新シーズンの始まりを前に、日本代表選手たちが新たなプログラムをお披露目することが目玉となっているエキシビション「ドリーム・オン・アイス」。6月27日、今年もKOSÉ新横浜スケートセンターでスタートしました。昨年に引き続き、6分間練習を取り入れ、通常照明で進行する試合形式で開催。坂本花織、鍵山優真、2025-2026シーズンをもって引退することを表明した樋口新葉をはじめ、日本代表として国際舞台で活躍する選手たちが登場し、観客に新プログラムを届けました。オリンピックシーズンへ向け、それぞれの「本気」を見せた選手たちの躍動をお伝えします。
最高に輝けるプログラムを携えて
第1部は、昨シーズンにジュニアのカテゴリーで活躍した女子選手たちの演技からスタート。トップバッターの櫛田育良はSP「Gee Baby, Ain’t I Good To You/Hey Pachuco」(映画「マスク」より)を持ち前のコケティッシュな表現で魅せ、和田薫子は、力強いピアノの音色が降り注ぐフリー「ピアノソナタ第0番 奏鳴」で新境地を見せた。中井亜美が披露したのは、SP「道」。コミカルなマイムと、輝く笑顔が印象的なプログラムだ。そして、世界ジュニア選手権を3連覇中の島田麻央は、SP「Get Happy/Sing Sing Sing」をお披露目。曲の始まりから観客を明るい気持ちにさせるジャズナンバーを、跳ね回るように滑りきった。




続いて登場したのは、昨季ジュニアで活躍した4人の男子選手たち。西野太翔がSP「Such a Night」に乗せ、曲の華やかさにも負けない卓越した踊り心を見せると、高橋星名はSP「You Will Be Found」(ミュージカル「Dear Evan Hansen」より)で、伸びやかさに磨きがかかった表現を披露した。新シーズンからシニアに参戦予定の中村俊介は、SP「Yesterday」を滑り、大きなスケールの滑りと大きなジャンプで魅了。昨シーズン、全日本選手権でシニア選手たちに割って入る2位という好成績を収めた中田璃士は、継続のSP「Aroul/Uccen」で会場を情熱的な空気に包んだ。フラメンコの動きのキレが増したステップでは、勢いあまって転倒するシーンもあったものの、確実に表現面で成長した姿を印象づけた。




9月に北京で行われる選考会で、ミラノ・コルティナ・オリンピックの出場枠獲得を目指す、ペアの長岡柚奈&森口澄士は、2年目となるSP「Goodbye Yellow Brick Road」の力強いボーカルの上で阿吽の呼吸を見せ、新シーズンの「強いゆなすみ」を予感させる演技で観客を喜ばせる。3月に世界シンクロナイズドスケーティング選手権で自己最高位の9位に入った神宮アイスメッセンジャーズは、昨季のFS「Top Gun」に乗せ、よくコントロールされた隊列やダイナミックな技を披露して沸かせた。


若き挑戦も、エースの集大成も
第2部のトップバッターは、昨季、初の全日本選手権優勝を果たしたアイスダンスの吉田唄菜&森田真沙也。展開の予想できない独創的な香りを放つRD「Stomp to My Beat/Butterfly」で躍動した。

松生理乃は、ステップアップの1年だった昨シーズンのフリー「Lux Aterna」を、今季はSPに作り変えた。メロディの揺らめきと、ひときわ美しい松生のスケーティングが共鳴する神聖な2分40秒だ。

樋口新葉の新SPは、ジェフリー・バトル振付の「My Way」。集大成のシーズンを前に、自身のスケート人生を表現したプログラムを滑る樋口は、力強さだけでなく、たおやかさも湛えていた。

昨季、世界選手権のメダリストとなった千葉百音は、SP「さくらさくら/Sakura」をお披露目。コンテンポラリーの要素も含むチャレンジングなプログラムだが、ジャンプのランディングの姿勢まで磨き抜かれた完成度の高い演技を披露した。

先日、2025-2026シーズン限りでの引退を公にした坂本花織がこの日滑ったのは、フリー「愛の讃歌」。最後のフリーとなるこのプログラムで坂本は、力強い歌声のもとで頂への道を切り拓いていくかの如く、リンクを疾走する。世界のトップを走り続ける坂本の集大成にふさわしいプログラムに、観客は総立ちで拍手と歓声を送った。

初日の最後に登場したのは、昨シーズンにISUのチャンピオンシップで活躍した男子シングルの4人。新SP「That’s It(I’m Crazy)」を滑った友野一希は、複雑な動きが絶え間なく続く振付を隙なく踊りこなし、いかにこのプログラムを滑り込んでいるかをうかがわせる。

昨季、全日本選手権で初の表彰台、そして世界選手権初出場と大躍進を見せた壷井達也は、壮大な新SP「Anniversary」の世界観を、柔らかくシャープに、物語を語って聞かせるように、氷上に描いた。

誰もが知るバレエ音楽「火の鳥」をオリンピックシーズンのフリーに選んだ佐藤駿は、妥協のないジャンプ構成で新シーズンに懸ける思いを示す。「火の鳥」の力強い音楽と、佐藤が胸の内に秘める炎とが響き合うかのようだ。

トリを飾ったのは、エースとして日本男子を引っ張る鍵山優真。2度目のオリンピックシーズンのSP「I Wish」は、洒脱な雰囲気のプログラムで、鍵山は小気味のよいリズムに身を任せるように、それでいて正確なエッジワークを踏んで観客を惹き込んだ。リンクサイドには先に演技を終えた女子選手たちが、ノリノリで手拍子を送る姿も見られるなど、会場の盛り上がりは最高潮に。

無事に新プログラムをやり遂げたスケーターたちが一堂に会するフィナーレでは、互いに衣装を交換した中田璃士と西野太翔や、おそろいの編み下げのヘアスタイルにした島田麻央、中井亜美、和田薫子、櫛田育良の姿が見られるなど、和気藹々とした雰囲気。安堵と充実がにじんだスケーターたちの笑顔とともに、「ドリーム・オン・アイス 2025」の初日は幕を下した。

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