「村上佳菜子のフィギュアスケート音楽会」が2025年3月16日、東京・上野の東京文化会館大ホールで開催されました。昨年に続く第2回。村上佳菜子さんが司会を務め、この日39歳のお誕生日を迎える高橋大輔さんをゲストに、フィギュアスケートのプログラムに使用された音楽を、田中祐子さん指揮によるシアター オーケストラ トウキョウの生演奏と楽しいトークで送るスペシャルなコンサート。演奏の合間には、前回の共演を経て仲がぐっと深まった村上さん、高橋さん、田中さんの豪華なトリオに、ヴァイオリニストの木嶋真優さんとテノール歌手の笛田博昭さんが新たに加わり、音楽とプログラムにまつわる興味深いトークを繰り広げました。
馴染みの名曲を、生の音色で
オープニングは村上佳菜子がシニアデビューしたシーズンのショートプログラム「ジャンピン・ジャック」。弾けるようなテンポに合わせ、まずは出演者たちが1人ずつ登場する“顔見世”。冒頭から指揮の田中祐子に村上と高橋大輔の髪が同じ色であることをいじられるなど、和気あいあいとしたトークで幕を開けた。
「『カルメン』組曲 第2番より《ジプシーの踊り》」の軽快なメロディーで会場が盛り上がりると、ヴァイオリニストの木嶋真優が登場。今シーズン、佐藤駿選手がSPに、千葉百音選手がエキシビションナンバーに使用している「ラヴェンダーの咲く庭で」を穏やかな情景が広がるような優しい音色で奏でて会場を魅了した。

村上とのトークでは、木嶋が大のフィギュアスケートファンだということが判明。アイスショーだけでなく、北海道で行われた試合にまで足を運んだというエピソードを披露した。そんなフィギュアスケートに造詣が深い木嶋が次に演奏したのは、村上が2011-2012シーズンのフリーで使用したメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64より第1楽章」。競技プログラムでは約4分に短縮されているが、今回は20分弱のフルバージョンで披露され、白熱のパフォーマンスに客席から盛大な拍手が送られた。

休憩を挟んで第2部。まずは高橋大輔がバンクーバー・オリンピックで日本男子初のメダルを獲得したフリープログラム「道」で客席のボルテージが一気に上がると、続いてテノール歌手の笛田博昭が登場し、「歌劇『道化師』より《衣装を着けろ》」(2012-2013シーズンのフリー)で、ドラマティックで壮大な歌声を披露した。笛田の歌声にいたく感動した高橋が「やっぱり改めて聞くと、また滑りたい! って思いました」と話すと、笛田は「コラボしましょう!」と提案。客席からも期待のこもった熱い拍手が巻き起こった。
音楽会の終盤は、村上も高橋も使用したことのある「オペラ座の怪人」や「ロクサーヌのタンゴ」、さらには荒川静香や宇野昌磨がオリンピックメダルを獲得した「歌劇『トゥーランドット』より《誰も寝てはならぬ》」で笛田の独唱が響き渡り、怒涛のライブは締めくくられた。
すべてのプログラムが終わったあとには、公演当日が39歳の誕生日だった高橋にバースデーサプライズが。昨年に引き続き村上が指揮を振り、オーケストラによる贅沢な「ハッピーバースデートゥーユー」の演奏と観客のあたたかい歌声で高橋を祝った。そして「ラデツキー行進曲」の心躍るようなリズムに乗せて出演者たちが客席へ。観客に手を振りながら笑顔であいさつし、あたたかさと高揚感に包まれて音楽会は幕を下ろした。