2025年1月29日、ワシントンDCにおいてアメリカン航空5342便がヘリコプターと衝突する事故が発生。全米選手権の直後に行われたナショナル育成キャンプからの帰路でこの便に乗り合わせていたスケート選手やコーチ、家族、関係者28名が犠牲になるという悲劇的な事故となりました。この3月26日に世界選手権が開幕したボストンでも、ボストン・スケーティング・クラブに所属する選手をはじめ6人が帰らぬ人となりました。世界選手権が行われている会場TDガーデンで、26日のペアSP開始前に、「Tribute and Remembrance Segment」と題し、彼らを追悼する時間がもたれました。
司会を務めたのは元アイスダンス米国代表でトリノオリンピック銀メダルのベン・アゴスト。マサチューセッツ州知事モーラ・ヒーリー氏、ボストン市長ミシェル・ウー氏の追悼スピーチに続いて、クラブ別に犠牲となった選手やコーチの在りし日の姿を映した動画を通して、彼らを偲ぶ映像が会場に流されました。まず、選手のショーン・ケイ、アンジェラ・ヤン、コーチのアレクサンダー・キルサノフ、同じく選手のブリール・ベイヤー、コリー・ヘイノス、エドワード・ジョウ。次に、ISU会長キム・ジェヨル氏が哀悼の意とスケートコミュニティの団結を呼びかけると、再び映像で選手のオリヴィア・イヴ・ター、フランコ・アパリシオ、アリディア・リヴィングストン、エヴリー・リヴィングストン、コーチのインナ・ヴォリャンスカヤの姿が映されます。

米国フィギュアスケート連盟臨時CEOサム・アクシア氏が挨拶に立ち、犠牲になった人々それぞれの思い出やエピソードとともに、この先も彼ら全員を記憶していくという決意を語りました。

最後に、ボストン・スケーティング・クラブ所属で犠牲になった選手のジンナ・ハン、スペンサー・レーン、1994年幕張世界選手権のペアチャンピオンでコーチのエフゲニア・シシコワ、ワジム・ナウモフが映し出されました。遺族代表として壇上に上がったのは、息子スペンサーと妻クリスティーンを亡くしたダグ・レーン氏。ときおり声を詰まらせながらも、事故で大切な存在が失われてしまったが、それでも今後も変わらず若いスケーターを応援してほしいと語り、支援や救助活動にあたった人たちへの感謝と、今後同じような事故が決して起きてはならないというメッセージを発信しました。合唱団による清らかな追悼の讃美歌、そして犠牲者全員の氏名と寄付先の表示をもって、セレモニーは締めくくられました。

映像に映し出された在りし日の若い選手たちの姿には、スケートへの愛と未来への希望があふれており、突然失われた命のかけがえのなさと、尽きせぬ悲しみが会場に集まったすべての人々に改めて伝わるひとときとなりました。犠牲となられた方々に、改めて哀悼の意を捧げます。