である全日本選手権の内容、そして選考基準に書かれているグランプリファイナル、シーズンベストすべてにおいて最も高い競技力を示した佐藤選手を2枠目の正選手として選考した。3枠目は、2枠目の選考で漏れた選手から三浦選手と友野選手が3枠目の選考に降り、B、C、Dの項目において壷井達也選手、山本草太選手が選考の土台に乗った。これらを加味し、最終選考会の全日本選手権の演技内容、選考基準上の内容から正選手3人目に三浦選手を選考した。
●女子シングル
1枠目は、坂本花織選手が全日本選手権で優勝したので、その時点で内定となり、正選手1人目が確定。2枠目は、全日本選手権2位、3位という項目に関して、2位の島田麻央選手が年齢の関係から選考対象外のため、3位の千葉百音選手が該当。そして選考基準B、Cで坂本選手を抜いた中井亜美選手と住吉りをん選手が土台に上がった。2枠目に選出した中井選手は、国際競技会における選考項目での内容、そのうち2回の国際競技会において坂本選手より上位で終えた実績を評価して選考した。3枠目は、2枠目までの選考から漏れた千葉選手、住吉選手が降り、残りの選考項目から選考し、選考基準の内容、全日本選手権の演技内容、すべてを加味して3枠目で千葉選手を選出したかたち。選考の土台で最後まで争った渡辺倫果選手が補欠、そして今大会で非常に素晴らしい演技をした青木祐奈選手が補欠の2番手となった。
●ペア
三浦璃来&木原龍一組は最終選考会である全日本選手権を棄権したので、1枠目は今大会優勝の実績から長岡&森口組を選出した。2枠目は選考基準の救済事項に基づいて、三浦&木原組を選出。
※救済事項:最終選考会である全日本選手権への参加は必須(補欠の選考はこれに限らない)。ただし、過去に世界フィギュアスケート選手権大会3 位以内に入賞した実績のある選手が、けが等のやむを得ない理由で全日本選手権へ参加できなかった場合、不参加の理由となったけが等の事情の発生前における同選手の成績を上記選考基準に照らして評価し、大会時の状態を見通しつつ、選考することがある。(2025-26シーズン フィギュアスケート国際競技会 派遣選手選考基準より)
●アイスダンス(団体戦)
アイスダンスは個人戦出場はないため、団体戦で選考を実施し、該当選手が今大会優勝した吉田唄菜&森田真沙也組のみとなるため選出した。
世界選手権(3月24~29日/チェコ・プラハ)

オリンピック後の大会となるが、強化部としてはメダル獲得、翌年の枠を最大限獲得していける選手というところで、オリンピックの選考選手がそのまま十分に競技力を発揮できると判断。三浦佳生選手をはじめ、若手が結果を残していることから、オリンピック代表の正選手を変えないかたちで最終的に選考した。男子と同様の理由で、坂本花織選手、中井亜美選手、千葉百音選手を正選手として選考。ペアも同様に選考し、正選手の1組目に長岡&森口組、2組目に三浦&木原組、アイスダンスは吉田&森田組を選考した。
質疑応答
Q. 補欠に選出されている壷井達也選手は、引退を表明しているが本人の意思確認はとれているのか。
A. 現在、引退を言及している選手がいることは存じている。しかしながら、いま現在、正式に連盟への引退届が出ている状況ではない。例年の強化選手の選考にあたっても、正式に選手から引退の届け出が出た際に、初めてそこを加味して考慮するかたちとなるため、本選考にあたっても現状の申請のまま選考した。
Q. 選考過程において最も議論されたこと。
A. 男子の3人目の選考に関しては様々な意見がなされた。選考基準では、今季の競技会のポイント、合計の平均点、点数の安定性というところでは友野一希選手が三浦佳生選手よりも上位であったところに関し、最終的にメダルを獲るためにどちらが正選手として望ましいのかを様々議論し、三浦選手を選考した。女子に関しては、おもに中井亜美選手に関して。今シーズン戦うにあたってトリプルアクセルという武器を使って、これまでにシーズンベスト、平均点、結果を残してきた選手。おそらく先生方の戦略のなかで、ジュニアからシニアに上がってきた1年目で、シニアの選手と戦っていくために大技を使って成果を出していくということがあり、選考基準を十分熟知したうえで戦い、国際競技会で結果を出してきた。その結果、坂本花織選手より2回、国際競技会で上位になったことが非常に選考のなかでは大きかったことで、2枠目の選考になった。そういったところが議論となった。
Q. 万が一アイスダンスの選手が何らかの理由で出場できなくなった場合、補欠がいない団体戦のアイスダンス種目はどうなるのか。
A. オリンピックの参加条件を満たしているのは、吉田&森田組しかいないため、出られない場合には団体戦の日本のアイスダンスの獲得ポイントは0になると理解をしている。
Q. できればアイスダンスの補欠を置きたかったか。
A. アイスダンスの予選会(第51回全日本選手権大会 アイスダンス予選会/西日本選手権と同時開催)で派遣基準点に達した櫛田育良&島田高志郎組をCSゴールデン・スピンに派遣した。この大会はIOCの出場資格獲得期限を踏まえた最後のタイミングであったが、残念ながらミニマムスコアを取得することができなかった。もちろん、補欠を入れることも念頭に置いていたし、(オリンピック参加資格を持つ組が複数いて)全日本選手権で戦う場合、お互いが競争意識のもとにより高い競技力を発揮してくれる可能性もあったのではないかと考えている。
Q. 改めてミラノ・コルティナ・オリンピックでの日本スケート連盟の目標を。
A. 団体戦およびインディビジュアルイベント(個人戦)で金を含む複数のメダル獲得を目標としている。
Q. カップル種目の次世代育成について。
A. これまで連盟では、国内においてトライアウトを実施してきており、それをきっかけに、三浦璃来&木原龍一組のように、非常に強いペアが出ている。早い段階からペアの専門的なコーチがいるカナダでトレーニングをしていくことを、少数ながらも競技力を高める狙いで実施をしてきた。アイスダンスに関しては、少数ながら日本国内にもコーチがいるが、ペアと同様に競技力を高めていくために、海外のアイスダンスの専門的なコーチの下でトレーニングを実施することを試みていたが、うまく競技力が高まっているという状況にはなっていない。ペアに関しては、ある程度シングルでの競技力が高く、試合経験のあるタフな選手が転向した結果、成長しているところがあると思うが、アイスダンスに関しては、もう少し国内で十分に競技力を高めてから海外に移らなければ、海外の過酷な環境のなかでお互いがモチベーションを持ってトレーニングを続けることが難しい。その結果が、残念ながら解散となることが多数起きている状態だととらえている。
Q. オリンピック、四大陸選手権ともに代表に選出されている選手に関して、四大陸選手権でのようなことを期待するか。
A. 四大陸選手権に関しては、選手へのアンケート、強化の方針を踏まえて選考している。例えば長岡&森口組に関しては今回素晴らしい演技をしたが、国際競技会での得点に関しては、これまで今回のポテンシャルが評価された試合はなかった。それを四大陸選手権で示して、オリンピックに臨むほうがより彼らが望む高い結果に結びつくのではないかというところで派遣となった。アイスダンスに関しては、実績、現状での各国のチーム序列から言うとまだ弱い。いかに国際舞台で競技力を出していくかが重要と考え、今回の選考に至った。ただし、明日以降のオリンピック派遣手続きについての説明会等を行う際に、それぞれの選手、コーチと面談を実施する。現状は選考基準に基づいて選考をしている状態であり、オリンピックに向けたコンディショニングという点を十分に加味しているものではない。今後、選手、コーチとコミュニケーションを取って、最終的にどの選手が出場するのか選考したい。
Q. このオリンピック代表の陣容は、シーズン前に予想されていたものと比較してどうか。
A. 女子に関しては、どうやったら選ばれるのかを、非常に戦略的に考え、コーチの指導のもとに積み上げてきた結果が出ていると思う。ミラノ・コルティナ・オリンピック以降もその点に関して期待をしている。男子に関しては、現状の国際競技会における成績の出し方の点で、高難度ジャンプの成功がキーになることは間違いない。選手自身が求めるメダル、その高みに向かっていくなかでの選択に関しては、選手自身のアプローチは間違っていないと思っている。いっぽうで、やはりいまのトップは全種類の4回転を実施してくるところに対して、成功の安定性を保つことが非常に難しい。その点において、(最終選考の全日本選手権で)結果を出し切れなかった選手がいたことは、選手自身も非常に悔しい思いがあるとともに、すべての選手に持っているポテンシャルを出し切ってもらいたかった、そのうえで選考したかったという点では、少し残念な選手もいた。
