2025年1月31日
愛されるレジェンドが国民スポーツ大会で有終の美を飾る

織田信成、自分らしく2度目の競技生活に別れ

spot_img
- AD -

織田信成選手が、国民スポーツ大会冬季大会スケート競技会(おかやま国スポ)において、2度目の現役引退となるラストパフォーマンスを終えました。現在37歳という年齢、にもかかわらず4回転+3回転のジャンプに挑む高難度の構成。さまざまな“常識”を覆す再チャレンジに、万感の想いで終止符を打った織田信成選手。「こういう終わり方も、自分らしい」と笑った国スポでの試合を振り返ります。

「マツケンサンバ」と「Angels」で有終の美

1月28日の成年男子の部SP。第5グループで織田信成が滑ったのは、今シーズン、出場した試合でつねに笑顔を届けてきたSP「マツケンサンバ」だ。強い気持ちで跳んだ冒頭の4回転トウ、続くトリプルアクセルは着氷が乱れたが、3回転ルッツ+3回転トウのコンビネーションは綺麗に決まった。なにより、氷の上を縦横無尽に踊りまくる「マツケンサンバ」は、晴れ舞台にふさわしい楽しさだった。

今回の国スポは岡山県倉敷市のヘルスピア倉敷での開催。多くの選手を輩出してきた歴史ある常設リンクだが、屋内に設置されているのはアイスリンクのみで、観覧席がもともとない。そのため、会場内は無観客となるかわり、隣接する建物内でパブリックビューイングの会場が設けられた。織田は、演技前にこのパブリックビューイングのためのカメラ位置を把握して、SPを滑り終えるとそのカメラに向かって両手を掲げるマツケンサンバのポーズを決めてみせた。それだけ、引退の滑りをファンと分かち合いたいという気持ちが強かったのだろう。

2023年の国体(国スポの前身)から大きな大会に出させていただき、丸2年が経つんですけど、自分だけの努力だけではなくて、周りの方の努力やサポートがあってここまで来ることができたので、そういう方々への感謝の気持ちをつねに持って、感謝の気持ちをしっかり出せるようにという想いで滑りました。最後、ライブビューイングのカメラに向かって、ポーズもしっかり決まりました。本当は会場でマツケンサンバを一緒に踊れたら最高だったんですけど、ライブビューイングの向こうでもきっと金の棒を振ってみんな踊ってくれていたと思うので、力になりました。

こうして織田は、世界選手権代表が決まっている佐藤駿に次ぐ2位でSPを折り返すという、37歳の引退試合とは思えないような滑り出しを見せる。翌日29日のフリーは、ブノワ・リショーが振付けた「Angels」。SPからは一転し、壮大かつバリエーションに富んだ見せ場が連続する、アーティスティックなプログラムだ。リンクインしたときからすでに涙ぐんでいた織田は、「最後に決めたい」という並々ならぬ決意で跳んだ冒頭の4回転トウが回転不足で転倒。しかし素早く立ち上がると、次々にジャンプを重ね、ミスがありながらも決してあきらめない気概をもって、最後まで滑り切った。個人ではフリーだけなら7位、総合では4位と、佐藤駿、壷井達也、友野一希という今季のISU選手権代表メンバーたちに次ぐ順位に。友野とのチーム大阪としては、埼玉(佐藤、大島光翔)、愛知(壷井、中村俊介)に次ぐ総合3位に入った。最後の舞台で有終の美を飾った織田は、演技を終え、競技の氷を降りる感慨をこんなふうに語った。

今シーズンいちばん悪い演技で、それがラストっていうのが自分らしいというか。気持ちの部分で急いでしまった部分があって、タイミングが合わずに演技が終わってしまって悔しいけど、滑る前から母親(憲子コーチ)も含めて温かい言葉をかけてくれて、自分は幸せものだと感じながら滑ることができました。行く前に母親のほうが泣いていて、つられてもらい泣きしてしまい、かなり高ぶってしまって。いい演技を届けられたらと思っていたんですけど、こういう終わり方も自分らしくてよかったのかな。でもみんなが最後まで応援してくれて、幸せでしたし、感謝の気持ちでいっぱいです。

この2年間、自分の好きなことをさせてもらって、迷惑もかけた。それでも『自分の人生、好きにやったらいいよ』と言ってくれて、そういう応援してくださった方々に、いちばん感謝を伝えなきゃいけないなと思っていました。ありがとうございましたという気持ちを伝えたいなと思って、挨拶しました。

2度目の引退の理由として挙げていた膝の調子について、「3回手術して、全日本のときは膝が限界ですと言ったんですけど、ここに来ていま膝が絶好調で、いまは『悔しい、帰って練習したい』という気持ちもある。でも、これがひと区切り。やり残したことはないです」と清々しい表情を見せた織田。家族からの応援について、「妻は、試合とかをがんばっている姿を子どもたちに見せられるのはいましかないから、がんばってほしいと言ってくれました。その夢も全日本選手権で叶って、アスリートとしてがんばっている姿を知らなかった子どもたちに見せることができて、それは妻の想いもひとつ達成できたのかなと思います」と、チャレンジを支えた家族への感謝も口にした。

>>次ページ:国スポまでの日々、そしてこれから

spot_img
- AD -

 関連バックナンバー

関連記事

- AD -
spot_img

最新記事

error: