モチベーションであり続けた”3人で行く世界選手権”
―― 改めて、今季のプログラムの選曲について教えてください。シーズンごとに新しいものを見せたいとおっしゃいますが、そのなかでもこの選曲になったのは?
ジュンファン 「バットマン」は曲がいいんですが、映画もすごく面白くて、それがいちばんの理由です。ダークで重厚な響きが気に入っています。これまでと全然違う感じで、このタイプの音楽はこれまでやったことがなかったなと思い、シェイ(振付のシェイリーン・ボーン)に相談したら、彼女も気に入ってくれてすぐに振付に入りました。ショートについては、昨シーズンのマイケル・ジャクソンと真逆のスタイルで滑りたくて、そのアイディアの1つとしてもっとクラシカルな音楽で滑るのはどうかというところから「仮面舞踏会」になりました。
―― 「仮面舞踏会」は、ご自分で? それともシェイリーンさんから?
ジュンファン 基本的にはぼくの選曲です。
―― どんなテーマでプログラムを作りましたか。
ジュンファン 最初に曲を聞いたときは、仮面舞踏会のワルツがすごく幸せでキラキラしたものに感じられたんですが、氷の上で聞いてみると、悲しみや狂気のほうが感じられたので、そこにフォーカスしてプログラムを作りました。
―― 「バットマン」はダークな部分がお気に入りということですが、ダークな部分を表現するうえで、自分のなかにもダークであったり、影であったりという引き出しはある?
ジュンファン あると思います。どんな人にも光と影の部分がありますよね。ダークな曲ではあるけど、暗いだけじゃなくて重厚な曲という感じでもあるし、それに闇が深ければその分、光が輝いて見える。そういうおもしろさがあると思います。
―― どちらのプログラムもキャラクターを演じるというよりも音楽を表現するイメージでしょうか。
ジュンファン そうですね。フリーは映画のオリジナルサウンドトラックなので、ある程度バットマンのキャラクターをイメージして演じるようにしているのと、プログラムのなかに時系列を作っています。フットワークが始まるところはバットマンの過去のことを考えて、声が入ってくるところで現在の時間軸に近くなっていく。現在から始まって過去を辿るようなストーリーを描いています。
―― 次は世界選手権ですが、今回は初めて韓国から男子選手3人で臨む世界選手権ですね。
ジュンファン これがオフシーズンから今シーズンにかけてのいちばんのモチベーションでした! より多くのスケーターが、シーズン最大の試合でもある世界選手権を経験することができるのはすごくうれしいし、ぼく自身も楽しみにしています。
―― 世界選手権が終わると、今度は日本のスターズ・オン・アイスが待っています。これまでゲストとしては参加していましたが、キャストとして参加するのは初めてですか。
ジュンファン 初めてです。一度トライする予定があったんですが、コロナ禍で参加できなくなってしまったので、今回がキャストとして参加するのは初めて。メンバーのみんなと一緒にグループナンバーを滑るのが楽しみです。
―― 昨年の夏も日本のアイスショーにたくさん出演されて大活躍でしたが、どんな経験でしたか。
ジュンファン 何より、最高の時間でした。いちばんの夏だった。ショーの期間中は世界中のスケーターたちと一緒に滑ることができて、ドリーム・オン・アイスもザ・アイスもフレンズオンアイスもそれぞれに違った経験を得ることができました。フレンズオンアイスはレジェンドたちと一緒に滑ることができて面白くて楽しい経験だったし、ザ・アイスは世界中の最高のスケーターたちと最高のショーを作ることができた。ドリーム・オン・アイスでは、たくさんの日本のスケーターと共演できました。彼らが新しいプログラムをお披露目しているのを見て、すごくいいエネルギーを受け取れました。どれも本当に素晴らしい時間だったな。日本のお客さんたちがすごく応援してくれて、そのなかで滑れることが本当に幸せでしたね。
―― まずは世界選手権、そしてスターズ・オン・アイスでの演技も楽しみにしています。本日は、ありがとうございました。
(2024年2月4日、男子フリー翌日に取材)
21日に行われた世界選手権の男子SPでは、4サルコウ+3トウループの2本目で転倒を喫して9位スタート。「仮面舞踏会」の優雅でありながらどこか妖しく鋭いワルツで強い印象を残し、4回転を2本組み込む攻めの姿勢を貫きました。男子フリーは、日本時間の24日午前7時から試合開始、さらにジュンファン選手が出演する「スターズ・オン・アイス」は、大阪公演が3月30、31日、横浜公演が4月5~7日です。ぜひ、お楽しみに!