西日本選手権兼全日本選手権アイスダンス予選会が11月1日、木下カンセーアイスアリーナ(滋賀県大津市)で開幕し、リズムダンスでは、シングルでグランプリファイナル優勝、全日本選手権2連覇の実績をもつ紀平梨花選手(トヨタ自動車)が西山真瑚選手(オリエンタルバイオ)と組んでアイスダンスのデビューを果たしました。9月にアイスダンスへの挑戦を表明した紀平選手は、西山選手との練習がわずか1ヵ月程度とは思えない息の合った滑りを披露し、つめかけた観客からスタンディングオベーションが送られました。得点は59.61点で2位。紀平選手の競技会への出場は、2022年12月24日の全日本選手権女子フリー以来です。笑顔のデビューを果たした新カップル、“りかしん”のリズムダンス後のコメント全文をお届けします。
紀平梨花「アイスダンスで明るい未来が見えてきた」
―― お2人にとってファーストステージとなったと思いますが、いかがでしたか。
紀平 そうですね、3年ぶりの試合プラス、アイスダンスの初試合ということで、すごくドキドキの大会ではあったんですけど、ちゃんと落ち着いて、楽しく滑れたのはすごく良かったなと思います。
西山 今回は紀平さんと初めてのアイスダンスの大会、そして初めての大会なので、デビューということになって、本当に1ヵ月しか練習してなかったので、どうなるのかなと思ったんですけど、彼女がこの1ヵ月間、めちゃくちゃ努力して、で、こうやって大会に出場することができて、とてもうれしく思っています。
―― 紀平選手にとって、2人で滑るのはいかがでしたか?
紀平 もう初めはすごく苦戦して、滑るだけで転んでしまったりとか、結構あって、本当に危険だなって思ってたんですけど、怪我もその間も多かったですし、新しい怪我をしてしまったりもありましたし、いろんなことがありつつも、急ピッチで何とか仕上げてがんばってきたので、それがちゃんと形になって演技ができたのは良かったなと思います。
―― かなり大きな決断だったと思うんですが、その決断の裏にはどういった思いがあったのでしょうか。
紀平 やっぱり、あの……なんだろう。足の怪我がどうしても完全には治らなくて、どういう道を選んでも、あんまり明るい未来が見えないような、そういう気持ちでずっと過ごしていたので、アイスダンスをこういう形で始められて、新たな希望というか明るい未来が見えて来たので、すごくこういう選択ができて、いまうれしく思ってます。
―― 西山選手は今日、紀平選手と大会で初めて一緒に滑れたと思うんですが、相性はいかがですか?
西山 いや、本当に3年ぶりの大会、そして初めてのアイスダンスの大会と思えないぐらい本当に落ち着いていて。大会に向けての練習も、どんどん大会に向けてちゃんとピーキングを合わせていって。そして今回の大会も公式練習から落ち着いてずっと練習していたので、さすがだなと思って横で見ていました。
―― 今回の点数については、お2人はどう評価されますか?
紀平 初戦だったので、真瑚くんのほうから60点出れば本当にいいほうだと思うよと言ってもらっていたので。まだ点数の基準というか、自分の感覚っていうのも、ぜんぜん分からなかったので、まずまず演技自体すごいまとまってたので、あとはジャッジスコアとかを見て確認してどんどんどこが上げていけるかを確認していきたいなって思います。
西山 今回は、2人のアイスダンスデビューということだったので、そこにフォーカスを置いて、ぼくはいたので、もちろん点数自体はもっと高みを目指して、これから目指していけると思うんですけど、まずはここから、そしてどんどんどんどん、全日本に向けて、良くしていけたらいいなと思います。
―― 最後に真瑚選手のほうからハグをしてたように見えたんですが、どんな気持ちだったんですか?
西山 おめでとうって声をかけて。まず3年ぶりの大会のカムバックっていうことと、新しいアイスダンスのデビューということも含めて、本当におめでとうという気持ちと、ありがとうという気持ちがすごくあったので、ハグしました。
―― 紀平選手は最後、ほっとした表情だったんですが、終わっていかがでしたか。
紀平 やっぱり、こういったアイスダンスのなかでも、自分のなかで難しいところだったりとか、きちんとこなせるかっていう不安の部分ももちろんあったので、そこを落ち着いてできたのは、良かったという気持ちがあって。まずほっとした気持ちと、まだフリーがあるので、切り替えようと感じています。
―― フリーダンスに向けて一言ずつお願いいたします。
紀平 フリーはまた雰囲気ががらっと変わった、強い美しいようなプログラムですので、その点をしっかりとアピールして、練習してきたことが、1つ1つ丁寧にしっかりと出せたらいいなと思います。
西山 今回の大会の自分たちのモットーは、「落ち着いて、でもダンスを楽しむ」ということをモットーに今回大会に向けてやってきたので、明日も、それを体現できるようにがんばっていきたいなと思います。
―― 演技が始まるギリギリまでお互い声を掛けあっていたと思うんですけど、どんな言葉を掛けてあげたか、どんな言葉が自分を落ち着かせましたか。
西山 今回楽しんで、ますリズムダンスで大会デビューしようっていうふうに、お互いに声を掛け合っていたので、そんな声かけをしながら2人で順番に向けて準備していました。
紀平 ちゃんとやればできる、集中してやればできると思ったので、楽しんで、お披露目会みたいな感じで、そういう気持ちで楽しもうと話していました。
―― エレメンツのなかで、今日良かった点など手応えを感じたところについて。
西山 前半のツイズルとミッドナイトステップっていう2つのエレメンツは、すごく楽しく、そして2人ともがよくユニゾンがマッチングして滑れていたかなと思います。
紀平 いちばん気持ち的にも大事だったのがツイズルだったので、そこがきちんと決まって、私もうれしかったです。あとは表現の部分でしっかり楽しめたのがよかったですし。ミッドラインのとこでちょっとカーブが怪しかったなって自分のなかで思っているので、そこを改善できたらいいなと思います。
―― ミラノへの道は厳しいものもあると思いますが、(国際大会派遣に必要とされるリズムダンスとフリーダンスの技術点の合計の)最低限の点数を意識してると思うんですけれども、いまの思いを聞かせてもらってもいいですか?
西山 もちろん今回の大会がミラノ・オリンピックに繋がる大会の1つだと思うんですけれども、まずは本当に自分たちのデビュー戦、新しい、すごくいいアイスダンスチームができたんだよっていうことを、たくさんの方に知ってもらえるように、明日は思い切って、自分たちのできることを精一杯出し切りたいなと思います。
紀平 出れたことがまず奇跡で、まだまだこれが自分たちの実力ではないと思っているので、ここからスタートと思ってがんばっていって、そのなかで、また成績がついてくればうれしいなと思っています。
―― 紀平選手にとってすごい決断だったと思うんですけれど、どんな言葉を西山選手からもらったときに心を動かされましたか。西山選手は、紀平さんのどういうところを見て、声をかけたのかを教えてください。
紀平 そういう決定的な言葉っていうのは、とくになかったのですが、絶望のような感覚のなかずっと過ごしていたんですけど、それが少しでも明るく見えるような、アイスダンスが、少しでも自分のなかで希望になるように見えたというか聞こえたので。向いてなかったら無理しないでいいと思ってはいたんですけど、いざ滑ってみたらすごく楽しくできましたし、滑っていって、やりたいと思いました。
西山 トライアウトをしてるなかで、2人で話したり、彼女がアイスダンスをすごく気に入ってくれたなっていうのを感じました。それでアイスダンスで本当にがんばって、そしていずれオリンピックを目指していきたいっていう思いを聞けて、すごく自分と通ずる部分がたくさんあったので、一緒にがんばりたいなと思って、一緒に組もうと決めました。
―― 紀平さん、競技会でリンクに1人でなくて2人で立っていると、景色の見え方の違いはどうでしたか?
紀平 1人で立っているときより、心強さとかそういった部分、安心感みたいなものは感じましたし、でも、そういうメリットもあれば、ミスをしてしまったりすると、また迷惑をかけてしまったりだとか、そういうこともあると思うので、いろんな、また違った感覚だなとは思うんですけど。でも今、こうして約1ヵ月ちょっと試して、すごく自分自身楽しめているので、試合も楽しみました。(笑)
リズムダンスでは、同じく結成1年目の櫛田育良(木下アカデミー)&島田高志郎(木下グループ)組が67.19点で首位に立ち、昨季全日本選手権3位の佐々木彩乃(西武東伏見FSC)&池田喜充組(西武東伏見FSC)が54.76点で3位につけています。フリーダンスは、2日(日)の18:05から行われます。




